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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

最強RBへの道Vol.11(中・上級者編)~その1~

2020.8.21 11:37 中村 多聞 なかむら・たもん
バーベルを担いで屈伸運動をする「スクワット」は、ウエートトレーニングの代表格
バーベルを担いで屈伸運動をする「スクワット」は、ウエートトレーニングの代表格

 

 久々の「最強RBへの道」シリーズです。ここ数年、現場で指導する日々を送っている中で、今回は選手たちがトレーニング中に陥りがちな事柄についてお話ししようと思います。

 

 僕の指導対象である若者たちはアメリカンフットボールの競技者で、レジャーではなく国内でも最高レベルの試合で勝利するためのトレーニングをしています。もちろん、選手時代の僕もそうでした。

 スポーツや武道で「心技体」と言うように、競技者や武道家は日々心と技術と体を鍛え、高いレベルの試合に備えています。

 その中でも、今回は最強RBになるために絶対必要なものの一つである「体」つまりフィジカルの部分についての考え方を紹介します。

 

 トレーニングの代表格であるウエートトレーニングは、多くの皆さんが取り組んだ経験があると思います。

 「最高何キロ上がった?」「この重さで何回上がったか?」「腕や脚の太さは何センチになったか?」と、仲間や友人と競い合いながら鍛錬に励むのが普通ですよね。

 しかし、高いレベルで競技ができるようになってきたら、そのような数値的な目標を気にせず、とにかくこの鍛錬がどうすればフィールドで生きるのかに集中するのが一流のRBなのだと思います。

 

 地面に足の裏だけつけて走る、曲がる、飛ぶ、止まる、ぶつかるなどの複雑な動きをするのがRBです。

 個人的には、寝転んだりもたれたりせず、立って行うトレーニング時は特に競技力の向上に直結すると考えています。

 立って行うトレーニングの種類は多くあります。皆さんがイメージしやすいものですと、肩にバーベルを担いで屈伸運動をする「スクワット」というトレーニングメニューを例にします。

 

 最初の頃は何キロを何回できるかが最重要項目ですよね。この初級・中級時代を経て、ある程度の筋力と技術が備わっていなければ、高いレベルで活躍することはできませんので、そこに至っていない人は、まず中級者を超える目標を立ててボディービルディングしてください。

 それ以上の人は、競技に的を絞った考え方でトレーニングしてこそ、いわゆる「ストレングストレーニング」であると考えましょう。

 フットボールのためのストレングスです。ある程度の体を作るだとか、体力向上を目指すなどというレベルでもストレングストレーニングと呼んでしまうと幅が広がりすぎてしまうので、今回は高いレベルだけに限定します。

 

 スクワットですが「足の裏をどのような状態にしておくのか」「足首はどこまで曲げるのか」「スネはどこまで傾けるのか」「膝はどこに向けてどれだけ曲げるのか」「股関節、背骨、腕、首の角度、目線、呼吸はどうするのか」は大切な項目です。

 他にも多々ありますが、これらはウエートトレーニング教本に「理想のスクワット」のやり方が書いてあります。YouTubeでも多くのトレーナーが紹介しているものがあります。

 

 高いレベルを目指すRBならば、体重や体型に関係なく、力は強い方がいいですし筋肉は大きい方がいいでしょう。

 でも、パワーリフティングやボディービルの選手ではなく「フットボール選手」ですから、重い物を持ち上げることができても、太く美しい筋肉を備えていてもまだ足りません。

 その強くて太くて美しい筋肉を、相手の選手に対して効果的に使用できてこそ意味があります。

 そしてシーズンを通してけがをせずに、フルに能力を発揮できるようになるのが、最強を目指すRBのストレングスになるのです。

 

 スクワットでバーベルを使う理由は、通常の筋肉や腱を鍛える理論としては100%正解です。

 地面に着いている足の裏から地面の力を充分に活用し、相手の選手がどの角度にいても正確でハードでなヒットができるかどうか。

 タックルに来たディフェンダーを一撃ではじき飛ばすのがRBとしての強さの象徴であり証明です。

 パワーを養うトレーニング時にそういった「水平方向」のような動きを自分の中で正しく換算し、天井方向に向けていたスクワットの作用を、どの向きにでも力を発揮できるように考えることが重要です。

 

 この「換算」ができるようになれば、フィールドでパワフルでハードなヒットを容易に表現できるようになります。

 でも、これはとても難しいんです。僕の場合は根気よく時間をかける必要がありました。

 

 スクワット時に、自分が最も立ち上がりやすいやり方と、力が入りづらいやり方を何度もやって比較すれば、同じ動きでもほんの少し関節の角度を変えるだけで力の入り方が違うことが分かってきます。

 力が入りやすい、入りづらい。自分の体に起こるこの関係性をプレー中のほとんどの動きで理解してマスターすれば、自分の元々持っている能力をよりたくさん出力することができるのです。

 

 立って行うウエートトレーニングで、先ほどの「やりやすい方法」「やりづらい方法」などをいろいろ試しながら、関節や筋肉の動きを理解する。

 分かりにくいことは、東洋医学や西洋医学に関係なくそれらの専門家に聞いたり、フットボールコーチに聞いたり、トレーニングコーチに聞いたり、自分で調べたりして理解を深める努力をします。

 

 重たいバーベルを上げることがフットボール選手の目的ではありません。大きくて美しい筋肉を身につけることも目的ではありません。

 全ては試合で最大のパフォーマンスをするためなのです。友達と回数や重量を競うあまり、ついつい自分の体に負担が少なくなるようにトレーニングしてしまっていませんか?

 

 毎日がコンテストなのだと暗示をかけて、全力で倒れそうになるほど真剣にトレーニングするのはいいことですが、そのトレーニングは本当に自分の競技力向上に向かっていますか? 

 多くの皆さんが陥りがちな落とし穴ですので、是非注意しながらトレーニングをしていってください。

 

 信頼できるコーチと仲間に恵まれてプレーしているのに勝てないのは、RBであるあなたの責任であることを自覚しましょう。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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