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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

IBMでチームメート 教え子の元山、佐藤両選手に聞く~後編~

2020.7.30 14:57 中村 多聞 なかむら・たもん
多聞コーチが主催した合宿練習での佐藤選手(中央)と元山選手(右端)
多聞コーチが主催した合宿練習での佐藤選手(中央)と元山選手(右端)

 

 今回は、現在XリーグのIBMビッグブルーに所属するRB、京都大学出身の佐藤航生選手と、早稲田大学出身の元山伊織選手へのインタビューの後編です。

 日本のアメリカンフットボール選手で、僕がリスペクトするお二方です。頭脳や運動神経に集中力など、元々備わっているそれぞれが平均よりもはるか上。そして最終学年に懸けた1年間の「熱い思い」と「努力」は、近くで見ていた僕には尊敬の念しかありません。

 同年代の頃の自分では到底真似できない厳しさを乗り越えてきた、彼らの生の声をお聞きください。

 

多聞:はい、じゃあ次は大学生だった時の自分に何かアドバイスするとしたら?

元山:いろいろ考えてみたんですけど、やっぱり「一回死んでみろ」って言いたいですね。「死ぬんちゃか!」と思ったことは何度かありますし、痛くて痛くて立てなくなりそうなこともありました。でも実際死んでいないし、立てました。だからもっとやれたんちゃうかなと思います。タモンさんに「ヘタレか?」て言われるの嫌だったし

多聞:ヘタレな脳みそにフッと浮かぶ逃げ口上なんて、いちいち気にしてたら勝たれへんからな。まあ佐藤は通信教育だしそんなキツい練習はやらせたことはないけど、伊織が引退してからの後輩たちはもっと大変な練習してるんやで。大体3倍くらい大変かな。つまり伊織はあと3倍はできたやろなって思ってる。でもそんなこととは無関係なほど、伊織の能力が高かったからそれほど練習しなくてよかった。頭も良かったし、新しいことを教えてもすぐに自分のものにできたからね。でも、君の後輩らは残念ながら当時の伊織にまだ及んでいない。目標設定の甘さやブレがあるので、今は心のブレークスルーに挑戦中。だからまだまだしんどいだろうし、本当に大変だと思う。新型ウイルスの問題もあるし、いろんなプレッシャーとかも含めてね

元山:はい。たまに早稲田のウェブミーティングに参加させてもらって、ある程度把握できていますけど、会議中の受け答えなんかもへたくそですもんね。「こいつら大丈夫か?」って思いますもん

多聞:そうやねー。伊織と比べると全然違うねー。

佐藤:それどういうこと? 会話にならないの?

元山:うーん。なんて説明したらええか分からんけど、とにかくコミュニケーションが難しいねん

多聞:話を戻すと、冷静に考えて伊織はもっとできたはずやねん。だって大してトレーニングしてなかったやん。ほぼナチュラルな体で毎日グラウンドに来て、フットボールしてただけやん

元山:そうですね。後輩たちに比べたら全然してなかったですね。でも今はウエートトレーニングの効果がすごく出てまして、大学時代よりもかなり強くなってるんですよ

多聞:毎日走ったりしないし体が疲れてないからな

元山:摂取カロリーが消費カロリーに追いついてなかったんですね。社会人なってしみじみ感じますわ。これやったらナンボでも体がデカくなれそうです

多聞:そんなこと、全部教えに行ってたけど、お前が全然言うこと聞かへんかっただけやんけ。今更そんな検証いらんねん。20年以上前から自分で自分を実験し続けて分かりきっとるから偉そうに指導してんねん。まあそんなんも含めて、もうちょっと俺のことを信じられてたら良かったな

元山:はい、ホンマっすね。あとチームビルディングで言うたら、チーム全員に嫌われてみろって言いたいです

多聞:それも100回以上俺が言うてたやつやん。

元山:はい、言うてましたね。だから結局はタモンさんの言うてることを100パーセント体現しろって感じですねー

多聞:しかしこれらは事実やけど、俺が書く文章やし単に自慢みたいなってまうからショボなるやん。もうちょっと他にないの?

元山:チーム全員に嫌われてみろ。それぐらい意見を言え、ですかね。佐藤はどうなん?

佐藤:あ、いいですか? 伊織長いわ。難しいですね。まず一つは、4回生だとかいろんなことを無駄に背負ってしまって、そこをもっと「勝つこと」だけに邁進して純粋にアメフトがうまくなること、強くなることだけにフォーカスしてほしですね

多聞:ほうほう。

佐藤:そしてもう一つは、矛盾してしまうんですが神戸、近大、関学、立命には負けてしまったので、勝つためには無駄だったことや余計なものを取り払って、もっともっと切羽詰まって危機感を持って真剣にやれよって言いたいです。以上です

多聞:佐藤が4回生の時より、5回生コーチをしていた昨年の方がナンボかチームの成績は良かったよな?

佐藤:はい、順位はそうなんですが、まあ大した差ではないです

多聞:関大には3回生4回生の時に勝ってたよな

佐藤:はい

多聞:おれが見た時、3回生の時に比べたら、4回生になってからはチーム練習中に周りに対して「頑張ろう、頑張ろう」って言う回数が2回くらい増えたもんな

佐藤:へへへ。4回生だってことで、自分を押し殺してたりってところがあったから、自分が正しいと思ったことは意地でも貫き通して、もっとできたんじゃないかって言いたいです

多聞:じゃあ次は、後輩たちにアドバイスするとしたら。就職したしIBMの練習に行って少し外の世界を感じたのでは?

佐藤:自分が学生の時に、いろんなOBの方が練習に来てくださって皆さんおっしゃるのは「アメフトに100パーセント集中できる時間は、めっちゃ幸せなんだぞ!」みたいなことで「お前らが羨ましい!」って言われててめっちゃムカついてたんですけど

多聞:ギャハハハハ

佐藤:そんなわけないだろって思ってたんですけど、確かに自分がこっちの立場になると仕事があったりとかいろいろある中で、全ての時間をアメフトに使えるというのは、めちゃくちゃ幸せだなと思うし、一つのことに懸けられる時間ていうのは、もう今後あんまりないだろうし、みんなには幸せに感じながら楽しんでやってほしいなって思います

多聞:なるほど。コレはエエ事言わはったで、ヤバイで元山さん、さあどうぞー!

元山:(笑)

佐藤:タモンさんマジで言うてます?

多聞:いやいやマジやって。俺は二人と違って大学時代は3回生からアメフト始めて、1日2時間限りのグラウンド使用可能な時間だけ練習して終わったらピューっとバイト行って、そのあとは朝まで繁華街をウロウロしてただけやから。で、夕方起きてクラブ行っての繰り返し。大学を卒業してからは信じられないほどのアメフト漬けな10年間を送ってたやんか。だからその気持ちは分かれへんねん俺には。その「アメフトに集中できるのは今だけ」って意見は俺は違うと思ってる。それは超一流大学出て最高の会社に入って超ド級の給料と安定した未来を得たいから、アメフトに打ち込んでいられなくなるって意味やろ。俺にはその環境がそもそもなかったのもあるから、佐藤とは違った意味でそういう意見に賛同できないけどな

元山:タモンさんの学生の時の話とか遊び方とか聞いたらめっちゃ羨ましいもん。俺らみたいな普通の学生からしたら、そんな楽しみ方とか遊び方があるんやて思うねん。楽しいことに対しいての欲がエグいっすよね。アイデアがちゃうますわ

多聞:せやねん。オモロそうなことには目がないねん

元山:貪欲すぎます(笑)。遊びへの探究心みたいなんが僕は足らないなって思いますもん

佐藤:ハハハハハ

多聞:貪欲すぎて渚キャンプとかメチャクチャしんどくなってるもんな。シゴくの面白すぎて

元山:えげつないっす

2018年シーズンの早大時代の元山選手(7)
2018年シーズンの早大時代の元山選手(7)

多聞:でもな、今年はコロナで渚キャンプ行かれへんようなってしもたやん。だから日帰りで砂浜ダッシュだけしに行こうか思うて。でもそんなしたら結局ただの海水浴兼バーベキューするだけになりそうやし、企画するところまでいかんかったわ

佐藤:またあれば後輩らを誘ってやってください

多聞:砂浜走ってるシーンをちょっとだけ撮影して「今年もやりました!」みたいにするか?

元山:それでいいんじゃないですか。だって僕の時の渚キャンプで一番楽しかったんバーベキューですもん。僕らジュースで、タモンさんだけ内緒でチューハイ飲んでたアレっす

 

多聞:それじゃあ元山さん、後輩にアドバイスせえや!

元山:はい、よく文武両道って言われてるんですけど、スポーツも勉強も頑張りなさいってやつです。両道って何を定義にしているかなんですけど、単にクラブ活動と授業に行くのを両方やってるというだけで文武両道だと思ってる人が多いんですよ。部活もソコソコで、勉強は単位落とさない程度にやってるのは文武両道とは言わない思うんです。そうではなくて、両方とも限界ギリギリまで必死で打ち込んでしっかり結果も出す。エネルギーも時間も全て神業のようにマネジメントしてやり抜く。生活やいろんなことを100パーセント+100パーセントの200パーセントで生きてるんか。それが文武両道やぞって言いたいと思います。部活に休まず行って、単位を取るだけが文武両道ちゃうねんぞと言いたいです

多聞:トップの成績取って、決勝戦で大活躍するのが本当の文武両道ってことやね。単位取ったくらいで「文」て言わんといてくれってことやね。まあ確かに俺ですら合計140単位くらい取ったような覚えあるし

元山:タモンさんは学力低い大学ですやんか。僕らと同じにせんといてください

多聞:文武両道って、そういう意味やったんやね。勉強になったわ

佐藤:タモンさん、一つ追加していいですか? 後輩に伝えること

多聞:はいどうぞ

佐藤:京大アメフトって「国立大で日本一目指してるぞ!」て言われるじゃないですか

多聞:外部からはそうやね

佐藤:そう言われながら生きているので、自分たちの歴史や努力に間違いはない。今までの京大アメフトがこうだったからこれやっときなさいが必ずしも正解ではないと思うんです。でも就職して外の世界の人々と接していると、僕らの学生時代はかなり閉鎖された中で生きてたなって思ったんで、もっと広い視野で生きてほしいなと。他大学の選手や、部活してない人がどんな生活してるのかまで、いろんな物を見て知っておくことが、これから生きていくためにも大切だし、フットボールで日本一になるってことにも繋がっていると思うんです。それが今、僕が京大ではない世界に出てとても感じていることなんです

多聞:難しいなそれ文章で書くの。耳で聞いてると気持ちは伝わるんやけど。まあ何とかするわ

元山:学生の最後、甲子園とかいろいろあると思うんですけど、そこで負けたら人生負け組やと思うんですよ。日本一なれなかった奴なんだっていう烙印を押されるんです。で、それを変えたかったら学生時代にやるしかないんですよ、ここで自分の人生決まるんで。僕は負けたのでもう一生勝てないんですよね

多聞:無理にエエこと言おうとせんでええで。まあ、俺たち3人とも関学の引き立て役やったしな。俺にとっての関学はダラス・カウボーイズとか読売巨人軍と同じやから。子どもの頃から知ってて憧れて、ほんで勝てなかった強大なチーム。じゃあ社会人生活頑張ってください。今回はありがとうございました

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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