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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

勝てる選手を育成 シーズンに向けて「タモン式」で差をつけろ

2020.7.2 11:34 中村 多聞 なかむら・たもん
「タモン式」で鍛え、シーズン開幕に備える参加者たち
「タモン式」で鍛え、シーズン開幕に備える参加者たち

 

 新型コロナウイルスが世界中を騒がしくしているおかげで、国内の春季アメリカンフットボールシーズンはめちゃくちゃになってしまいました。

 しかし、秋季シーズンは社会人も学生も変則的な方法で今年度を乗り切る計画を立てているようで安心しました。

 大学4年生にとっては、これまで頑張ってきた集大成となる最終学年のシーズンが消えてしまうのは気の毒ですからね。

 

 僕が選手の頃からずっと計画していたシーズンの過ごし方というものがありまして、今年はチームの意向にはキチンと従いつつも、可能な限り「それ」を実現しようと目論んでおりました。

 

 現在のシーズン構成では春季と秋季で2度のピークを作らざるを得ず、春季においては試合慣れとコーチへの印象づくりの2点が主要な目的であり、勝敗はさほど重視されません。

 秋季は当然勝利こそ全てで、なりふり構わず勝つためだけに活動します。まあこれはフットボール好きな読者の皆さんならよくご存知だと思います。

 

 選手時代の僕は「ならば春は負けてもいいのでは?」と考えるようになっていました。そうすると、前のシーズンが終わった時点から秋のシーズンが始まるまでの間の約7カ月を「準備だけ」に費やせるわけです。

 「準備」とは何か。ポジションによってざまざまですが、僕の専門のランニングバック(RB)ですと、インテリジェンスのトレーニングはそれほど時間を要しませんので、もちろん「体づくり」が中心になります。

 所属チームの試合出場を知らん顔して自分だけ勝手な行動を取るのは難しいですが、このNFLプレーヤーのような1年間の過ごし方には強く憧れました。実際にそのようにしたシーズンも数回あります。

 

 今年度こそ「タモン式RB陣」は、1年間をしっかりと計画的にワガママに体作りをしていこうと決めたのです。

 そして粛々と活動していた矢先の出来事が、新型コロナウイルスの感染拡大でした。

 国や東京都、大学やリーグ、そしてチームのルールで定められた外出や移動の規則を遵守した結果、図らずも打撲に捻挫、そして大きな疲労の伴うフットボールをプレーしなくていいオフを過ごすことができました。

 

 これまでは元々リーグでもトップクラスのプレーヤーばかりを指導してきましたが、昨年度からはエース不在の複数人での横並び状態が続いています。

 そうなればいわゆる「一から」の指導になります。僕としても初体験ですので、ルールも知らない1年生に本当の基礎から指導するのです。

 

 スポーツマンとしての気持ちの持ち方から、タッチダウン後の仕草まで全てです。

 1970年代から現代までのフットボール中継を見せ、最新のNFLも早送りなどせずシーズンの全てを視聴して学ばなければなりません。

 作戦のことも基礎から高度な裏技の裏の裏、隅から隅まで学びます。まあこれはどこのチームでも同じようなものでしょう。

 

 そして体作りや根性論は現代のフットボール界でもダントツの厳しさが特徴の「タモン式」ですので、途中でくじけてチームを去る者もいます。

 これだけの長期間に渡って「体作り」と「心意気」をシゴきまくられたのは、今年の選手たちが初めてでしょう。残っている選手たちは泣いたりせずに良く頑張っています。

 

 勝てる選手を育成することに特化した、僕の頭に強く印象に残っている指導者は二人います。

 フットボールでプロを目指す人が通うアカデミーの所長ジャック氏と、アーティスティックスイミングの井村雅代さんです。

 ジャック氏は「フットボール鷹」の登場人物。フットボールがうまくなるためだけに開発された器具やアイデアを駆使し、自分の人生をかけて鋼鉄のように強い意志を持った超一流選手を育成する元プロ選手の指導者です。

 井村さんはどなたでもご存知のいわゆる「鬼コーチ」で、僕は小学生の頃「浜寺水練学校」で水球の練習をしている横で、井村さんが水中マイクで選手を怒鳴っているのを聞いていました。

 

 井村さんに言わせれば、オリンピック候補選手でも「気合が足らん」そうなので、いかに厳しいかがよくわかりますよね。

 この方々に共通するのは「鬼である」こと以外に、その選手の生活全てを見ていることです。

 何を考えていて、どんなトレーニングをどれだけして、どんな練習をどれだけして、何をどれだけ食べて、どれだけ寝るのかなど、全てをひっくるめての指導者なのですね。

 

 勝てる組織を作る指導者の方が引く手あまたでギャラも高いのですが、僕は上達させて勝てる選手を育成することに関心があるので、数年前にフットボール業界へ復帰しました。

 

 知識のアップデートは独自の方法でもちろんしておりますが、日本のフィールドで戦うためには何がどの程度必要か、人生のほとんどの時間でそれだけを研究工夫してきた僕の知識の全てを選手たちに押し付けて毎日を過ごしています。

 自分が30年近く前に走り込んだ同じ坂道で、当時よりももっとハイクオリティーな内容でハードに鍛えたり、ウエートトレーニングなども基礎的な体作りレベルからRBとして活躍するためだけのピンポイントな鍛錬まで、徹底的に指導しています。

過酷な坂道ダッシュでレベルアップを図る「タモン式」の参加者
過酷な坂道ダッシュでレベルアップを図る「タモン式」の参加者

 

 コロナ禍のせいで、昨年まで開催していた「タモン式渚キャンプ」に行くことはできなくなってしまいました。

 しかし、今年度はキャンプに行かずとも十分にトレーニングは足りていますので、全く心配はありません。

 昨年度までは、選手たちの体作りまで徹底的に介入できていなかったので「渚キャンプ」という精神面での起爆剤を利用していました。

 

 あとはグラウンド利用の許可が全面的に出て、チーム練習が始まるのを待つだけです。

 スクリメージ練習が始まれば、基礎体力と心が安定した選手たちを今以上に上達させることはそれほど難しいことではありません。

 日本チャンピオンを目指すにふさわしい「パワー」「スピード」「頭脳」「技術」を最高の状態にして試合に臨みます。

 

 そのためにも、皆さん油断せず慎重に行動しましょう!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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