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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

QBニュートンがペイトリオッツと1年契約 パンサーズでMVP獲得のスター

2020.7.1 12:15 生沢 浩 いけざわ・ひろし
2016年シーズンのブロンコス戦でTDパスを決めて喜ぶ前パンサーズのQBキャム・ニュートン(AP=共同)
2016年シーズンのブロンコス戦でTDパスを決めて喜ぶ前パンサーズのQBキャム・ニュートン(AP=共同)

 

 NFLの強豪ペイトリオッツが、前パンサーズのQBキャム・ニュートンと1年契約を結んだ。年俸は750万ドル(約8億1000万円)でインセンティブが付帯する。

 ニュートンといえば2011年にドラフト全体1位でパンサーズに入団すると、超人的な身体能力でファンを魅了し、2015年にはリーグMVPに輝くとともにチームをスーパーボウルに導いたスター選手だ。

 常勝チームであるペイトリオッツとのマリアージュは、新型コロナウイルスの影響で閉塞感のあるNFLに衝撃を与えた。

 

 3月にペイトリオッツからバッカニアーズに移籍したQBトム・ブレイディに代わる存在として期待を集めるのは間違いない。ただし、それが実現するかどうかは別問題だ。

 

 現在ペイトリオッツにはニュートンのほか、昨年のドラフト4巡指名のジェリー・スティダムと34歳のブライアン・ホイヤーが在籍する。

 3人のなかでスター性とNFLでの実績で判断するなら間違いなくニュートンが先発候補だ。

 ニュートンが3年前までのコンディションを取り戻せるなら、ブレイディ時代とは違う新たなペイトリオッツオフェンスが構築されるだろう。

 

 ただし、最近2年は故障に苦しみ、本来の実力を発揮できなかったのはやはり懸念材料だ。

 2018年は肩の故障で、シーズン終盤は10ヤード以上のパスが投げられないほどの重傷だった。パンサーズは6勝2敗の好スタートから失速し、7勝9敗でシーズンを終えた。

 

 昨年はプレシーズンゲームで負傷した脚が完治せず、わずか2試合の出場に終わった。

 結果的にこの2年の故障がパンサーズから放出される要因となったわけだが、これをペイトリオッツがどう評価しているか。

 

 もちろん契約に際してはコンディションチェックをくまなく行い、不安なしとの結論が出たからこそ入団が決まったはずだ。

 しかし、昨年春にメスを入れた利き腕の右肩の復調具合は未知数なはずだ。ペイトリオッツのオフェンスでは肩が強いだけでなく、ロングパスがレシーバーに届くタイミングとコントロールが高いレベルで要求される。

 この大きな課題をニュートンがクリアできるか否かはトレーニングキャンプやプレシーズンゲームで判断される。

 

 したたかな知将ビル・ベリチック・ヘッドコーチ(HC)が全てを取り仕切るペイトリオッツも、完全には信頼を置いていないのかもしれない。

 ニュートンとの契約期間をわずか1年としたのは、ペイトリオッツが「保険」をかけたからではないだろうか。

ペイトリオッツのビル・ベリチックHC(AP=共同)
ペイトリオッツのビル・ベリチックHC(AP=共同)

 

 ニュートンは身体能力と脚力を武器としてきたQBであり、その意味でブレイディとは対照的なタイプだ。

 これがペイトリオッツのスタイルに合わないのではないかとの疑問もあるが、ジョシュ・マクダニエルズ攻撃コーディネーター(OC)は、ニュートンのようなモバイル系QBに合ったスキームも用意していると考えられる。

 

 マクダニエルズOCは、ブロンコスのHCだった2010年に、周囲の反対を押し切ってティム・ティーボウをドラフト1巡指名した。

 周囲が反対したのはティーボウはパスが不得手で、NFLでパサーとして通用するとは考えられなかったからだ。

 残念ながらその評価は間違いではなかったのだが、それでもマクダニエルズOCはティーボウの身体能力と脚力を生かしたゲームプランを用意して彼を起用した。

 

 マクダニエルズOCはその年のうちに解任されてペイトリオッツに戻るのだが、2013年にはブロンコスから解雇されてフリーエージェントだったティーボウをペイトリオッツに入団させた。

 これを見てもマクダニエルズが同様に身体能力と脚力を武器にするスキームをペイトリオッツに導入していることは容易に想像がつく。

 

 ニュートンとペイトリオッツがどのようなケミストリーを生み出すのか。その鍵を握るのは、肩の復調とマクダニエルズOCのスキームだ。

 間もなく始まるトレーニングキャンプで、その答えが出る。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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