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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「大事なのは勝負強さ」 NFL入り目指すIBMのK佐藤敏基選手

2020.6.24 12:00 生沢 浩 いけざわ・ひろし
アメリカンフットボールで日本人初の米プロNFL入りを目指すIBMの佐藤敏基選手=6月18日、川崎市
アメリカンフットボールで日本人初の米プロNFL入りを目指すIBMの佐藤敏基選手=6月18日、川崎市

 

 NFLでのプレーを目指す日本社会人Xリーグ、IBMビッグブルー所属のキッカー(K)佐藤敏基選手(26)に、カウボーイズとレイダーズが関心を寄せていることが分かった。共同通信とのインタビューで佐藤選手自身が明らかにした。

 

 インタビューのなかで佐藤選手は「カウボーイズとレイダーズが興味を持ってくれており、オファーを待っている」と述べている。

 この記事は英語にも翻訳されて海外に発信され、アメリカのNBCスポーツが運営するサイト「ProFootball Talk」でも紹介された。

 佐藤選手は早稲田大学を経て、2016年にIBMの一員になった。大学4年生の時には甲子園ボウルを経験し、昨年は日本最長記録に並ぶ58ヤードのFGを成功させた。

 

 今年3月にアメリカで行われたトライアウトの後に、NFL公認の代理人と契約することに成功した。

 日本人選手に公認代理人がつくというのはとても重要だ。アメリカ国内で実績も知名度もない日本人選手とNFLをつなぐパイプ役になるからだ。

 日本人のNFL選手が誕生するためには実力だけではなく、こうした代理人の力も不可欠なのだ。

 

 NFLは現在、新型コロナウイルスの拡大で閉鎖されていたチーム施設への出入りが解禁となり、徐々に9月の開幕に向けて準備を進めている。

 7月下旬から各チームともトレーニングキャンプに入り、佐藤選手はここに招聘されることを目指す。現時点で2チームのアンテナにかかったというのは朗報だ。

 

 ただ、佐藤選手もインタビューのなかで述べているように、カウボーイズが実際にキャンプに招集する可能性は高くないかもしれない。

 カウボーイズでは昨年終盤に契約したカイ・フォーバース選手に加えて、大物Kグレッグ・ザーライン選手を獲得したばかりだ。

 昨年まで8年間ラムズでプレーしたザーライン選手は、2017年にはオールプロにも選ばれた逸材だ。それなりの厚遇で迎えられており、競争相手としてはかなり手ごわい。

 

 レイダーズには二人のKが登録されているが、そのうち一人はドラフト外入団の新人だ。

 ドミニク・エバーレというこの選手はユタ州立大学でプレーしていたが、出身はドイツだ。

 外国人であっても実力があれば契約するというレイダーズの意思の表れとみるならば佐藤選手にもチャンスはある。

笑顔でインタビューに答える、アメリカンフットボールで日本人初の米プロNFL入りを目指すIBMの佐藤敏基選手=6月18日、川崎市
笑顔でインタビューに答える、アメリカンフットボールで日本人初の米プロNFL入りを目指すIBMの佐藤敏基選手=6月18日、川崎市

 

 レイダーズで昨年まで先発を務めてきたのはダニエル・カールソン選手だ。

 今年4年目で196センチ、98キロと、体格では佐藤選手(178センチ、80キロ)を上回る。

 ただし、過去の最長FGの距離は50ヤードで、これは十分に佐藤選手が太刀打ちできる数字だ。

 カールソン選手は昨年のFG成功率が73・1%と振るわず、キャンプで競争の機会さえ与えられれば佐藤選手が首脳陣の目を引くことも夢ではない。

 

 佐藤選手はインタビューで「Kはどれだけ高い確率で決められるか、勝負強いかが大事。筋力でなく精神力で戦える唯一のポジション」とも答えている。

 サイズがハンディにならない分、KはほかのポジションよりNFLに近いと言っていい。

 

 「ProFootball Talk」の記事に寄せられた読者のコメントが興味深い。

 「58ヤードは脚力の強さを証明している。どれだけ正確かにもよるが、イチローにようにNipponが誇れる人になってほしい」「もう一人の佐藤(琢磨)がインディ500で勝ったんだから、こちらの佐藤がNFLのKになってもおかしくない」と期待する。

 

 これまで彼のことを全く知らなかった本場のNFLファンに名前を知られるというのは決して損ではない。

 こうしてアメリカのメディアに取り上げられることも大切な追い風になる。佐藤選手にキャンプでライバルと競える機会が与えられることを望むばかりだ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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