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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.329

2020.5.15 14:47 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
関学大「ファイターズ」の2019年度版イヤーブックの巻末に掲載された武田建さんのコラム
関学大「ファイターズ」の2019年度版イヤーブックの巻末に掲載された武田建さんのコラム

 

 ステイホームでテレワーク、時々出社して休日は人混みを避けてウオーキング。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ストレスのたまる生活が続いている。

 

 春の試合は全て中止になったので、取材に行くこともない。そこで昨シーズンの各大学のイヤーブックをあらためて見直してみた。

 充実しているのは、やはり関西学生リーグに所属するチームのもの。チームの歴史だけでなく、よく考えられた企画が目を引く。

 

 その中でも、関学大「ファイターズ」の一冊は内容が濃い。2019年度版の最終ページには、13回目となる武田建元監督の「コーチ雑感」というタイトルのコラムが掲載されている。

 

 心理学者らしく高度な戦術を駆使する「知将」としてのイメージが強い武田さんだが、大学の監督時代は、ライバル日大の監督だった篠竹幹夫さん(故人)のスパルタ方式が、勝つための唯一絶対の指導法と信じ「怒鳴って叱って、10年間で7回甲子園ボウル制覇を果たした」と述懐している。

 しかし、多くの学生に日本一を経験させる功績を残す一方で「選手たちは『武田、死ね!』と言っていた」とも打ち明ける。

 

 当時の教え子が「怖かった」と口をそろえる「武田先生」の意識が変わったのは、監督を退任して2度目の米国留学をしてからだそうだ。

 ミシガン大で行動心理学を学ぶ中で「褒めることの効用」を実感したという。

 

 「選手はよいプレーをしたときに褒めれば、またよいプレーをする。叱ることも大切だが、悪いプレーをした選手にどうしてほしいのかを説明する。コーチ自身が、やってみせることができれば最高」

 「歯を食いしばって褒めていることもある」。武田先生が到達した理想のコーチングを実践するためには、説得力のある言葉の習得とともに「忍耐」も条件に含まれている。

 

 東京生まれの武田先生は、標準語と関西弁を巧みに使い分ける。

関学大の監督時代について語る武田建さん
関学大の監督時代について語る武田建さん

 2016年シーズンのライスボウルでお目にかかったときも、関西弁でいかに自分が駄目コーチだったかをユーモアを交えて話してくれた。

 

 米寿を迎えた今も、熱心に子どもたちを指導している「元鬼監督」には、またじっくりお話を聞いてみたいと思っている。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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