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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

元ドルフィンズHCドン・シューラ氏が死去 パーフェクトシーズン達成した名将

2020.5.5 15:58 生沢 浩 いけざわ・ひろし
1972年シーズン、無敗でスーパーボウルを制したドルフィンズのHC時代のドン・シューラ氏(AP=共同)
1972年シーズン、無敗でスーパーボウルを制したドルフィンズのHC時代のドン・シューラ氏(AP=共同)

 

 NFL歴代最多勝利数を誇り、マイアミ・ドルフィンズ時代に100年のリーグ史で唯一の「パーフェクトシーズン」を達成したHCであるドン・シューラ氏が、5月4日(日本時間5日)にマイアミの自宅で亡くなった。90歳だった。

 

 「名将」と呼ぶにふさわしい実績と数多くの名選手を輩出したことで誰からも愛され、尊敬される指導者だった。

 2回のスーパーボウル制覇を含む通算347勝は歴代トップ。現役最多のビル・ベリチックHC(ニューイングランド・ペイトリオッツ、304勝)でもこれを抜くのに少なくともあと3シーズンは必要だ。

 ボルティモア・コルツとドルフィンズでHCを務め、QBだけでもジョニー・ユナイタス、ボブ・グリーシー、ダン・マリーノの3人の殿堂入り選手を育てた。

 

 シューラ氏の最も有名な功績は、何といっても1972年の全勝優勝だ。ドルフィンズはこの年、レギュラーシーズンを14勝0敗で終えてそのままスーパーボウル優勝まで一度も敗れることはなかった。現在でもNFLでこの「パーフェクトシーズン」を実現したチームはほかにはない。

 2007年シーズンのペイトリオッツが、史上初めてレギュラーシーズン16試合制で全勝を達成したが、スーパーボウルでニューヨーク・ジャイアンツに敗れて18勝1敗に終わった。

 

 シューラ氏はDBとしてNFLで7年プレーした後にコーチに転身した。初のHC職はコルツで、1963年の就任時は33歳で当時の最年少HCだった。

 ドルフィンズの指揮官としての印象が強いが、コルツでもチームをスーパーボウルに導いている。第3回大会だ。

 しかし、この時はQBジョー・ネイマス率いる旧AFL代表のニューヨーク・ジェッツに敗れてしまう。

 スーパーボウル史上最大のアップセットの一つであるこの試合は、2連勝中だった旧NFL代表が初黒星を喫した不名誉なものでもあった。これがのちのシューラ氏の退任につながる。

 

 コルツ退団後ドルフィンズに招聘されたシューラ氏は、スター選手不在のなかで強力なディフェンスを作り、新編成されたAFCで強豪チームに育て上げる。いわゆる「ノーネームディフェンス」だ。

 オフェンスはRBラリー・ゾンカのランを中心として、就任2年目で早くもドルフィンズを初のスーパーボウルに導いたのだった(結果はダラス・カウボーイズに敗戦)。

 

 二つの異なるフランチャイズをスーパーボウルに導いたHCはシューラ氏が初めてだ。

 シューラ氏のスーパーボウル出場は通算6回で、9回のベリチックHCに次ぐ2番目に多い記録だ。

 

 1980年代にはマリーノという稀代のパサーを得てオフェンス力に優れるドルフィンズを作り上げるが、リーグ優勝には縁がなく1995年シーズンを最後に33年のHC生活から退いた。

 

 NFLはフットボールに貢献のあった高校のコーチに贈る賞を2010年に新設したが、それには彼の名前を冠して「ドン・シューラNFLハイスクールコーチ・オブ・ザ・イヤー」と呼ばれている。

2007年11月、フロリダ州にある自宅でインタビューに答えるドン・シューラ氏(AP=共同)
2007年11月、フロリダ州にある自宅でインタビューに答えるドン・シューラ氏(AP=共同)

 

 2月の第54回スーパーボウルの試合前には100周年記念イベントに姿を現し、ドルフィンズのホームであるハードロックスタジアムで大きな歓声と拍手を浴びた。おそらくこれが日本のファンが見ることのできた最後の雄姿だろう。

 名将の訃報はファンにはつらいものだ。しかし、「ドン・シューラ」の名前はドルフィンズの「パーフェクトシーズン」とともにいつまでも語り継がれ、その栄光が色あせることはない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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