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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

新型コロナウイルスで異例の対応 「デジタルドラフト」実施するNFL

2020.4.22 9:34 生沢 浩 いけざわ・ひろし
NFLのドラフトで1位指名が予想されるLSUのQBジョー・バーロー(AP=共同)
NFLのドラフトで1位指名が予想されるLSUのQBジョー・バーロー(AP=共同)

 

 今年のNFLドラフトは4月23日から例年通り3日間の日程で行われる。

 

 ただし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で通常開催とはならず、各チームとNFLコミッショナー、有望選手をオンラインでつなぐデジタル色の濃いイベントとなる。

 

 

 ロジャー・グッデル・コミッショナーは、ニューヨークの自宅から指名選手の名前を読み上げる予定で、ドラフト会場内のファンの歓声に包まれて壇上で指名選手を祝福するいつもの光景は今年は見られない。

 

 NFLはウイルス感染のさらなる拡大を防ぐためにチームの施設をすべて閉鎖している。

 

 また、ドラフトの準備のためにチーム関係者が候補選手のトライアウトを実施したり、面談を行ったりすることも禁じられた。

 

 そのため、各チームはスカウト陣が普段から集めたデータやビデオ、ドラフトコンバインの内容を精査することで指名選手を決めなければならない。

レッドスキンズの指名が予想される、オハイオ州立大のDEチェース・ヤング(AP=共同)
レッドスキンズの指名が予想される、オハイオ州立大のDEチェース・ヤング(AP=共同)

 

 

 さらに大変なのは、指名選手を決めるGMやHC、最終権限を持つオーナーらが一堂に会することが認められていないことだ。言うまでもなく、密集状態を避けるためにほかならない。

 

 例年なら「ウォールーム」と呼ばれる部屋にチームスタッフがそろい、さまざまな意見を出し合い指名選手を決めたり他チームとトレード交渉を行ったりするのだが、今年はそれぞれが自宅にこもり、オンラインや複数の電話を駆使して連絡を取り合う必要がある。

 

 

 指名を行う責任者(通常はGMか人事部長)は自宅からドラフトに参加し、ネット環境の整備などテクニカルな面でサポートする技術スタッフとファンの妨害などに備えるセキュリティー担当者をそれぞれ一人ずつそばに置くことができるが、それ以外のチーム関係者が同席することは許されない。

 

 ライオンズのボブ・クインGMのケースを例として紹介したAP通信の記事によれば、彼は自宅のオフィスにテレビ1台とそのほかにモニターを3台、パソコンを2台、プリンター1台、ドラフト専用の電話と自宅の電話回線、さらに携帯電話を二つ用意して備えているという。

 

 

 面と向かって言葉を交わせない分だけ相談には時間がかかるはずだが、それでも指名のための制限時間は例年と変わらない。

 

 各チームの持ち時間は1巡で10分、2巡で7分、3~6巡が5分で最終の7巡目は4分だ。

 

 日程は初日に1巡指名のみが行われ、2日目に2、3巡、最終日に残りの4ラウンドが消化される。

 

 

 今年のドラフト候補生は、オフェンスのスキルポジションに人材が豊富だとされる。

 

 例年大きな注目を浴びるQBではハイズマントロフィー受賞者のジョー・バーロー(ルイジアナ州立大4年)、チュア・タゴバイロア(アラバマ大3年)、ジャスティン・ハーバート(オレゴン大4年)のトップ10内での指名が予想されている。

アラバマ大の3年生QBチュア・タゴバイロア(AP=共同)
アラバマ大の3年生QBチュア・タゴバイロア(AP=共同)

 

 全体1位指名権を持つベンガルズはアンディ・ダルトンに代わる新QBを求めており、バーロー指名はほぼ確実だ。

 

 

 QBに人材が欲しいドルフィンズ(全体5、18番目指名)やチャージャーズ(同6番目)も1巡でQBの獲得に乗り出す可能性が高い。

 

 こうしたチームは2番目指名のレッドスキンズ、3番目のライオンズ、4番目のジャイアンツなどにトレードを持ち掛け、順位を上げておいて希望のQBを指名する戦略をとるかもしれない。

 

 

 例年にない当たり年だとされるWRはジェリー・ジューディー(アラバマ大3年)、彼のチームメートのヘンリー・ラグス(同3年)、シーディー・ラム(オクラホマ大3年)、ジャスティン・ジェファーソン(ルイジアナ州立大3年)らが注目される。

NFLのスカウトから高い評価を受けているアラバマ大のWRジェリー・ジューディー(4)(AP=共同)
NFLのスカウトから高い評価を受けているアラバマ大のWRジェリー・ジューディー(4)(AP=共同)

 

 ディフェンスでは、オハイオ州立大の3年生DEチェース・ヤングの評価が高く、レッドスキンズが2位指名すると予想されている。

 

 

 オンラインでつなぐという初の試みで行われるNFLドラフト。アメリカではすべてのプロスポーツがその活動を休止しているので、普段以上に注目される。

 

 デジタル時代を象徴するイベントとなるが、技術上のわずかなミスもなくすべてを行うのは至難の業だ。

 

 チームスタッフにもデジタル分野におけるノウハウの有無が要求される。

 

 蓄積された選手データと瞬時の判断力がドラフトでは不可欠だが、今年はさらにデジタルへの習熟度も試されることになる。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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