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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

新型コロナウイルス対策に直面するNFL 新興リーグは破産申請

2020.4.15 12:01 生沢 浩 いけざわ・ひろし
テネシー州ナッシュビルで開催された昨年のNFLドラフトは、大勢のファンが会場に詰めかけた(AP=共同)
テネシー州ナッシュビルで開催された昨年のNFLドラフトは、大勢のファンが会場に詰めかけた(AP=共同)

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な経済不況が懸念されるなか、その影響はついにアメリカンフットボールの世界にも及んだ。

 プロレス団体WWEと有力テレビ局NBCの共同出資で再発足したプロリーグのXFLが破産申請をし、事実上リーグ消滅の危機に直面していることが明らかになった。

 

 XFLは2001年にNFLの対抗リーグとして1シーズンだけ活動し、19年ぶりに復活したことで話題を呼んだ。

 しかし、10週を予定していたレギュラーシーズンの半分を消化した時点で、アメリカ国内での新型コロナウイルス感染拡大のためリーグ活動を中断。後に正式にシーズン終了を発表した。

 

 NFLがオフの間にファン獲得をもくろんだが、シーズンを完了できなかったことで大幅な収入減に陥り、今回の破産申請となった。

 既にリーグ職員のほとんどが解雇されており、活動再開は不可能な状態だ。XFLは再び1シーズンだけで終わることとなりそうだ。

 

 XFLの破産はNFLにとって決して対岸の火事ではない。一向に収束の気配が感じられない新型コロナウイルス禍はNFLの経営にも暗い影を落としかねない。

 NFLは、4月下旬に予定しているドラフトの規模を縮小すると発表している。

 本来ならラスベガスで大々的なイベントとして行うはずだったが、今年は感染拡大防止の目的でほとんどがテレワークで行われる。

 ロジャー・グッデル・コミッショナーがドラフト指名選手を読み上げ、それがテレビ中継される。

昨年のドラフトでスピーチするNFLのロジャー・グッデル・コミッショナー(AP=共同)
昨年のドラフトでスピーチするNFLのロジャー・グッデル・コミッショナー(AP=共同)

 

 各種イベントが中止となったことで、そこからの収入が得られなくなる。

 NFLはまだ態度を明らかにしていないが、夏のトレーニングキャンプも規模が縮小されたり、ファンの見学が禁止されれば、そこからのチケット収入やグッズ売り上げが見込めなくなる。

 近年のNFLはドラフトやキャンプ、スーパーボウルの際のメディアデーや表彰式などをショーアップし、ファンを動員することを新たな収入源としてきた。この分野での収益減は免れないだろう。

 

 万が一シーズンが短縮されるなどの事態になれば、さらに状況は悪化する。

 NFLの収入の二本柱は放送権料とチケット収入だ。幸い放送権料は長期契約によって莫大な金額が見込めるので、XFLのようにすぐに経営に行き詰まることはない。

 また、リーグ収入を各球団に分配するレベニューシェアリングを採用しているので、グリーンベイやバファローのようなマーケットの小さい都市のチームでもすぐに破産するような心配はない。

 

 しかし、試合数が減ればそれだけチケット収入やホームゲーム開催で得られるグッズやフードの売り上げは少なくなる。放送権料の返還という話も出てくるかもしれない。

 

 これによって選手が不利益を被ることも心配される。試合が行われなければ、その分のサラリーの支払いをチームが拒否する可能性も否定できないからだ。

 感染症の影響とはいえ、試合がなくなればそれに対する報酬も払う必要がないと考えるのが経営者だろう。

 当然選手は反発することが予想され、最悪の場合ストライキによるさらなる試合減も懸念される。

 

 NFLが減収となれば来年のサラリーキャップにも影響が出るかもしれない。サラリーキャップの上限は毎年増額され、それによってチームは新たな戦力をフリーエージェントで獲得することが可能になる。

 もしサラリーキャップが現状維持もしくは減額となれば、年俸の高いベテラン選手の放出という事態も起こり得る。いずれにせよ、割を食うのは選手である。

ブロンコスの本拠地の外をマスクをして散歩する若いカップル(AP=共同)
ブロンコスの本拠地の外をマスクをして散歩する若いカップル(AP=共同)

 

 今のところNFLはトレーニングキャンプもシーズン開幕も、スケジュールの変更を行わずに迎える準備を進めている。

 その一方で、チームの施設は閉鎖されたままで、再開のめどはたっていない。

 NBAやNHLのシーズンがプレーオフを行わないまま終了となることが現実味を帯び、MLBも開幕時期を決められない状況で、NFLだけが特別というわけにはいかない。あらゆる事態を想定した対策が今から必要だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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