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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

新型コロナ感染拡大で高額寄付 地域貢献に熱心なセインツQBブリーズ

2020.4.1 12:38 生沢 浩 いけざわ・ひろし
地域貢献に熱心な選手として知られる、NFLニューオーリンズ・セインツのQBドルー・ブリーズ(AP=共同)
地域貢献に熱心な選手として知られる、NFLニューオーリンズ・セインツのQBドルー・ブリーズ(AP=共同)

 

 世界中で感染拡大が止まらない新型コロナウイルスは、NFLにも少なからず影響を及ぼしている。

 

 現在はシーズンオフのため開催試合の延期や中止の措置はとられていないが、チーム関係者の不要不急の移動が原則禁止となるなど、リーグの活動は大きく制限されている。

 

 

 現状では4月下旬にラスベガスで予定されているドラフトや、9月上旬の2020年シーズン開幕の日程に変更はない。

 

 しかし、ドラフトと同時開催の予定だったいくつかの行事が取りやめとなり、先月フロリダ州で行われる予定だったNFLミーティングは中止された。

 

 

 ちなみに2月のスーパーボウル直後に開幕したXFLは予定の半分にあたる5週を消化した時点で終了となった。

 

 NFL関係者にも感染者が出ている。まず3月中旬にセインツのショーン・ペイトンHCがPCR検査で陽性が出たことを公表。現在は回復して通常の生活を送っているという。

 

 3月30日には、かつてルイジアナ州立大学(LSU)でエースWRとして活躍し、NFLではわずかの期間ながらブロンコスに在籍したオーランド・マクダニエルズ氏が新型コロナウィルスが原因とみられる合併症で死亡した。59歳だった。

 

 

 そのほかジャガーズが誕生した際に初のドラフトで全体1位指名を受けた、元OTトニー・ボセリ氏も感染したとの報道があった。

 

 日本時間4月1日午前10時の時点で現役選手が感染したとの情報はない。

 

 

 こうした状況でNFLの社会貢献の動きは比較的早かった。3月26日にNFLは選手会(NFLPA)や32人のオーナーと協力して、アメリカ赤十字などに総額3500万ドル(約38億円)を寄付。金額はその後も増えているという。

 

 

 選手では同日にセインツのQBドルー・ブリーズが、チームの本拠地ニューオーリンズがあるルイジアナ州に対し、ブリタニー夫人との共同名義で500万ドル(5億5000万円)を寄付した。

 

 ブリーズ夫妻は普段から基金を設立するなどして、ニューオーリンズ市やルイジアナ州に寄付を重ねてきた。そうした仕組みが出来上がっていたからこその素早い行動だった。

 

 

 ブリーズの地域貢献は有名だ。その始まりは2005年に猛威を振るったハリケーン「カトリーナ」にさかのぼる。

 

 ルイジアナ州も襲ったカトリーナは、セインツの本拠地スーパードームの一部を破壊。その後ドームが避難所として長期間使用されたこともあり、セインツはバトンルージュやテキサス州サンアントニオなどを転々としながらホームゲームを開催しなければならなかった。

 

 

 ブリーズが5年間在籍したチャージャーズを解雇されてセインツに移籍してきたのは翌年だ。

 ニューオーリンズはまだ復興途上にあり、セインツも無事にシーズン開幕を迎えられるかわからないままでの入団だった。

 

 

 ブリーズはニューオーリンズに移り住むとすぐに基金を設立し、カトリーナの被害に遭った地元の人々へ救いの手を差し伸べた。

 

 やがてブリーズの入団したセインツは大きく改善されたパスオフェンスを中心に快進撃が始まる。

 

 これが被災者の心のよりどころとなり、復興を後押ししたことは言うまでもない。ブリーズはフィールドの内外でニューオーリンズの人々を支えたのだ。

 

 

 ブリーズもまたニューオーリンズをこよなく愛する。昨シーズンいっぱいでセインツとの契約が終了し、一時は引退も考えたというが翻意してチームと再び2年の契約を結んだ。

 

 この際にもブリーズにはセインツ以外のチームとの契約は選択肢になく、あくまでもニューオーリンズでの現役続行にこだわったのだった。

 

 

 そうした思いがあるからこそ、今回の新型コロナウイルス対策への寄付も自然な流れだった。

 

 フィールドのプレーで魅了するだけでなく、地域への還元も忘れない。ブリーズがファンから深く愛される理由はここにあるのかもしれない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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