【編集後記】Vol.322

5年ぶりに結成した「日本代表」が2月27日、米テキサス州ダラス近郊のフリスコに向けて出発した。
藤田智ヘッドコーチ(HC=富士通シニアアドバイザー)が率いる「JAPAN」は、現地時間の3月1日(日本時間2日)に、プロフットボール選手育成のために2017年に設立された「THE SPRING LEAGUE(TSL)」の選抜チームと対戦する。
試合会場は、NFLダラス・カウボーイズのトレーニング施設。世界選手権と違いタイトルがかかっていない「エキシビションマッチ」だが、久しぶりに45人のフル代表メンバーが、本場の選手を相手に力試しをする絶好の機会になる。
新型コロナウイルスの感染拡大で、国内のスポーツイベントが相次いで延期や中止になる状況下での渡米。日本協会の関係者によると、試合開催を熱望するTSL側が、万全の態勢で日本代表を迎える準備をしているという。

ライスボウルが行われた1月3日、試合前に東京ドーム内で記者会見した藤田HCは「試合をするからには勝ちにいくが、それ以上に何人アメリカで通用する選手が出てくるかが大切」と話していた。
昨年日本で開催されたラグビーのワールドカップ(W杯)の例もあるように、日本代表の活躍はその競技の人気と発展に大きく影響する。
藤田HCも代表の存在意義はよく理解していて、過去にコーチとして参加した日本代表の先頭に立つ責任の重さを感じている。
最近は便利になり、インターネットやSNSなどで練習風景の映像を見て選手、コーチの声を聞くことができる。Xリーグの公式サイトで、藤田HCはプロを目指すアメリカ人選手の厳しい環境を引き合いに出し、選手の士気をこう鼓舞していた。
「集中力が足りない。もっとうまくなれる。みんなはどのレベルにいきたいんだ。もっと1プレーに集中しよう」

ディフェンスを担当する武田真一コーチ(オール三菱)が、とてもいい話をしていた。要約して紹介する。
「ラグビーやるか、サッカーやるか、野球やるか、アメフトやるか迷っている子どもたちに、フットボールを選んでもらえるような試合をしたい。もう一度自分たちがフットボールを選んだときのことを考えてほしい。何を見て、何に感動してフットボールを選んだか。それは個人技で、アサインメントやプレーコールではない。(見る人が)感動するのは個人技。すごいキャッチ、すごいタックル、すごいヒット。今回は個人技でアメリカと勝負するいいチャンス。そこにこだわろう」
TSL選抜には、NFLでのプレー経験者が含まれているという情報もある。
「ベストを尽くして結果を残してきます!」。関学大在学時から親交があり、実力を認められて代表入りしたLB山岸明生選手(富士通)から、出発前に頼もしいメッセージが届いた。(編集長・宍戸博昭)