メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「試験を受けるにはそれなりの準備を」 トライアウトのお話(前編)

2020.2.6 10:45 中村 多聞 なかむら・たもん
日本代表の板井征人オフェンスコーチの話を聞くトライアウトの参加者=2月1日、富士通フロンティアーズフィールド
日本代表の板井征人オフェンスコーチの話を聞くトライアウトの参加者=2月1日、富士通フロンティアーズフィールド

 

 今年の「スーパーボウル」は、ドラマチックな最終クオーターでとても楽しめましたね。

 BS放送、CS放送、そしてネットで2種類。スーパーボウルをライブで視聴する方法が、僕の知る限り日本には合計四つもありました。

 すごい時代ですねー。その割に普通のニュースなんかでは大して取り上げてもらえないのが腹立ちました!

 

 勝利したチーフスのヘッドコーチ(HC)「アンディ・リードさん」は、僕がパッカーズに行った時のアシスタントHC兼QBコーチでした。

 物腰の柔らかいおっちゃんで、覚えの悪い僕に根気よく作戦を指導してくれました。

 「いいか、タモン。お前には七つのランプレーを用意してある。試合ではどのプレーがコールされるか分からないし、スクリメージ練習で少ししかプレーさせてもらえないかもしれないが、しっかり覚えてできるようになっておけよ」なんて言いながら、ベーシックなプレーを細かくレクチャーしてくれました。

 

 「こいつらが相手してくれるから、あっちでハンドオフの練習をしときなさい」と差し向けられたQBは、現在イーグルスのHCであるダグ・ピーダーソン君と、新人のマット・ハッセルベック君でした。

 彼らはざっくり言えば僕と同じく無名の、いつクビになるかビクビクしているグループです。隅っこでチマチマ練習していました。詳しくは彼らの経歴を検索してみてください。

 

 その翌年から、フィラデルフィアにピーダーソン君を連れてHCになったのが今から21年前。そんなに経つのですね。

 で、今回ようやく優勝。向こうは僕のことなど1ミリも記憶にないでしょうけど、僕からすれば昔習ったコーチがスーパーボウルで勝ったわけですから、いつものNFLゲームを見ている時よりは若干熱がこもりました。まあちょっとした自慢です。

 

 話は変わりまして、今フットボール界で話題のカナディアンフットボール(CFL)と日本代表選考の合同トライアウトを応援しに行ってきた時のことを書きます。

 

 まず、アメリカ人(カナダ人かもしれません)が行うフットボールのテスト内容はここ20年以上変化がありません。

 内容はいつも同じです。NFLも日本のチーム単位で開催される各種テストも大抵同じ内容になっています。

 

 基礎体力テストとして40ヤード走、ベンチプレス 、垂直跳び、立ち幅跳び、その他いろいろがアメリカ風になっていて順番に計測していきます。

 これは事前にこのような内容だと受験者には通知されているのですが、大部分の選手がそれほど訓練してきていないのです。なんでそんなの分かるんだって? そりゃ一目見れば分かりますよ。

 僕はこれらの種目でいい成績を出せばアメリカ人が認めてくれると知って以来、フットボールの技術やミーティングの何倍も基礎体力テストの鍛錬を積んできましたから。

 

 中には運動不足で足がもつれている人や、やり方を知らない人もいたりと「無調整で受験とはずいぶんと勇気があるなあ」と感心しました。

 ただ、計測側にも若干違和感を持った部分がありました。体力テストの最重要事項である40ヤード走を測定する場所の設置です。

 光電管が両サイドに置かれた直線コースになっており、中間タイムも計測できるようにスタートからゴールまで光電管が数カ所に置いてあります。

 

 駐車場や公園内などあらゆる環境下で何千回と訓練を積んでいた当時の僕なら適応できたとは思うのですが、それでもタイムが出にくいコース設定でした。

 コースがフットボールフィールドに無作為で設置されており、スタートからゴールまでの自分が通る直線がイメージしにくいのです。自分の走行する直線に対して目安となる「縦ライン」が近くにないのです。

 

 皆さんご存知のように、現在のスプリント競技ではスタートからかなりの距離まで顔を上げません。

 ゴールを見るのはしばらく走ってからです。でも地面には自分の走行するラインに対して垂直なラインが5ヤード毎に出てくるだけです。コレではまっすぐ走るのがとても難しいんです。

 

 プロの受験する40ヤード走は、小学校の運動会ではありません。スタートで構えて、1歩目は何センチ前の何センチ斜め、2歩目は何センチ……とキッチリ決めて徹底的に練習してきているのです。

 しかし、慣れない環境下(芝質、芝の長さ、気温、風など)であの設定ではかなり高い確率で足の置き場所にミスが出てしまうと思うのです。

 その証拠に、最速の選手でもアメリカじゃディフェンスラインでも出せるようなタイムになっていました。

CFLトライアウトのスケジュール表=2月1日、富士通フロンティアーズフィールド
CFLトライアウトのスケジュール表=2月1日、富士通フロンティアーズフィールド

 

 部外者の僕に当日の諸事情は分かりませんし、なんらかの意図があった設定なのかもしれませんが、僕が初めて受験したプロテストは真冬の雨の中で枯れた天然芝でしたので、そんなのに比べたらそれほど悪い条件でもないかもしれません。

 でも、人生を懸けている人もいたはずですので、思ったようなタイムが出せずとても悔しかったと思います。

 コースを見た時には「光電管のテストをしているのかな?」と思ったくらいですので、そのまま試験が始まった時には苦笑いでした。

 

 20年ほど前「プロのテストを受けるから、細かい攻略法を教えろ」と、厚かましく毎日のように我が家を訪ねてきていた若かりし頃の山田晋三氏は、今回の運営側であり、日本人が海外プロに出向いた先駆者の一人です。

 「タモンならプロテストの攻略法を伝授してくれるのでは?」と山田氏は気づけたのに、現在僕が所属するチームからの受験者たちからは、事前にただの一度も質問はありませんでした。

 

 そもそも誰が受験するのかも知りませんでした。こういった信頼関係を構築できない理由は僕の人間性が原因なのですが、夢を叶えたい時にそんな好き嫌いを気にしている場合ではないと思うのですがどうでしょう。

 

 以前は僕も選手であり、人に指導するなど面倒で負担だとしか思いませんでしたが、現在は指導者の立場です。他の指導者の皆さんと違って個人能力向上に特化していますが。

 こういったトライアウトの臨み方や攻略法も、通常の試合と同様に膨大な量の準備方法があります。

 通常は一流のその上を目指す選手のためにチーム内での指導に限定しておりますが、この週末に「QB道場」主催の「タモン式ランニングバック養成所の2日間集中講座」が開催されます。

 どちらか1日だけでも参加できるそうなので、ランニングバックのことで質問や悩みをお持ちの方は是非ご参加ください。お問い合わせお申し込みはこちらのサイトからお願いします。

https://ameblo.jp/qbdojo/entry-12569127453.html

 ということでトライアウトのお話の続きはまた来週に!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

最新記事