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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.318

2020.1.30 12:39 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
関西学院上ケ原キャンパスの時計台を背景に記念撮影する「ファイターズ」の大村和輝新監督
関西学院上ケ原キャンパスの時計台を背景に記念撮影する「ファイターズ」の大村和輝新監督

 

 今にも雪に変わりそうな冷たい雨に震えながら、たどり着いた焼き鳥屋の暖簾をくぐると、既に「彼」は奥の席に座っていた。

 関西の国立大学でアメリカンフットボールをしていた「彼」は、選手として日本一も経験し、今は関東の国立大学のコーチを20年以上務めている。

 仕事で海外へ出向く機会が多い職業だが、「フットボールがあるので頑張れる。滞在先のホテルでは、いつも練習や試合のビデオを見ている」という。

 試合中に熱くなりすぎて、審判からイエローフラッグを頂戴したことがある「彼」も、時代に合った指導法を模索している一人だ。

 

 「コーチとは、どうあるべきか」は、時代によって変わるのだと思う。30年前は当たり前だった「上意下達」は古い体質の悪習として扱われ、今では受け入れられない。

 「体罰」などはもってのほかで、そんな事実が明らかになれば、たちまちその組織は存続の危機に陥る。長い時間をかけて築き上げてきた師弟間の信頼関係も、この場合斟酌されない。

 

 かつての「男は黙って……」は美徳ではなくなった。自分の言葉をしっかり持ち、教え子とのコミュニケーションを円滑に図ることができる指導者が求められる時代である。

 個性派の指導者が長く率い、それなりの成果を上げていたチームは、次世代への引き継ぎが難しい。それは過去の事例が物語っている。

 

 関学「ファイターズ」は、28シーズン牽引してきた鳥内秀晃監督が勇退し、大村和輝アシスタントヘッドコーチと2月1日付で交代する。

記者会見で質問に答える大村和輝新監督
記者会見で質問に答える大村和輝新監督

 〝長期政権〟がもたらす弊害をいち早く認識していたのが関学であり、鳥内さんも「自分でもここまで長くやるとは思わなかった」と述懐している。

 

 異例の長期体制になった理由は、鳥内さん自身が学生から学び、監督としてのスタイルを少しずつ変えていったからではないか。

 何より学生との「対話」、言葉のやり取りを大切にしてきた。

 

 参謀役として後方からチームを支えてきた大村新監督は、記者会見で「鳥内さんより論理的に物事を考えられる」と言い、笑いを誘っていた。

 新監督は名うての戦術家であるとともに、前任者以上の「硬派」と見ている。

 

 攻撃コーディネーターとして、引き出しの多さを存分に見せつけてきた才能を生かしつつ、名門チームをどうコントロールしていくのか。楽しみな人が表舞台に登場した。(編集長・宍戸博昭) 

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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