メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

勉強もスポーツも頑張るのが米国流 久しぶりのアメリカ訪問で思うことVol.4

2020.1.29 11:16 中村 多聞 なかむら・たもん
フットボール部の学業成績優秀者を張り出した掲示板=提供・中村多聞さん
フットボール部の学業成績優秀者を張り出した掲示板=提供・中村多聞さん

 

 1500人の大学フットボール部OBが集結するチャリティーイベント「ハドルボウル」に参加された皆さん、大変お疲れさまでした。今回も大いに盛り上がり大成功だったようですね。

 

 さて今回は「渡米インプレッション」の最終回でございます。外食産業の勉強としてハンバーガー店も数件視察してきました。

 そして僕のお店である「ゴリゴリバーガーTAPROOM」(東京・西麻布)のもう一つの主軸商品の「クラフトビール」ですが、アメリカには日本とは比較にならないほど多くのクラフトビール醸造所が存在しています。

 

 商品の性質上、レストランでは味しか分からないので、僕のお店でも取り扱っているメーカーの工場見学にも行きました。

 日本で自分たちの作ったビールが売られていることをご存知ないビール職人さんたちは、「そんなに遠くから来たのか」ととても喜んでくれました。非常に美味しく味わい深いので、機会がありましたら是非ご賞味くださいね。

 

 そして話はスポーツに戻ります。次女が通うサンノゼ州立大学は、日本ではあまり馴染みのないマウンテン・ウエスト・カンファレンスというグループに属していて、NCAAの傘下ではそこそこスポーツも盛んに行われています。

 この日はたまたま女子バスケットボールのホームゲームがあるというので、娘たちと3人で大学内のアリーナに行きました。

 彼女たちは高校でバスケットボールをしていましたので、ルールも理解できるし少しは関心があるようなので、頻繁に観戦に来ているようです。なにしろ学生は無料ですから。

 

 勉強を終えた一般学生もゾロゾロと集まってきます。チアリーダーとソングリーダー、そしてブラスバンドも来て結構な騒ぎになっています。

 小さなアリーナですが、天井から吊ってある巨大得点掲示板(NBAやNHLでよく見るアレ)もちゃんとあり、壁には大型のビジョンがありリプレーなども映されます。

 ただ、お客さんの数は残念ながら日本のフットボールくらいガラガラでした。

 

 しかし、僕はここでもこの大学のウエアを着て「MY大学」を楽しみました。最近は日本でも増えてきていますが、アメリカは大学のチームのニックネームが全て同じなので「ゴー、スパルタンズ!」の掛け声も同じです。

 この日は最初大きくリードされてからの逆転勝利でしたので、とても気分よくアリーナを後にしました。

 

 また別の日ですが、フットボール部の練習見学に行った際、チームのクラブハウス内に招かれ事務所やロッカールーム、トレーニングルームなど見学させてもらいました。

 そこでとても気になったものがあります。学業成績優秀者(GPA3・0以上)50人以上をクラブハウスの廊下の壁に顔写真付きで大きく印刷して掲示してあるのです。

 

 メンバー表では100人以上の選手が登録されていますが、約半数がきちんと良い学業成績を収めているのは大したものです。

 僕と同世代の方はGPA数値に馴染みがない人がほとんどだと思います。

 「テストの成績だけではなく、課題への取り組みや出席率はもちろん、授業中の発言力なんかも大切になるので、真剣にスポーツをしながらでは考えられないほど難しいし、彼らはめっちゃ優秀やで」と娘から教えてもらいました。

 

 それほど強いチームではないので、日本の社会人リーグに来ているくらいのレベルの人ばかりで構成されている感じです。

 1980年代の49ersのヘッドコーチ(HC)だったことで有名な、故ビル・ウォルシュさんの母校とはいえ、NFL選手は数人しか輩出していませんので普通のアメリカの大学生らしく勉強熱心なのでしょう。

 一人だけGPA4・0の選手がいますが、部活をしながら本当にすごいことだと思います。

 

 そして後日、ホームで開催されるリーグ最終戦を見に行きました。スタジアムはキャンパスから少し離れたところにあるので、キャンパスから無料のシャトルバスがピストン輸送しています。

 それほど大人数が押し寄せるわけではないので、テールゲートパーティーをしている大盛り上がりのグループも、先日のNFLのゲームと比べればほんの少しだけでした。

 スパルタンズのブレント・ブレナンHCが手配してくれたチケットで入場し、良い場所を確保して、あとはキックオフを待つだけです。

 

 キックオフの前に何やらゾロゾロと人が100人ほどフィールドに出てきました。そして放送で名前を呼ばれた選手が一人ずつ花束を抱えて入場してきました。

 その選手の顔写真や背番号などは大型ビジョンに映し出されています。

試合前に行われた、チームの4年生が家族に感謝するイベント=提供・中村多聞さん
試合前に行われた、チームの4年生が家族に感謝するイベント=提供・中村多聞さん

 

 「何をやっているんだろう?」としっかり見ていると、彼らは最終学年の4年生で、フィールド内に立っている人たちは彼らの親族なのです。

 名前を呼ばれた選手は家族のいる場所に駆け寄り、まずお母さんに花を贈ってハグをしてキスしています。

 次にお父さんや兄弟らとハグ。そしてファミリーの写真を公式カメラマンが撮影します。

 

 今日は最終戦ですし、大学生として最後の記念すべき試合をホーム開催できる運(相手チームはアウェーですからね)もそうですが、これはとても記念になる家族写真だなと思いました。素晴らしい習慣ですね。

 僕はプロしか経験がないので、アメリカの高校や大学では当たり前の習慣を知らないことがよくあります。

 これは日本でも絶対にやるべきイベントだなと思いました。場内放送には工夫が必要ですが、試合前に二つのチームが半分ずつで勝手にやれば良いだけなのですから。

 

 そしてもう一つは大型ビジョンです。現在では高性能なLEDを使った屋外でも使用できるものをレンタルできる会社が多くあります。

 何年先まで何度も何度も使用することを前提に契約すれば、値引きも期待できるでしょう。

 得点掲示板すらマトモな物がない会場でも、ビジョンで選手の表情が見えるほど近づいた映像とリプレーなどを用意すれば、見にきているお客様の満足度は飛躍的に向上するでしょう。

 競技中の選手の顔が分からないスポーツは、その素顔を露出させることに必死ですからね。

 

 NFLヨーロッパで、当時コミッショナーをしていたオリバー・ラックさん(もうすぐ開幕するXFLの最高経営責任者で、NFLコルツで活躍し引退したQBアンドルー・ラックさんの父親)が宴会の時に酔っ払って熱弁していました。

 「ヨーロッパで観客に盛り上がってもらうには(人気を得るには)オフェンスに有利なルールで点が入りやすくして、大きな音で音楽をかけ、大型ビジョンでリプレーを見せないとダメだ。だから移動式大型ビジョンをどこの国でも全ての試合会場に設置しているんだ。 金かかるけどね」と。

 それを聞いた後に観客席などに置いてあるビジョンをよく見ると、確かに移動式の物で、観客席の一部にワイヤーでくくりつけてありました。

 

 全くその通りだと思います。20世紀末の当時、今では安価な薄型液晶テレビではなく重く大きなブラウン管を使っていたような時代ですから、あのような大型なビジョンの移動と設置はとても大変だったでしょう。

 しかし、現代ならそれほど大変ではありません。横浜スタジアムや東京ドームでの試合では、他の会場と同じ料金とは思えないほど見やすくて楽しいですから、他の会場でもそうなればどれほど素晴らしいことかと思います。

 

 話を戻しまして、4年生が選手として最後の親孝行をしているすぐ向こうでは、選手入場を待つ下級生と相手チームがチラッと見えました。

 さあいよいよ入場です。入場門の両サイドから花火が打ち上げられるド派手な入場イベントです。

 

 試合は無事に勝利して、自チームが勝ったと次女もご機嫌。自分の子どもが通う学校のフットボールチームを現場で応援するのは人生初体験です。

 子どもがもし男の子で、フットボール選手だったらどんな気分だっただろうなーと考えましたが、ド下手くそだったら腹が立つので女の子で良かったと思います。

 

 他にもいろいろな体験をしたのですが、今回の渡米インプレッションはこれでおしまいです。

 現地でお世話になった皆さん、ありがとうございました。そして最後までお付き合いくださった読者の皆さんに感謝いたします。

49ersの本拠地リーバイス・スタジアム内にあるオフィシャルショップ=提供・中村多聞さん
49ersの本拠地リーバイス・スタジアム内にあるオフィシャルショップ=提供・中村多聞さん

 

 いよいよスーパーボウルですね。日本時間の2月3日がとても楽しみです。「中村家の別荘」から非常に近い場所の49ersを軽く応援しています。

 そうそう、49ersの相手は下馬評では有利なチーフスですね。ゴー、ナイナーズ!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

最新記事