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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

スーパーボウルでMVP2度 引退するジャイアンツQBイーライ・マニング

2020.1.28 11:34 生沢 浩 いけざわ・ひろし
記者会見で引退を発表するジャイアンツのQBイーライ・マニング(AP=共同)
記者会見で引退を発表するジャイアンツのQBイーライ・マニング(AP=共同)

 

 NFLジャイアンツのQBイーライ・マニングは、つかみどころのない選手だった。

 感情を表に出さない飄々とした姿がそう思わせるのか、見た目の印象とフィールド上での実績がかけ離れているのだ。

 

 華奢な体で故障が心配されたが、16年間のNFLキャリアで一度もけがによる欠場がない。

 23個のTDパスに対してインターセプトが20と、安定感のないレギュラーシーズンを過ごしたかと思うと、その年のスーパーボウルで全勝だったペイトリオッツに土をつけたりもする。

 兄ペイトンの実力にはかなわないと評されながら、スーパーボウルでのMVP受賞は2度で兄を上回る。なんとも不思議な選手なのだ。

 

 そのマニングが引退を発表した。今季は新人のダニエル・ジョーンズに正QBのポジションを明け渡し、3月にはジャイアンツとの契約が満期を迎えることになっていた。

 移籍して他チームで先発ポジションを目指す選択肢もあったが、マニング自身はデビュー以来在籍し、2回のリーグ優勝をもたらしたジャイアンツでユニフォームを脱ぐことにこだわったようだ。

 

 マニングは1月24日にニューヨークで行われた引退記者会見で「(チームオーナーの)ウェリントン・マーラ氏がいつも言っている。『一度でもジャイアンツの一員になったらその人は永遠にジャイアンツの一員だ』と。でも、僕にとってはジャイアンツしかなかった」と、NFLの選手生命の全てを過ごしたジャイアンツへの愛着を口にした。

 

 マニングがNFL入りしたのは2004年だ。ベン・ロスリスバーガー(スティーラーズ)やフィリップ・リバース(チャージャーズ)と同期だ。

 彼を1巡1位指名したのはジャイアンツではなく、チャージャーズだった。しかし、マニングがチャージャーズ入りを拒んだために、ジャイアンツにトレードされたのである。その交換要員がリバースだった。

 

 先発デビューしたのはその年の10戦目で、カート・ワーナーに代わってスターターの座を勝ち取った。

 それから2017年のシーズン終盤に不調を理由にベンチに下げられるまで、プレーオフを含み222試合連続先発出場を果たした。

 翌年には先発の座を取り戻すが、チームをプレーオフには導けず、ジャイアンツはドラフト1巡でジョーンズ指名をして世代交代を推し進めたのだった。

 

 マニングのキャリアを語る上で欠かせないのが、スーパーボウルでの2度に及ぶペイトリオッツ撃破だ。そして、なんといっても2007年シーズンは永遠に語り継がれるだろう。

 先にも少し触れたが、このシーズンのペイトリオッツは16試合制では初のレギュラーシーズンを全勝を達成し、順当にスーパーボウルに進出した。

 ここで勝てば1972年のドルフィンズ以来の「パーフェクトシーズン」が完結したのだが、それを阻止したのがマニングのジャイアンツだった。

 

 この試合の終盤でマニングはペイトリオッツのディフェンダーにつかまれながらも必死にそれを振りほどき、起死回生のパスを投げる。

 そのボールをWRデビット・タイリーが両手とヘルメットで挟む形で辛うじてキャッチするという奇跡的なプレーが生まれた。このプレーがドライブを継続させ、逆転のTDパスにつながった。

2008年のスーパーボウルでペイトリオッツを破って優勝しトロフィーを掲げるジャイアンツのQBイーライ・マニング(AP=共同)
2008年のスーパーボウルでペイトリオッツを破って優勝しトロフィーを掲げるジャイアンツのQBイーライ・マニング(AP=共同)

 

 このリマッチは4年後のスーパーボウルで実現した。リベンジを期したペイトリオッツだったが、ここではマニングからWRマリオ・マニンガムへの38ヤードパスが炸裂して、再びジャイアンツの軍門に下った。

 

 マニングの引退に祝福とねぎらいの言葉をSNSに投稿したペイトリオッツのQBトム・ブレイディは「本音を言うと、君にはスーパーボウルで勝ってほしくなかった」などとユーモアを交えて述べたが、これはまさに「本音」だろう。

 

 スーパーボウルに4回出場し2度優勝した兄ペイトンは、来年で引退から5年を経て殿堂入りの対象となる権利を得る。

 1年目で殿堂入りが確実だ。では、弟のイーライはどうだろうかという議論が巻き起こっている。

 2度のスーパーボウルMVPは素晴らしい実績だが、資格取得1年目とはいかないかもしれない。

 ただ、マニングが「スーパーボウルでは、なぜかブレイディとペイトリオッツに強かったQB」として、多くのファンの記憶に刻まれることは間違いないだろう。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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