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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

悲願の甲子園ボウル初優勝ならず 「切り札」を生かし切れなかった早稲田

2019.12.18 14:16 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
抜群の身体能力で相手のDBを抜き去る早稲田のWRブレナン選手=撮影:武部真
抜群の身体能力で相手のDBを抜き去る早稲田のWRブレナン選手=撮影:武部真

 

 今シーズンの早稲田はいいチームだった。

 ここ5年で4度の甲子園ボウル出場。加えて学生ナンバーワンのパサーQB柴崎哲平選手と、抜群の身体能力とキャッチングセンスを備えたWRブレナン翼選手が最終学年を迎え、いわゆる「ホットライン」が完成の域に達していたからだ。

 

 12月15日、阪神甲子園球場で行われた第74回「甲子園ボウル」。早稲田はまたしても、試合巧者・関学の壁にはね返された。

 28―38。前年の20―37から点差こそ縮まったが、ここ一番での試合運びに巧拙が出て学生王者に屈した。

 

 6回のパスレシーブで、3TDを含む129ヤードを獲得。

 ブレナン選手のスピードとフィジカルの強さは、一台だけ搭載しているエンジンの馬力が違う車がレースに参加しているようだった。

 

 関学DB陣のコミュニケーションミスを突いた、55ヤードのTDパスレシーブ。エンドゾーン内で見せた驚異的な集中力など、関学守備陣の徹底したマークを力でねじ伏せるプレースタイルは圧巻だった。

 

 早稲田が勝つとしたら、このパターンだと思っていた。相手が警戒していても、自分たちのストロングポイントをこれでもかというほど前面に出す。

 しかし、早稲田はそうしなかった。柴崎選手をレシーバーの位置にセットさせ、RBをQBに起用する「ワイルドキャット・フォーメーション」を展開するなど、目先を変える作戦に出た。

学生ナンバーワンのパサー、早稲田のQB柴崎選手=撮影:武部真
学生ナンバーワンのパサー、早稲田のQB柴崎選手=撮影:武部真

 

 残念ながら、準備してきた戦術の効果は薄かったとみる。戦術、戦略の部分では関学に一日の長がある。プレーを散らしても、思うような成果は生まれなかった。

 

 現場で試合を観戦した、元京大監督の水野彌一さんは「コーチの方たちには失礼だが」と前置きした上で、こう分析した。

 

 「早稲田はもっと、ブレナン君で勝負するべきでした。関学のCBは彼に全く対応できていませんでした。一番有効な、ブレナン君を(外から2人目の)ナンバー2レシーバーで起用するプレーはよく出ていたし、私なら彼と〝心中〟する戦い方をしたでしょう」

 

 「ブレナン一辺倒」の作戦を決断するには、勇気が必要だ。だが、相手の得意分野で対抗していたら、打開策はなかなか見いだせない。

 

 甲子園ボウルという大舞台では「切り札」の超人的なパフォーマンスが、チームを勝利に導いてきたケースが少なくない。

 キックオフのリターナーにも起用されていたブレナン選手は、試合終盤にハードヒットを受けた後もエネルギッシュにプレーしていた。

 

 第2、3クオーターに逆転した早稲田は見事だった。悲願である初優勝への熱い思いが伝わってきた。

 ただ、1クオーター15分の甲子園ボウルを知り尽くした関学は慌てなかった。

 第4クオーターには、よく考えたプレーでTFPの2点コンバージョンを成功させるなど、戦術面で格の違いを見せつけた。

 

 水野さんは言う。

 「私が監督時代の京大は、リーグ戦で関学を破って甲子園ボウルで6回優勝しましたが、一度として戦術面で関学を上回ったと思ったことはありません。目指したのは、体力勝ちです」

 

 大木のようにどっしりとした組織力を背景に、高度な戦術、戦略を用意してくる関学を凌駕するのは至難の業である。

 過去に「ファイターズ」に土をつけたチームは、その大木を根こそぎ持っていくような「力技」で勝負を挑んできた歴史がある。

6回のパスレシーブで3TDを挙げた早稲田のWRブレナン選手=撮影:武部真
6回のパスレシーブで3TDを挙げた早稲田のWRブレナン選手=撮影:武部真

 

 早稲田が覚悟を決めて、もう少しブレナン選手を中心に据えたゲームプランで臨んでいたら、果たしてどんな結果になっていただろう。

 「ビッグベアーズ」の甲子園ボウルでの成績は、出場校ワーストの6戦6敗となった。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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