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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

「すべては4年生のために」 試練乗り越え団結、復活した不死鳥たち

2019.12.3 13:32 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
サイドラインで次のプレーについて話し合う日大のQB林大希(1)と橋詰功監督=撮影:松嵜未来
サイドラインで次のプレーについて話し合う日大のQB林大希(1)と橋詰功監督=撮影:松嵜未来

 

 27―27で迎えた、第4クオーター5分27秒。キックオフのボールをキャッチした日大のWR林裕嗣(3年)は、味方のブロッカーを巧みに使い一気に加速しエンドゾーンまで駆け抜けた。

 78ヤードのキックオフリターンTD。文字通りの「ビッグプレー」は、どこかぎこちなかったチームに勢いをもたらした。

 

 12月1日。横浜スタジアムで行われた関東大学リーグ1部BIG8最終節の日大―桜美林大は、勝者が入れ替え戦なしで1部上位のTOP8へ昇格する大事な一戦だった。

 試合は日大が得点すれば桜美林大がすぐに追いつく白熱した展開。緊張感に満ちた攻防は、一つのプレーで流れが大きく日大に傾いた。

 

 林裕はQB林大希、RB川上理宇らとともに、当時1年生だった2年前の「甲子園ボウル」で活躍。ライバル関学大を破り「フェニックス」を27年ぶりの大学日本一に導く原動力になった。

 

 今季は故障が続き、先発出場はこの日の桜美林大戦が初めてだった。

 「けがが治ってはまたけがをした。今日は、自分がやらなくてはと思って試合に臨んだ。4年生のためにも、俺たちがやらなきゃいけないと大希とも話していた」

桜美林大戦で78ヤードのキックオフリターンTDを記録した日大WR林裕嗣=撮影:岡野将大
桜美林大戦で78ヤードのキックオフリターンTDを記録した日大WR林裕嗣=撮影:岡野将大

 

 2分後、勝利を決定づける59ヤードの独走TDランを決めた川上は言う。

 「4年生を勝たせたかった。本当なら上(TOP8)でプレーできたはずの4年生は、僕らのために時間を使ってくれた。それを無駄にするわけにはいかなかった」

 

 3年生ながら、チームリーダーとしての自覚を持ち、シーズンを通して仲間を牽引してきた林大は、いつものように強気のプレーに終始した。

 「川上のTDは、相手のブリッツが多かったので、速いプレーを監督に提案した。あいつなら誰も追いつけないと思っていた」という。

 

 「危険な反則タックル問題」の影響で、昨年は公式戦への出場資格停止、体制の一新とチームは揺れ動いた。

 林大は「途中で辞めようとは思わなかったが、どうなるのかという不安はあった。この1年は、しんどかった。どんなチームができるのか分からず、みんなの方向が定まらない時期があった」と打ち明けた。

 

 昨年9月から指導している橋詰功監督は、目標だった全勝でのTOP8復帰に胸をなで下ろす。

 「4年生がよく頑張ってくれて、いいチームになった。この経験を生かして、立派な社会人になってほしい」。モチベーションの維持に苦労しながら、後輩のために全力を尽くした最上級生をねぎらった。

 

 日大を立て直したいという強い希望を持って、Xリーグの強豪富士通からフェニックスの指導陣に加わった、慶大OBの季武憲毅DBコーチは、目を真っ赤にしてこう言った。

 「富士通で日本一になった時も泣かなかったのに、今日は泣けてきた。やっとフェニックスの一員になれたという思い」。曲折を経てチームは団結し一つになった。

東海大戦で選手に指示を出す日大の季武憲毅コーチ(中央)=11月2日・駒沢第二球技場
東海大戦で選手に指示を出す日大の季武憲毅コーチ(中央)=11月2日・駒沢第二球技場

 「10」と「25」。林大と林裕はともに明言しなかったが、BIG8ではあえて封印していた伝統のエースナンバーが、来季は復活するかもしれない。

 

 関東学生連盟の関係者によれば、TOP8の8位扱いでBIG8に自動降格する慶大と入れ替わって昇格する日大は、来季はTOP8の8位で、入れ替え戦で対戦するTOP8の7位日体大とBIG8の2位桜美林大の勝った方が7位になるという。

 そうなれば、来秋のリーグ戦は関東を制した早大と日大が初戦で顔を合わせることになる。

関東1部TOP8への復帰を決め、記念写真に収まる日大の4年生=撮影:松嵜未来
関東1部TOP8への復帰を決め、記念写真に収まる日大の4年生=撮影:松嵜未来

 

 「もし初戦で早稲田と対戦することになったら、万全の準備をして臨む。この場で言います。絶対に勝ちます。覚えていてください」

 2年前、年間最優秀選手に贈られる「チャック・ミルズ杯」を、史上初めて1年生で受賞した林大は宣言した。「来年の今頃は、俺たちは戻ってきたぞとアピールしたい。それは僕の意地でもある」―。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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