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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

地に落ちた伝統のライバル対決 大荒れのブラウンズ対スティーラーズ

2019.11.20 11:11 生沢 浩 いけざわ・ひろし
スティーラーズのQBルドルフ(2)をヘルメットで殴りつけるブラウンズのDEギャレット(95)(AP=共同)
スティーラーズのQBルドルフ(2)をヘルメットで殴りつけるブラウンズのDEギャレット(95)(AP=共同)

 

 目を疑う光景だった。相手のフェイスマスクをつかんで振り回す。それによって脱げたヘルメットを相手の頭に向けて振り下ろす。倒れた選手の頭を蹴る。無防備の選手を背後から突き飛ばす。

 

 NFLのレギュラーシーズン第11週のブラウンズ対スティーラーズ(オハイオ州クリーブランド)で起きた乱闘のことだ。まるでプロレス興行のようだった。

 いや、今どきのプロレスでもこのようなチープな反則はそうはないかもしれない。

 AFCで最も古いライバル関係とされる両チームの今シーズン1度目の対戦は、暴力に汚された最低の試合となった。

 

 〝事件〟が起きたのは第4Q終盤だった。ブラウンズがスティーラーズの度重なるミスに乗じて得点を重ね、ほぼ勝利を確実なものにしようとしていた。

 こうした試合の流れを象徴するかのようにブラウンズのDEマイルズ・ギャレットがスティーラーズのQBメイソン・ルドルフをサックした。

 プレー終了後もなかなか体を離さないギャレットに対し、ルドルフが挑発的な言葉を投げかけた。それに激高したギャレットはルドルフのフェイスマスクをつかんで思い切り振り回した。

 

 スティーラーズのOLデービッド・デキャストロとマット・ファイラーが止めに入るが、ギャレットは奪い取ったヘルメットでルドルフの頭部を殴りつけた。

 その後、スティーラーズのCモーキース・パウンシーが倒れたギャレットの頭を蹴りつける。そのどさくさに紛れるかのようにブラウンズのDTラリー・オグンジョビがルドルフの背後から忍び寄り、突き飛ばした。

 

 飛び交うファウルマーカー。フィールドでの判定はブラウンズ側のギャレットとオグンジョビにパーソナルファウル、スティーラーズはパウンシーがパーソナルファウルをとられてペナルティーは相殺。3人は退場処分となった。

 

 ブラウンズにとっては3連敗のあとの2連勝を飾るだけでなく、わずかに残ったプレーオフ進出に向けて踏みとどまる意味のある試合だった。

 その勝利を宿敵スティーラーズから得ることで、シーズン後半に弾みをつけるきっかけにもなったはずだった。

 そのすべてが台無しである。伝統の一戦は地に落ちた。

 

 NFLの決断は早かった。翌日には当該選手の処分が発表された。ギャレットは無期限の出場停止、パウンシーは3試合、オグンジョビは1試合の出場停止処分となった。

 出場停止処分の間はサラリーは支払われない。ルドルフに対しては罰金が科せられる。このNFLの決定に対しては異議申し立てが許されており、処分軽減を求めてすべての選手が異議申し立てをする見込みだ。

 彼らの異議申し立てに対して、NFLがどのような対応をするかが注目されるが、処分は軽減されるべきではない。とくにギャレットとパウンシーに対しては厳罰で臨むべきである。

 

 ギャレットはフェイスマスクを持って振り回すという、最も危険な行為に及んだ。さらに、本来は頭を守るための防具であるヘルメットを武器として使ってルドルフに暴行した。

 ルドルフは数週間前にレーベンズ戦でヘルメットによるヒットを受けて脳しんとうで失神し、病院へ運ばれた経緯がある。

大荒れとなったブラウンズとスティーラーズの試合(AP=共同)
大荒れとなったブラウンズとスティーラーズの試合(AP=共同)

 

 ギャレットがそれを承知でした行為だとは思いたくないが、ヘルメットで頭を殴ることでルドルフが脳しんとうを再発させる危険性もあった。

 脳しんとうは再発する期間が短いほど危険度が増すという。ルドルフの選手生命にかかわる重大事故になる可能性もあったのだ。

 

 パウンシーの行為も弁解の余地はない。自チームのQBが暴行を受けて頭に血が上ったとはいえ、頭部を蹴るのは悪意のある暴行以外の何ものでもない。フィールド外での行為なら、間違いなく刑事罰に問われる事案である。

 

 NFLにおけるディビジョン内のライバル関係は、試合をより面白くするエッセンスとなる。

 しかし、そのライバル意識はプレーで発揮されるべきであって暴力的行為で表現されてはならない。

 コンタクトスポーツであり、故障と隣り合わせにあるからこそ、今回のような「蛮行」は絶対に許されない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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