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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

パンサーズが珍しい「フェアキャッチキック」に挑戦 ロンドンでのバッカニアーズ戦

2019.10.16 13:00 生沢 浩 いけざわ・ひろし
バッカニアーズ戦の第2QにランでTDを挙げるパンサーズのRBマキャフリー(22)(AP=共同)
バッカニアーズ戦の第2QにランでTDを挙げるパンサーズのRBマキャフリー(22)(AP=共同)

 

 今シーズン2試合目となるNFLのロンドン開催ゲームは、第6週にトットナム・ホットスパースタジアムで行われ、パンサーズ(4勝2敗)が同じNFC南地区のライバルであるバッカニアーズ(2勝4敗)に37―26で勝った。

 

 この試合では、おそらくロンドンのファンのほとんどが見たこともなかったであろう珍しいプレーが起きた。「フェアキャッチキック」である。

 パンサーズが17―7とリードして迎えた第2Q終盤。バッカニアーズは前半残り35秒で自陣36ヤードから第1ダウン10ヤードの場面を迎える。

 

 ところが、パスを3回失敗する間に反則を5回も犯し、第4ダウン35ヤードとなってパントに追い込まれた。

 Pブラドリー・ピニオンはエンドゾーンからボールを蹴り、パンサーズのブランドン・ジルストラが50ヤードラインでフェアキャッチした。この時点で前半の残り時間は1秒だった。

 

 多くのチームはビクトリーフォーメーションからQBがニーダウンをしてハーフタイムを迎えるだろう。しかし、パンサーズのロン・リベラHCが指示したのは「フリーキック」だった。

 

 NFLにはパントをフェアキャッチした後、レシービングチームが次のプレーで通常のスナップバックからオフェンスを始めるか、フリーキックをするかを選択することができるというルールがある。

 これは全米大学体育協会(NCAA)では採用されていないため、米大学フットボールやNCAAルールに準拠する日本国内のフットボールでは起こりえない。

 

 フェアキャッチを選んだ場合、キッカーはパントの要領で蹴るか、キックティーを使わずにホルダーが押さえたボールを蹴るか、ドロップゴールをする。

 そのキックがゴールポストの間を通ればFG成功となり、オフェンスに3点が入る。

 リベラはこのプレーをコールしたのだった。NFLでフェアキャッチキックが行われるのは2013年以来だという。

ボールを巡って競り合うバッカニアーズのWRエバンス(13)とパンサーズのCBブラッドベリー(24)(AP=共同)
ボールを巡って競り合うバッカニアーズのWRエバンス(13)とパンサーズのCBブラッドベリー(24)(AP=共同)

 

 フェアキャッチキックには通常のFGとは違う利点がある。それはディフェンスのプレッシャーを受けないということだ。

 フリーキックなので、ディフェンスはスクリメージラインから10ヤード離れてラインアップしなければいけないし、キックブロックも許されない。

 さらにスナップバックしなくていいから、通常のFGよりロングスナップの分(7、8ヤード)だけ距離が短くなる。パンサーズのここでのFGアテンプトは60ヤードだった。

 

 結果的にKジョーイ・スライのキックは右に外れてしまうのだが、バッカニアーズが自らフィールドポジションを悪くしてからのパントで、残り時間が1秒という場面では最善の選択だったと言えよう。

ロンドンで開催されたパンサーズ―バッカニアーズ(AP=共同)
ロンドンで開催されたパンサーズ―バッカニアーズ(AP=共同)

 

 フェアキャッチキックの成功例は43年前までさかのぼるそうだが、注目度の高いロンドンゲームで使われたことで使用するチームが出てくるかもしれない。

 こうしたルールに通じていて、ここぞという場面でコールできることもHCに求められる資質だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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