メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

ヘルメット問題で練習不参加 レイダーズWRアントニオ・ブラウン

2019.8.21 11:16 生沢 浩 いけざわ・ひろし
レイダーズのトレーニングキャンプで笑顔を見せるWRアントニオ・ブラウン(AP=共同)
レイダーズのトレーニングキャンプで笑顔を見せるWRアントニオ・ブラウン(AP=共同)

 

 NFLを代表するWRアントニオ・ブラウンのレイダーズへの移籍は、このオフの大きな話題の一つだった。

 スティーラーズのエースレシーバーとして活躍してきたブラウンは、盟友であったはずのQBベン・ロスリスバーガー批判を繰り返し、チームを追い出される形でレイダーズにトレードされた。

 既に31歳とはいえ、過去6年連続で1200ヤード以上のパス獲得距離を記録しているブラウンの加入は、レイダーズの戦力を大きく改善するはずだった。

 

 ところが、ブラウンが本格的にレイダーズの練習に参加したのはシーズン開幕まであと2週間余りとなった20日になってからだ。

 それまではただの一度もレイダーズの練習にフル参加していない。貴重な戦力となるはずのブラウンが、むしろチームの和を乱す存在になりかねない状態だ。

 

 ブラウンがここまで練習に参加していなかった理由は二つある。一つは凍結療法のミスにより足に軽い凍傷を負ってしまったことだ。

 そのためブラウンは、フットボール以外に起因する故障者リスト入りをした。

 

 もう一つの理由はヘルメット使用についてNFLと「係争」中だったためだ。

 NFLは今季から安全面などの基準を満たさないヘルメットの使用を全面的に禁止した。ブラウンが長年使用してきたヘルメットも禁止対象となった。

 ただし、それはブラウンのヘルメットが危険だと判断されたからではない。彼のヘルメットは商品化から10年以上を経ており、現在では生産されていない。

 

 NFLは10年以上前に製造されたヘルメットは認可しないという立場をとっており、この基準にブラウンの愛用ヘルメットが抵触したのだ。

 ブラウンはNFLの裁定に対して異議申し立てをし「(愛用のヘルメットの)使用が認めなければ引退する」とまで言い切った。

 

 結論から言うとNFLは特例を認めず、ブラウンは「敗訴」した。ただし、引退発言は撤回して今季もプレーすることを宣言している。

 この間、レイダーズは既にキャンプインしてプレシーズンゲームもこなしていたが、ブラウンは凍傷とヘルメット問題を理由に練習に参加しなかった。

 

 これにはさすがに球団側からも異議が出た。表立って発言したのはマイク・メイヨックGMだ。

 「ご覧の通り、AB(ブラウン)は今日も練習に参加していない。ヘルメット問題に不満を持っているのは明らかだ。チームとしては彼を支援してきたが、さすがにここまで来ると我慢の限界だ。練習するのかしないのか、態度をはっきりするべきだろう」と批判した。

 それまではQBデレク・カーらが「アントニオほどのレシーバーなら出遅れることはない」と擁護する発言をしていたが、レイダーズとしてはメイヨックGMの言葉が本音だろう。

 

 ブラウンが実績のある一流レシーバーだとしても、レイダーズのパスオフェンスはスティーラーズのそれとは違う。

 今までとは異なるオフェンスシステムでプレーする以上、それに適応する期間が必要だ。

 ことにジョン・グルーデンHCの構築するオフェンスは、短いパスを多用する「ウエストコーストスタイル」をベースにしながら、独自のフィロソフィーを反映した複雑なものだとされる。

 それをマスターしつつ、カーや他のレシーバーたちとのコミュニケーションを深めていくのがトレーニングキャンプの主目的だったはずだ。

 

 グルーデンHCは、プレシーズン3戦目までにはブラウンも練習に参加する機会が増えると述べているが、おそらく実戦デビューはレギュラーシーズンに入ってからということになるだろう。

 長期の戦列離脱によるコンディショニング不足も懸念される。開幕直後に負傷して欠場することになったら、チームとしては戦術面で大きな方向転換を迫られる。

 

 スティーラーズでの活躍が目覚ましかっただけに、現在のブラウンの眉をひそめたくなる行動は残念だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事