メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

パスに磨きかける若きエース レーベンズQBラマー・ジャクソン

2019.8.14 11:17 生沢 浩 いけざわ・ひろし
プレシーズンゲームのジャガーズ戦でパスを試みるレーベンズのQBジャクソン(AP=共同)
プレシーズンゲームのジャガーズ戦でパスを試みるレーベンズのQBジャクソン(AP=共同)

 

 NFLはプレシーズンゲームの第1週を迎えた。「フットボールが帰ってきた」とばかりに、リーグ創立100年目を迎えるNFLは喧伝するが、残念ながらこの時期は先発陣はまだほとんど試合に出ることはない。

 試合終盤になれば、コアなファンしか知らないような選手ばかりになってしまう。もっとも、こういう選手こそが生き残りをかけて必死でプレーしているものなのだが。

 トム・ブレイディ(ペイトリオッツ)、ドルー・ブリーズ(セインツ)、ベン・ロスリスバーガー(スティーラーズ)といった先発の座が不動なベテランQBは全く試合に出ないことも少なくない。

 

 しかし、スターターには決まっているものの2、3年目の若いQBはプレシーズン初戦といえども1、2回のオフェンスシリーズには出場する。

 レーベンズのラマー・ジャクソン、ジェッツのサム・ダーノルド、チーフスのパトリック・マホームズらは短い出場時間でありながら、首脳陣を満足させるパフォーマンスを見せてベンチに退いた。

 

 中でも目を引いたのはジャクソンだ。ルーキーだった昨年、けがで戦列を離れたベテランのジョー・フラッコに代わって先発起用されると、持ち味の脚力を生かしたプレーでチームを上昇気流に乗せた。

 ジョン・ハーボーHCも、それまでのフラッコ仕様の「ポケットパススタイル」のオフェンスをやめ、攻撃コーディネーターに命じてジャクソン用にオプションを多用するゲームプランを急遽用意させたほどだ。

 その結果、ジャクソンはフラッコ復帰後もポジションを譲ることなく、今季は開幕先発を約束されている。

 ちょうどフリーエージェントの資格を得たフラッコはブロンコスに移籍して新スターターとなる予定だ。

 

 ジャクソンは先発した7試合でQBとしては過去最多となる147回のランを記録した。

 1試合平均21回という驚異的な数字だ。昨今のNFLでは、ラン攻撃の主役であるRBですらここまでの回数のボールキャリーをすることはそれほどない。

 一般的に、NFLではポケットパサーが歓迎され、カレッジのように走り回ることを得意とするQBは敬遠されがちだ。

 パス主体のほうが効率よく得点できるし、QBが走ればそれだけ故障するリスクも増えるからだ。

 

 ところが、あえてレーベンズはジャクソンに走らせることでオフェンスを強化した。そして、それは今季も変わらない。

 ハーボーHCは春季練習の際に「NFLのオフェンスの歴史に革命的な変化を起こす」と宣言した。

 すなわち、ジャクソンの脚力を中心にしたプレースタイルをオフェンスの主軸に置くということだ。

 

 その一方で、ジャクソンは自身のパスプレーが向上しなくては昨年以上の成績が残せないことを十分に承知している。

 昨年は200ヤード以上をパスで稼いだ試合は1回しかなかった。NFLのQBの水準としてはかなり低い。

プレシーズンゲームのジャガーズ戦でTDパスを決めたレーベンズのQBジャクソン(8)(AP=共同)
プレシーズンゲームのジャガーズ戦でTDパスを決めたレーベンズのQBジャクソン(8)(AP=共同)

 

 パス改善を目指すジャクソンの意思は、ジャガーズとのプレシーズンゲーム第1週にも表れた。

 第1クオーターのオフェンス3シリーズだけの出場だったが、6回のパス試投で4回の成功、59ヤードを獲得してTDパスを1回成功させている。

 出場した3シリーズのうちFGを含む二つで得点ドライブを完結させた。プレシーズン初戦でこの内容は合格点だろう。

 

 しかも、出場した15プレーで自ら走ったのは皆無だ。ランプレーはRBガス・エドワーズに任せ、自身はパッシングに専念していた。

 もちろん、もっと長い時間プレーしていればジャクソン自身が走る機会もあっただろうが、スクランブルも含めてランがなかったのはパス向上を目指すジャクソンの姿勢を反映したものだった。

 

 これまでいくつものチームやQBがカレッジと同様のプレースタイルをNFLに持ち込み、定着させようと試みては失敗してきた。

 ハーボーHCの言葉はこれに挑戦するものと感じられるが、ジャクソンはその逆でパサーとしての力を磨こうとしている。

 どの方向にレーベンズが向かうのか。今シーズンのジャクソンに注目だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事