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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

真価問われる先発2年目 ジンクスに挑むチーフスQBマホームズ

2019.7.30 12:18 生沢 浩 いけざわ・ひろし
トレーニングキャンプで攻撃陣を引っ張るチーフスのQBマホームズ(15)(AP=共同)
トレーニングキャンプで攻撃陣を引っ張るチーフスのQBマホームズ(15)(AP=共同)

 

 どんなスポーツでも、新たなスター選手の登場はその競技を盛り上げる。NFLでは昨年のパトリック・マホームズがまさにその例だろう。

 一昨年のドラフト1巡、全体10番目指名でチーフスに入団したマホームズは、昨年の開幕先発QBに指名された。

 過去3年連続でチームをプレーオフに導いていたベテランのアレックス・スミス(レッドスキンズへ移籍)を押しのけてスターターの座を獲得した。

 

 ルーキーシーズンに唯一長時間出場したレギュラーシーズン最終戦のパフォーマンスが振るわなかったことから、いきなりの先発起用を不安視する声もあったが、1カ月もするとそれも沈静化した。

 いや、むしろベテラン顔負けのクオーターバッキングとリーダーシップを発揮するマホームズに、NFL全体が衝撃を受けたと言っていい。

 シーズン後半にはMVPの候補に名前が挙がるようになり、実際にドルー・ブリーズやトム・ブレイディら先発QBを差し置いてリーグ最高の賞を勝ち取ってしまう。

 

 終わってみれば50TDパス成功で5097ヤードパッシングを記録した。

 同一シーズンで50TDパス以上、5000ヤード以上のパス獲得距離をマークしたのは、あのペイトン・マニング(2013年)以来となる史上2人目の快挙まで成し遂げた。

 

 マホームズの魅力は思い切りのいいプレースタイルに尽きる。どんなにタイトウインドウ(パスを投げ込むスペースが小さい)でも失敗を恐れずに剛速球でボールを投げ込む。

 相手の激しいパスラッシュでプロテクションが崩れれば、躊躇なくポケットから飛び出してプレーを継続し、パスを通すためならば利き手ではない左手で投げたりもする。それがしばしばビッグプレーに結びつくのだからスター性充分である。

 

 この破天荒さは優等生タイプのスミスとは違うスリリングなもので、チーフスファンでなくても「見ていて楽しいQB」との評価を彼に与える。

 それだけでなく、ディフェンスの意表を突く形になって有効でもあった。

 

 しかし、マホームズが多くの対戦チームにとって「未知の存在」であったからこその成果であった面も否定できない。

 1シーズンのプレーデータがそろった今季は、そう簡単には活躍できないかもしれない。

トレーニングキャンプでファンにサインを求められるチーフスのQBマホームズ(AP=共同)
トレーニングキャンプでファンにサインを求められるチーフスのQBマホームズ(AP=共同)

 

 対戦するQBを徹底的に研究して丸裸にすることが得意なペイトリオッツとは、プレーオフを含めて2度対戦したがいずれも敗れている。

 2度目の対戦となったAFC決勝では、ホームのアローヘッドスタジアムでの試合であったにもかかわらず、第3クオーター終了時までほとんど完ぺきに抑えられた。

 最終クオーターで猛追を見せたが、延長ではスタミナ切れを起こして敗退した。

 今季チーフスと対戦するチームは、このペイトリオッツのマホームズ対策を参考にしてくるはずだ。

 

 新人で活躍した選手が2年目で苦戦する、いわゆる「2年目のジンクス」は多くのスポーツで起こりうることで、英語でも「SophomoreJinx(2年生のジンクス)」という言葉があるくらいだ。

 ジンクスの理由はいろいろあるが、対戦相手が講じてくる対抗策を克服できないこともその一つだ。

 活躍し、注目されるほど包囲網は厳しくなる。前年以上の結果を残すにはその包囲網を凌駕する必要があり、経験の浅い選手には難しい。

 

 マホームズはNFL歴こそ3年目だが、先発経験では今年が2シーズン目にあたる。

 ジンクスにはまる選手で終わるのか、それを克服してさらに成長する逸材なのか。今季はその真価が問われる。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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