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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

人物やチームの歴史刻む記念像 米国のスポーツ文化伝えるNFL

2019.7.16 12:06 生沢 浩 いけざわ・ひろし
第53回スーパーボウルが開催されたジョージア州アトランタのメルセデスベンツドームには巨大な「ファルコン像」がある=提供・生沢浩さん
第53回スーパーボウルが開催されたジョージア州アトランタのメルセデスベンツドームには巨大な「ファルコン像」がある=提供・生沢浩さん

 

 NFLのスタジアムには、そこをホームとするチームを象徴する像が併設されていることがある。

 チームのマスコットをあしらったものや過去の名選手、名将のものが多いが、モチーフになっているものや人物からそのチームの伝統や歴史に刻まれるべき瞬間を知ることができて興味深い。

 

 今年2月に第53回スーパーボウルが行われたジョージア州アトランタのメルセデスベンツドームには、巨大な「ファルコン像」がそびえ立つ。

 言うまでもなく、ここを本拠とするアトランタ・ファルコンズのシンボルだ。

 ハンガリーの芸術家が手掛けたもので、ステンレス製で高さ12メートルで重さは33・1トンにも及ぶ。ファルコンの鋭い眼光に加え、19メートルを超える両翼は迫力満点だ。

 

 このファルコン像は2017年のスタジアムオープン時に設置されたもので、歴史は浅い。これからこのスタジアムとファルコンズを象徴するものとして認知されていくのだろう。

 

 「タイトルタウン」との異名を持つウィスコンシン州グリーンベイのランボーフィールドには。名将ビンス・ロンバルディ氏の像がファンを出迎える。

 1960年代のパッカーズの黄金時代を築いたロンバルディ氏は、スーパーボウルの優勝トロフィーにその名前が冠されるほどの名将だ。

 

 彼の時代のグリーンベイはアフリカ系アメリカ人の住民がほとんどいなかった。

 パッカーズに所属するアフリカ系アメリカ人の選手が差別を受けたり、肩身の狭い思いをしたりしないように、ロンバルディ氏は医師などを中心にアフリカ系アメリカ人の移住を積極的に受け入れるように自治体に働きかけもした。

 戦術、戦略にたけていたというだけではなく、選手の居住環境にも心配りをしたことで多くの尊敬を集める人物だ。

 

 ちなみにランボーフィールド周辺の道路にはパッカーズで実績を残したヘッドコーチ(HC)や選手の名前が付いた道があり、道路標識にはマイク・ホルムグレン、ブレット・ファーブ、バート・スター、レジー・ホワイトらの名前を見つけることができる。

 

 名将の像が設置されている例としてはカウボーイズ(トム・ランドリーHC)やドルフィンズ(ドン・シュラHC、1972年の「パーフェクトシーズン」達成の瞬間がモチーフ)のスタジアムがある。

 ピッツバーグ・スティーラーズのハインツフィールドには創設者「アート・ルーニー像」があり、記念撮影スポットになっている。

 葉巻をくわえたおなじみのスタイルで、訪れるファンに愛されている。

 

 アリゾナ・カージナルスのホームであるフェニックス大学スタジアムには元Sパット・ティルマン氏の像がある。

 ティルマン氏は、1998年にカージナルスに入団したが、軍役につくことを志願して2002年に退団。2年後に派遣先のアフガニスタンで味方の誤射によって命を落とした。

 ティルマン氏は2001年のアメリカ同時多発テロを受けて軍役を志したとされる。その愛国心をたたえるために建てられたのがこの像だ。

 

 ニューオーリンズ・セインツのメルセデスベンツスーパードームにある像は、あるプレーを模したものだ。

 そのプレーとは、2006年9月25日に同スタジアムで行われた試合で起きたパントブロックである。このパントブロックがセインツが試合に勝つ大きなきっかけとなった。

 

 この前年にはアメリカ南部を巨大なハリケーン「カトリーナ」が襲い、甚大な被害をもたらした。

 セインツもニューオーリンズで試合を行うことができず、州内のバトンルージュやテキサス州サンアントニオなどを臨時のホームとすることを余儀なくされた。

 

 2006年のシーズンは、ショーン・ペイトン現HCやQBドルー・ブリーズらが加わったこともあり、チーム状況が好転して復興に努めるニューオーリンズ市民を励ました。

 その復活劇が始まったのが像で表現されている試合で、象徴的なプレーとしてこのパントブロックがファンの記憶に刻まれているのだ。

 ちなみにこのパントブロックをしたSスティーブ・グリーソン氏は現在、運動神経系に障害をもたらす筋萎縮性側索硬化症を患って闘病中で、それもこの像に特別な意味を与えている。

 

 アメリカのスタジアムはフットボール場に限らず、名選手、監督の像が建てられてあったり、チームの歴史を知ることのできるミュージアムがあったりと、いろんな趣向を凝らしている。

 現地で試合を観戦する機会があったら、是非とも触れてみたいアメリカのスポーツ文化の一端である。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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