メニュー 閉じる
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

奇想天外、趣向を凝らした練習メニュー 「タモン式渚のキャンプ」に参加して

2019.7.11 15:07 中村 多聞 なかむら・たもん
中村多聞さんが主宰する沖縄でのキャンプに参加した中央大の5選手=提供・中村多聞さん
中村多聞さんが主宰する沖縄でのキャンプに参加した中央大の5選手=提供・中村多聞さん

 

 前回のコラムでお知らせしたように、7月1日から5日間、南国沖縄で「タモン式渚のキャンプ」を実施しました。

 私、中村多聞が周到に準備し、趣向を凝らした練習メニューを体験した中央大学の学生さんに、キャンプの感想を語ってもらいました。

 

 インタビューに応じてくれたのは、以下の5選手です。

・髙橋  司さん(4年)

・吉原 優大さん(4年)

・針ケ谷優太さん(2年)

・山田 款太さん(3年)

・大津 一輝さん(3年)

 

聞き手:皆さんは自分から行きたいって言ったわけじゃないですよね?

吉原:タモンさんのお知り合いのコーチから提案がありまして、みんな「行きます、行きますっ!」ってことになりました。

タモン:中央大学ラクーンズは渚キャンプ参加検討しますかと伺ってからの回答がとても早かったんで驚きました。

大津:マジですぐでした。と言いますか、既に流れが決まってた感じがしました。

タモン:無理やりな感じで「行け!」って言われたの?

吉原:いえいえ。RBはこのようなキャンプに参加したことがありませんでしたから、嬉しくて興味がありました。しかもオキナワて聞いてワクワクしたんです!

聞き手:いろんな気持ちの中で取り組む前とその後ではどうでした?

吉原:まず、昨年のタモン式キャンプの動画を見せられて、これが今回はオキナワで開催されるのかー「ヤベー!」と思ったんですが、やっぱりオキナワって魅力的なワードに騙されましたね。

針ケ谷:初日の1発目の訓練がまさかのマリンレジャーだったじゃないですか。僕ら何があるんだろビクビクしいてた分嬉しくて。キャンプのしおりに書いてあったタモンさんの夢が「救急ヘリを呼ぶこと」だったので落差が(笑)。終わって移動の車内で首がめちゃくちゃ痛くて。とても疲れました。楽しかっただけで、結局は体力トレーニングだったのかと理解しました。

タモン:次に何をするか内緒なのが楽しかったでしょう?

大津:はい。次にやる事を教えてくれないのでストレスがすごかったです。シューズやウエアなど、何を準備すればいいのか分からなくて。みんなで相談するんですが、情報が入ってこなくて……。でもとにかくみんなで動いたり携帯電話で情報を回さないと、というプレッシャーが休憩時間を占めていましたね。

聞き手:実際どうでした?

大津:僕らの想定を完全に超えていきました。「フザケンナ!」って思いましたね(笑)。最後の坂道ダッシュはキツすぎました。その前の9キロ走で上位だった連中がわざわざ笑いに車で見に来て「水くれよ!」って本気で切れましたよ。

タモン:目がガチで怒っていたから怖かったよ。

大津:「こんなキャンプ二度と来ない!」って思いました。離島が一番エグかったですね。離島行くなんて言われてなかったし。朝、GPSで位置情報が全員に送られてきて行ったら「船着き場」と。船に乗ってどこへ行くのかってなりましたね全員。

タモン:離島ではピーピー言うてたよね。

針ヶ谷:砂浜で散々ダッシュしまくった後「ウオームアップ終了!」って言われて嘘やろと思いました。

タモン:しおり渡してたやん!

山田:そんなの関係ないっすよ! 罰ゲームもメッチャきついし、体力とメンタルが完全にやられました。ビーチバレーではしくじったら罰ゲーム、試合に負けても罰ゲームだったじゃないですか。でも罰ゲームがある時とない時があって、心の準備してたら「ないんかい!」って(笑)

タモン:他にも趣向凝らしてたやろ。

吉原:はい。振り向いたら土嚢が山ほど出現したじゃないですか。あんなのあったけ? 持って来た覚えないのになんで? どっから出てきたん? ビーチの備品かな? いや絶対さっきまでなかったって頭の中がみんなパニクってました(笑)

タモン:コーチとスタッフでみんなが運動している後ろでこっそり作っててん。

聞き手:メニューできつかったのは?

吉原:マリンレジャーが終わってすぐの「坂道ダッシュ」です。完全に〝死〟が見えました。

聞き手:精神的にも体力的にも無意味なことはさせませんよ。で、皆さんはこれらがフットボールにどう繋がってるって感じましたか?

吉原:試合終盤の第4クオーターにどれだけできるかですよね。最初の坂道ダッシュでは飲み水を用意しなくていいってなったじゃないですか。運動時に水がないなんて初めてでしたから。それも含めて自分の限界というものを自分で突き破ったことがなかったことに気づきました。限界を自分で作っていたんだなと。だから東京に帰ってからは、そこで気持ちを出して全力でやればやり切れるんだと思いました。

タモン:みんなも同じ感じかな?

山田:自チームのランメニューで昔からの習わしとしてとりあえず「頑張っていこうぜ!」なんて声掛けをしていたんですけど、この地獄のメニューを経験してお互いに声をかけ合うことの意味が分かった気がしたというか、とても重要に感じたんです。それでどうにか頑張れました。

タモン:こういう企画どうやった?

山田:きついですけど、あそこまで限界を越えたことはなかったです。他の大学のメンバーには絶対負けたくないし、ダッシュ一つとっても初めて会った他チームのみんなとも一緒に頑張れました。あと、僕は高校生の時から京大の植木(宏太郎)さんに憧れていたので、参加されると聞いてとても嬉しかったですし、それも頑張れた大きな要因でした!

タモン:競争意識はあった? みんな仲よさそうだったけど。

大津:ワセダの荒巻(俊介)はライバルですし、いつものチーム内の戦いとは違うじゃないですか。いつものはフットボールの技術が中心ですが、タモン式は体力とか精神力の勝負ばかりで、いつもとは全然違っていたので今回はとても刺激がありました。他チームの選手がいっぱいいるのが、やっぱりいいですよね。

タモン:9キロランニングで3人チームの全員がゴールしなければいけないルールの助け合いはどうだった?

山田:RBとして活躍したいと言う人間の集まりですので、他大学でも話が合いましたね。だから自然と息も合いました。

吉原:何かどこかで通じ合えるものがいっぱいありました。リーダーシップについても勉強になりました。いつもは敵チーム同士なのに、一緒に泊まって一緒に戦って、不思議な気持ちでした。

聞き手:今回の経験はどう生きると思いますか?

高橋:スタートの練習したじゃないですか。あんなの僕たち知らなかったです。40ヤードのタイムなんか変わんないなって思っていたんです。でも教えてもらったやり方で練習を毎日少しずつやればいいと思いました。

タモン:あれ、20世紀から当たり前の理論やで。

大津:砂浜のランしまくって、初めて筋肉痛に襲われる体の箇所が多くありました。だからこれを克服していったら強い走りにつながるなと思いました。今までは最初に今日走る量を教えてもらえるから、ついつい抜いてたなって思います。タモンさん、本数どころかメニューすら言ってくれませんもんね。

タモン:だからチームに帰ったら世話を焼いてくれる周りの人に本気で感謝できるようになったでしょう。人間は感謝の気持ちが大切。綺麗事言うてても誰にも伝わりません。でもこれからはサポートしてくれる人に対して「ホンマにありがとう!」って心の底から思えるよね。

吉原:ホントそうです。水を用意してくれてるマネジャーとか感謝です。普段はダッシュの本数知ってるだけで幸せでした。

タモン:他には?

高橋:砂浜で足を取られて、まっすぐ進めない。だから強く強く体を動かさなければなりませんでした。あの強さを使ってフィールドで走れるようになりたいですね。あの砂上の感覚を経験して自分なりに感じたことがあったので。

タモン:特別にフカフカの砂浜に行ったからね。自分が現役時代から知っていた場所だったんだけど、コーチになった時からいつかココでシゴキしたいなって思ってたんよ。

吉原:フットボールは準備のスポーツだとよく言われるし聞きもしますけど、今回のは謎だらけだったじゃないですか。でもそれがフットボールで勝つためにも重要だと学べました。何をさせられるか分からなかったので、シューズやウエア、それと気合いも全部持って行ってました。準備、メンタル面でいろんなことを学びました。想定していなかったことで学びがいっぱいありました。

タモン:そう言うてもらえたら嬉しいわ。足らなかった練習とかはありましたか? こんなのやってませんよみたいな。

全員:ありません!

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

最新記事