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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.290

2019.7.4 16:58 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
2015年12月の甲子園ボウル、立命大―早大の第4クオーター、早大のK佐藤敏基選手(16)の逆転を狙ったFGは失敗=阪神甲子園球場
2015年12月の甲子園ボウル、立命大―早大の第4クオーター、早大のK佐藤敏基選手(16)の逆転を狙ったFGは失敗=阪神甲子園球場

 

 厳しい現実と真摯に向き合いながら、夢を追いかけて努力する若者は、無条件で応援したくなる。

 日本社会人XリーグIBMのキッカー(K)佐藤敏基選手(25)もその一人だ。

IBMのKとして活躍する佐藤選手
IBMのKとして活躍する佐藤敏基選手

 

 2015年の甲子園ボウル。早大4年だった佐藤選手に、Kとしては願ってもないシーンが訪れる。

 27―28の1点差で迎えた、残り試合時間3秒。フィールドに送り出された佐藤選手は、入れば逆転となる52ヤードのFGに挑む。

 

 「少しコンタクトが甘かった」と振り返るボールは軌道が低くなり、立命大の選手の手にわずかに触れてゴールポスト左へそれた。

 タイムアップ。第70回の記念大会で初優勝を目指した早大の野望はついえた。

 

 「あの時の悔しさは今でも忘れられないが、同時に今の自分を構成する大きな要素でもある」

 卒業後、大手不動産会社に就職した佐藤選手は「あのFGが決まっていたら、今もサラリーマンをしていたと思う」と語る。

 

 佐藤選手は今、本場アメリカのプロリーグでプレーするために、生活のすべてを捧げている。

 平日は、佐藤選手の「挑戦」を応援し、パトロネージ契約を結んだ建設コンサルタント会社(株)山下PMC(東京都中央区)で翻訳のアルバイトに従事。夕方からと週末は、母校早大でコーチをしながらトレーニングをしている。

米プロリーグ入りへの夢を語る、IBMのK佐藤敏基選手=東京・東新橋の共同通信社本社
米プロリーグ入りへの夢を語る、IBMのK佐藤敏基選手=東京・東新橋の共同通信社本社

 

 早大学院高時代はQBだったが、肩を壊してKに転向。子どもの頃にサッカーをしていたこともあってみるみる頭角を現した。

 

 2016年6月、クリニックのために来日した、NFLのレイダーズなどでKとしてのプレー経験があるマイケル・ヒューステッド氏の目に留まったのが、プロを目指すきっかけだ。

 甲子園ボウルのトラウマもあったのかもしれない。社会人1年目のFG成功率は良くなかった。

 調子が悪かったのは、仕事のせいではない。上司や同僚にも恵まれ、会社での生活は充実していたが、迷った末にNFLへの思いを優先することになる。

 

 現在はスポンサー探しに奔走する佐藤選手の目標は、来年2月に19年ぶりに復活する米プロリーグXFL。まずはそこで実績を残し、最高峰のNFL入りを模索する。

 

 9月で26歳になる。夢を叶えるために残された時間はそう多くないが、短いやり取りの中で熱い思いは十分に伝わってきた。

 笑顔が似合うナイスガイの今後に注目したい。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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