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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

ブロンコスのオーナー、パット・ボウレン氏が死去 享年75

2019.6.19 10:00 生沢 浩 いけざわ・ひろし
ブロンコスを愛し、75歳で亡くなったパット・ボウレン氏(AP=共同)
ブロンコスを愛し、75歳で亡くなったパット・ボウレン氏(AP=共同)

 

 35年間にわたりNFLブロンコスのオーナーを務めたパット・ボウレン氏が、現地時間6月13日に死去したと家族が発表した。75歳だった。

 

 直接の死因は明らかにされていないが、この数年はアルツハイマー病と闘う日々を送っていた。

 

 今年の1月に殿堂入りが発表されたばかりで、その式典を8月に控えての訃報だ。

 

 

 ボウレン氏は1984年にブロンコスのオーナーとなった。それ以降ブロンコスはスーパーボウルに7回出場し、3度のリーグ制覇を成し遂げている。

 

 オーナーシップを取得してからチームの強化に成功したという意味では、ペイトリオッツのロバート・クラフト氏、カウボーイズのジェリー・ジョーンズ氏と並ぶ功績だ。

 

 

 ブロンコスのジョン・エルウェーGMとは特別な絆で結ばれた関係だった。

 

 ボウレン氏がブロンコスを買収したとき、エルウェー氏は入団2年目のQBだった。

 

 野球で鍛えた強肩と並外れた運動能力で、ダイナミックなプレーを展開するエルウェー氏はボウレン氏を魅了した。

 

 ブロンコスはエルウェー氏の能力を最大限に生かすようにチームが構成され、それはすぐに結果につながった。

 

 

 ブロンコスは86、87、89年にスーパーボウルに出場する。しかし、身体能力に頼った試合運びをしがちなエルウェー氏は、時に独り相撲から墓穴を掘り、QBに頼り切りのスキームには限界があり、優勝には届かなかった。

 

 それでもボウレン氏のエルウェー氏への信頼と愛情が弱まることはなかった。

 

 

 エルウェー氏と当時のダン・リーブスHCの確執が修復ならないところまでくると、ボウレン氏は迷わずリーブスHCを解雇。ウェイド・フィリップス氏を2年間挟んで、エルウェー氏と相性のいいマイク・シャナハン氏をHCに招へいしたのだった。

 

 

 シャナハンHCの下で、ブロンコスはプレーオフの常連となるが、年齢とともにエルウェー氏の力は衰えた。

 

 激しい当たりを恐れないプレースタイルの代償として、体のあちらこちらに故障を抱えて苦しみながら試合をこなしていたのだった。

 

 

 若いころの弾丸ライナーのようなパスはもう見られなかったが、その分エルウェー氏は経験に裏付けされた頭脳的なクオーターバッキングを展開し、自分の力ではなく周囲のタレントを生かして試合に勝つすべを身につけていた。

 

 

 そんな状況で迎えた第32回スーパーボウル(97年シーズン)。圧倒的有利を予想された前年チャンピオンのパッカーズを破り、ブロンコスは初めて頂点を極める。

 

 ボウレン氏とエルウェイ氏にとっては4度目のスーパーボウル挑戦での悲願達成だ。

 

 

 この時の優勝トロフィー授与式でボウレン氏は「この優勝をジョンに」と高らかに叫んだ。

 

 ほとんど孤軍奮闘でブロンコスを支えてきたQBへの彼なりの賛辞だったのだろう。

 エルウェイ氏は翌年もスーパーボウル優勝を果たし、それを花道に引退する。

 

 

 それから17年を経た2015年。ブロンコスはチーム史上3度目のリーグ優勝を経験する。

 

 しかし、その場にボウレン氏の姿はなかった。すでに闘病しており、表舞台に姿を現さなくなっていたからだ。

オーナーの訃報に沈痛な面持ちで記者会見に臨む、ブロンコスのジョン・エルウェーGM(AP=共同)
オーナーの訃報に沈痛な面持ちで記者会見に臨む、ブロンコスのジョン・エルウェーGM(AP=共同)

 

 

 ボウレン氏の代理でトロフィーを受け取ったのはGM就任5年目のエルウェー氏だった。

 

 自分がQBとして勝ち取って以来の純銀の優勝杯をしみじみと眺めたエルウェー氏はおもむろに叫んだ。「この優勝をパットに!」

 

 

 チームオーナーと選手、GMという立場の垣根を越えた友情が優勝に花を添えた瞬間だった。

 

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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