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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

往年の名QBバート・スター氏が死去 85歳、パッカーズで一時代築く

2019.5.29 11:54 生沢 浩 いけざわ・ひろし
自らボールを持って前進するパッカーズQB時代のバート・スター氏(AP=共同)
自らボールを持って前進するパッカーズQB時代のバート・スター氏(AP=共同)

 

 1960年代、NFLのパッカーズを代表する選手であり第1、2回のスーパーボウルのMVPにも輝いた往年の名QBバート・スター氏が5月26日(日本時間27日)、自宅のあるアラバマ州バーミングハムで死去した。85歳だった。

 

 スター氏といえばフェイスマスクがシングルバーのヘルメットをかぶり、大きなモーションからパスを投げる映像や画像が印象的だ。

 

 まだランが主体だったころのNFLで、いち早くパッシングによって成功を収めた一人である。

 

 アラバマ大学からパッカーズに入団したのが1956年。指名は17巡目で全体の200番だったというから、それほど大きな期待をかけられていなかったのかもしれない。

時代を感じさせるバート・スター氏のフェイスマスク(AP=共同)
時代を感じさせるバート・スター氏のフェイスマスク(AP=共同)

 

 事実、入団から数年はこれといった実績もないキャリアを過ごした。

 

 

 スター氏とパッカーズの運命が変わったのは、59年にビンス・ロンバルディ氏がHCに就任してからだ。

 

 現在NFLの優勝トロフィーに名前が冠されている伝説の名将は平均的な実力の選手の潜在能力を引き出し、一流に育てることで知られる。スター氏も例外ではなかった。

 

 

 当時はパワーフットボール全盛の時代だ。Tフォーメーションがリーグを席巻し、大柄なOLと走力のあるRBがもてはやされた。

 

 もちろん、ロンバルディ氏の戦略もその基本にのっとったものだった。

 

 

 彼はスター氏の流れるようなパッシングフォームと肩の強さに注目した。

 

 ランニングゲームではほとんど必要とされない能力だったために見過ごされてきた。それがスター氏が活躍できなかった理由だったのかもしれない。

 

 

 ロンバルディ氏はスター氏の特性を生かすフットボールを導入した。

 

 現在のようにランよりもパスの比率が高くなるようなことはなかったが、それでもパスによる空中戦はパッカーズの代名詞でもあったパワーフットボールに新たな武器を与えたのだった。

 

 

 スター氏がQBを務めたパッカーズは61年を皮切りに62、65、67、68年とNFLの王座に就く。

 

 最後の2回は対抗リーグAFLとの統一王座決定戦で、現在のスーパーボウルだ。

 

 

 スター氏のプレーオフにおける通算成績は9勝1敗で、勝率で言えば歴代1位だ(先発10試合以上が対象)。

 

 唯一の黒星は彼にとっての初のポストシーズンゲームだったので、それ以降はプレーオフで負けないままに引退したことになる。

 

 また、プレーオフでのパサーレイティング104・8も史上最高値だ。

 

 

 生涯パス成功率は57・4%だった。単年でのパス成功率のNFL記録(74・4%)を持つドルー・ブリーズ(セインツ)の通算成功率67・3%に比べると低い数字なのだが、先述のようにスター氏の時代はランプレーが主流だ。

 

 現在と当時では一本のパス成功の意味合いが異なる。なにより、スター氏はNFLにおけるパッシングの黎明期を形成したという功績がある。

 

 

 引退後しばらくして、スター氏はパッカーズのHCも務めたが、9年間で53勝77敗3分け、プレーオフでは1勝1敗と振るわなかった。

 

 

2006年のスーパーボウルで勝利チームに授与される「ビンス・ロンバルディ・トロフィー」のプレゼンターを務めたバート・スター氏(AP=共同)
2006年のスーパーボウルで勝利チームに授与される「ビンス・ロンバルディ・トロフィー」のプレゼンターを務めたバート・スター氏(AP=共同)

 2014年に2回の脳梗塞に加えて心筋梗塞も発症し、以降は闘病生活が続いていた。

 

 

 今年はNFL発足100周年で、開幕戦としてパッカーズ対ベアーズの試合が予定されている。

 

 リーグで最も歴史のあるライバル同士の試合を、ぜひとも観戦してほしい人だっただけに残念だ。

 

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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