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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.284

2019.5.23 16:39 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
明大との定期戦の後の懇親会で、話をする関学大の鳥内秀晃監督=5月19日、味の素スタジアム
明大との定期戦の後の懇親会で、話をする関学大の鳥内秀晃監督=5月19日、味の素スタジアム

 

 今季限りで退任する、関学大の鳥内秀晃監督は試合前、チームグッズを売っている会場入口近くに設営したテントの前に立ち〝販促〟に一役買うのが恒例になっている。

 

 観戦にやって来たOBや知人と握手を交わし「なんかこうてや」と声を掛ける。その光景は秋のリーグ戦や甲子園ボウル、ライスボウルでもおなじみだ。

 5月19日、東京・アミノバイタルフィールドで行われた明大との春の定期戦でもそうだった。

 

 チームの顔としてファンとの記念撮影に気さくに応じる鳥内監督だが、現役学生の行動には常に目を光らせている。

 明大戦の前、下級生が談笑しながら会場入りしたのを見て、鳥内監督は嫌な予感がしていたという。「きょうは、何かミスが起きる」

 

 長年の勘は当たった。攻守にミスが出た関学大は、26―27で明大に10年ぶりの定期戦勝利を献上した。

 

 鳥内監督はいつも「関学は4年生のチーム」と言う。最上級生が自らを律して下級生の模範になることを要求する。

 「自分がニコニコしながら会場入りしとったら、下級生に言われへんわな。そういうところで4年生がビシッと言えるかどうかで、チームは違ってくるんやけどね」

 

 試合後、両校のOBによる懇親会にお邪魔した。

 春は勝敗にこだわらず、できるだけ多くの選手に経験を積ませることが主眼となる。

 しかし、残り1秒から明大がいちかばちかで投げた「ヘイルメリーパス」を決められての逆転負けに、鳥内監督はご機嫌ななめだった。

 

 以前、小欄で取り上げた「ファイターズ」初の女性学生幹部、主務の橋本典子さんとはタイミングが合わず、試合後お目にかかれなかった。

 お話しできず残念だったというメールを後日送ったところ、橋本さんはこう返信してきた。

 「明治との試合、その前の試合を振り返ると、4年生をはじめチームとしての甘さを感じています。そしてそれらの元凶は幹部にあり、私自身の責任だと感じております」

 

 関学大に限らず、学生は毎年一からチーム作りをしなくてはならない。学生は失敗を経験しながら成長する。それを見守る監督、コーチには忍耐が必要だ。

 

 大人が一から十まで助言することは簡単かもしれない。しかし、長い目で見るとそれは学生のためにならないことを、実績のある指導者は知っているのである。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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