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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

プロの攻撃ラインは大きくて速い 自身が綴る中村多聞物語71

2019.5.16 11:36 中村 多聞 なかむら・たもん
NFLヨーロッパ「ライン・ファイアー」のチームメート(左)と中村多聞さん
NFLヨーロッパ「ライン・ファイアー」のチームメート(左)と中村多聞さん

 

 ▽1999年3月28日

 今日はQB辻、RB堀口選手の所属する「スコティッシュ・クレイモアーズ」とのスクリメージデーです。

 昨日と同様に強気でゴリゴリ突っ走る気概ですが、相変わらず大した活躍もなくいたって普通の結果でした。

 派手なゲインもなければビッグヒットのプロテクションもなく、かと言ってミスもない無難な結果でした。ですからここに書き記す必要すらないかもしれません。なので話題を少し変えます。

 

 日本でプレーしている時と違う点。これは現在指導している選手たちも関心が深いですし、ファンの方からもしばしば聞かれることなので簡単にここでご紹介しておきます。

 

 今回はオフェンスライン(OL)について僕の感じていたことを書きます。

 とにかく彼らはサイズが大きいですから、5人から7人が横に並んだ時、隅から隅までの幅が広いのです。

 「BOXの幅が広い」なんて専門用語では言います。身長188センチ、体重130キロ平均ですので、現代の日本人選手と比較しても随分大きいですもんね。

 両手を広げた「両手間隔」を目安に並びますので、両手幅のリーチがモロに出ます。

 

 アメリカ人プロのOLは、体は大きく重いけれどもしっかりとした機動力を持っています。

 敏捷性に長けており、バランスなどを含んだ運動神経全体も明らかに「プロの運動選手」という印象です。

 ですからプレーが始まった瞬間から1、2秒の間に移動できる速さと距離が日本人とは全然違います。

 なおかつ正確に動ける上に、力強く敵と勝負しにいくので「ライン戦」はとても迫力があり価値の高いものとなっています。

 

 その5から7人ほど並ぶ大きな壁が一瞬にして、前方は当然ながら右や左へ飛び出すのですから、少し後ろに立って準備している俊足自慢のランニングバック陣も全速力走行が可能になるのです。うっかりしていては置いてけぼりを食らうほどの速度です。

 

 また、彼らは作戦ミスというものがほとんどありません。試合で敵と対戦しますから勝ち負けは当然あるのですが、役割を誤るという〝事故〟は僕の記憶には残っていません。

 練習前にフィールドに立ってコーチと一緒に作戦の確認をすることがよくあるのですが(ウオークスルーと呼びます)その際にほとんどの問題がコーチによって解決させられます。

 作戦を間違って記憶していたり解釈していた人も、ここで完全に理解を深め、実戦練習ではしっかりと試合をイメージした動きに変換したところまでを担当コーチが確認します。

 これが「作戦をインストールする」の本来の形なのでしょう。あとは「ゲームで思い切り相手をぶっ倒してこい!」となります。とても格闘技っぽいですね。

 

 ただ、僕はプロリーグしか見ていないので、アメリカの大学チームなどでは、ここからどの程度割り引いた甘さがあるのか不明です。

 テレビのドキュメンタリーなどで見る限りは、かなり日本に近いのかなと思うので、ダメな奴や痛がり、下手くそやヘタレが一切存在しないプロの世界は全然厳しさが違うのかなと感じます。

 

 その厳しいプロのスクリメージで地味に仕事を終えはしましたが、2日連続対外スクリメージということで練習が「ラク」なのです。

 例のスネ痛も練習が軽いと悪化しません。〝スリープファニー〟も完治しているようです。

 もっともっと目と体をプロのフットボールに慣らして3日後の「バルセロナ・ドラゴンズ」との対戦に備えねばなりません。

 

 ▽1999年3月29日

 午前の練習を終えてホテルの戻ると、知った顔のアジア人が真っ赤なホンダのオープンカーの横に立っていました。

 その横にはまたまた知った顔のアメリカ人。アサヒ飲料チャレンジャーズのヘッドコーチ藤田智さんと、特別コーチのトム・プラットさんです。

 プラットさんはフロリダ在住なので、ここオーランドに近いのかどうか分かりませんが、わざわざ会いに来てくださったのです。

 

 プラットさんは、第1回スーパーボウルにコーチとして勝利し、第50回大会にも出場しそうになり米国でもとても話題になった偉大なコーチです。

 アサヒ飲料優勝時に、藤田ヘッドコーチのそのまた師匠のような方で、酔っ払うとギャグを連発するでっかいおじいさんです。

 

 「おー、頑張ってるかー?!」「いやーキツいっす!」なんて簡単な挨拶だけでしたが、知人の大物コーチ二人に激励していただくと、脚が痛いとか言っている場合ではなくなります。

 

 さていよいよフロリダ合宿も終盤になりました。もうすぐドイツに移動です。合宿でやり残しがないように、毎日の練習のためにしっかり準備する僕でした。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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