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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.282

2019.5.9 16:56 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
日体大との試合後、観客に向かって挨拶する日大の選手、スタッフ=東京都世田谷区の日体大グラウンド
日体大との試合後、観客に向かって挨拶する日大の選手、スタッフ=東京都世田谷区の日体大グラウンド

 

 日大最初の攻撃シリーズの第1プレー。3年生QB林大希選手が体を後ろへ弓なりに反らし、渾身の力を込めて投げたボールは、日体大のDBを抜き去ったWR岸澤淳之介選手(3年)の胸に、絶妙のタイミングで吸い込まれていった。

 鮮やかな72ヤードの先制TDパスには、「フェニックス」全員の思いが込められていた。

 

 5月4日。東京都世田谷区にある日体大グラウンドで行われた春の交流戦は、1年前の関学大との定期戦で起こした不祥事で、関東学連から秋のリーグ戦への出場資格停止処分を受けた日大にとって、処分解除後初めてとなる対外試合だった。

 

 「新生フェニックス」の再出発には保護者やOB、ファンだけでなく、東西の強豪校の関係者が大勢観戦に来ていた。

 どん底を味わった日大が、どこまで立ち直ったのか。それを見届けるためである。

 

 42―0というスコアは、今の日大にはあまり意味を持たない。

 極端なコミュニケーション不足に起因する「上意下達」を是としていた前体制から、チームがどのように変化しているかが焦点だった。

 その意味では、規律を保ちながら風通しの良さも感じさせる船出だったのではないか。

 

 1年だった2017年シーズンに、日大を27年ぶりの甲子園ボウル優勝に導いた林選手は試合後、多くのメディアに囲まれた。

 2年前に背負ったQBのエースナンバー「10」ではなく「1」を付けた理由を聞かれると「何でも一番という意味」と答えた。

日体大との試合前に握手する、日大のQB林大希選手(1)とDL宮川泰介選手=東京都世田谷区の日体大グラウンド
日体大との試合前に握手する、日大のQB林大希選手(1)とDL宮川泰介選手=東京都世田谷区の日体大グラウンド

 

 フェニックスには、ポジションごとにエースナンバーがある。WRの「22」と「25」はその代表だが、今は欠番になっている。

 橋詰功監督によれば「今年の秋は(1部下位リーグの)BIG8なので、(1部上位リーグの)TOP8に上がったら復活させるという学生たちの思いがあるようだ」という。

 現代を生きる若者なりに、伝統を大切にしている証しだろう。

 

 ただ、後輩にエールを送る一方でこんな声も聞こえてくる。

 「現役の学生と時代を超えて共有できる価値観が、赤いユニホームを着たということ以外になくなるような寂しさがある」

 得点した後に、体をぶつけ合って大げさに喜ぶ姿を見て残念がるOBは少なからずいる。

 

 元号は昭和から平成そして令和へ。古き良き伝統を受け継ぎつつ、チームに新しい風も取り入れる。それもまた時代の流れなのかもしれない。

 

 東京五輪が開催される来年、日大は創部80周年の節目を迎える。

 長年他の大学とは一線を画し、独自のチーム作りをしてきた「不死鳥」にとって、2019年はその在り方を模索する大事なシーズンになる。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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