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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

QBマレーにかかる期待 NFLカージナルスが全体1位で指名

2019.4.30 14:18 生沢 浩 いけざわ・ひろし
昨シーズン、オクラホマ大のエースQBとしてプレーしたカイラー・マレー(AP=共同)
昨シーズン、オクラホマ大のエースQBとしてプレーしたカイラー・マレー(AP=共同)

 

 NFLドラフトは3日間の日程を終了し、7ラウンドで計254選手が指名された。

 

 注目の全体1位指名は予想通りオクラホマ大のQBカイラー・マレーだった。

 

 昨年の「ハイズマン・トロフィー」受賞選手で、野球でも活躍してMLBからも1巡指名を受けた逸材だ。

 

 

 指名したカージナルスはマレーにフランチャイズQBとなる期待をかけており、ほぼ間違いなく9月の開幕から先発起用することになる。

 

 高い評価を受けるマレーだが、オクラホマ大でスターターとしてフルに実働したシーズンは昨年だけだ。

 

 実績不足の懸念はつきまとう。カージナルスのクリフ・キングスベリー新HCは前任がヒューストン大学のHCで、NFLのレベルに精通しているとは言い難い。こうした理由からマレーを1位指名することへの不安は指摘されていた。

 

 

 しかし、同じNFC西地区のシーホークスやラムズがフランチャイズQBをドラフトで獲得することで強くなっていったように、カージナルスにとってもオフェンスの司令塔の安定がチーム復活に向けて不可欠な要素なのだ。

ドラフト当日、会場のレッドカーペットを歩くオクラホマ大のQBカイラー・マレー(AP=共同)
ドラフト当日、会場のレッドカーペットを歩くオクラホマ大のQBカイラー・マレー(AP=共同)

 

 

 さて、マレー入団で先発の座を失うのがジョシュ・ローゼンだ。

 昨年カージナルスから1巡全体10番目の指名を受けたが、14試合の出場で11TDに対し14の被インターセプト、レイティングは66・7と振るわなかった。

 

 チームも3勝13敗でNFLワーストの成績だった。

 

 

 たった1シーズンで「お払い箱」となったローゼンだが、すぐにドルフィンズが獲得に手を上げた。

 

 交換条件は今年のドラフトの2巡と来年の5巡指名権だ。ローゼンの昨年の成績を振り返ると条件がよすぎる印象を受けるが、トップ10指名というポテンシャルからカージナルスがこの条件を提示したものと思われる。

 

 

 ドルフィンズは昨季終了とともに先発QBライアン・タネヒルを解雇した。

 

 活発に動くと見られたフリーエージェント市場でも動きは鈍く、NFL15年目のベテランであるライアン・フィッツパトリックを獲得しただけだった。

 

 

 フィッツパトリックはベンガルズやビルズ、最近ではジェッツやバッカニアーズを渡り歩いてきた「ジャーニーマン」だ。

 

 面白いのはバックアップ要員として契約しながらも先発QBの不振でポジションを与えられ、予想外の活躍をするということを繰り返してきたことだ。

 

 

 肩が強いので、好調時にはいいパスオフェンスを展開する。しかし、スターターとして定着するには安定感に欠け、さらに30代後半に差し掛かった今では、チームの将来を担う選手としての位置づけはできない。

 

 

 ドルフィンズは全体13番目指名権を持っていたが、QBの層が薄い今年のドラフトではいい人材が得られないと考えていたのだろう。

 

 カージナルスがマレーを指名するのを待って、ここぞとばかりにローゼン獲得に乗り出した。

 

 

 これは賭けである。ローゼン再生に失敗すれば来年以降にまた新たなQBを獲得する必要があり、チーム再建はさらに遅れる。交換条件として譲渡した二つの指名権も無駄になる。

 

 逆に開き直ってローゼンを一から育て直す方針を打ち出した方が得策かもしれない。

 

 フィッツパトリックは今年1年は先発が務まるはずだ。その間にローゼンをじっくりと育てれてばいい。仮にも1巡指名のQBだ。育て方さえ間違えなければ才能は開花するだろう。

 

 

 幸いローゼンには1シーズンの経験値がある。大学からプロに転向したばかりの若手育成に比べると有利な判断材料は多い。このアドバンテージをドルフィンズが生かせるかどうか。

 

 今季の全体1位指名はカージナルスとドルフィンズの運命を大きく変えた。最後に笑うのはどちらだろうか。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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