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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

スキャンダルに揺れる王者ペイトリオッツ オーナーのクラフト氏に買春疑惑

2019.2.27 11:56 生沢 浩 いけざわ・ひろし
AFC決勝で対戦したチーフスの本拠地に到着したペイトリオッツのロバート・クラフト・オーナー(右)(AP=共同)
AFC決勝で対戦したチーフスの本拠地に到着したペイトリオッツのロバート・クラフト・オーナー(右)(AP=共同)

 

 第53回スーパーボウルで通算6度目の優勝を果たしたばかりのペイトリオッツをショッキングなニュースが襲った。

 オーナーのロバート・クラフト氏が買春容疑で起訴されたのだ。

 

 今年1月19日と20日の2回にわたり、フロリダ州ジュピターにある中国人が経営するアジア系マッサージ店を訪れ、金銭を渡して女性と性行為に及んだ容疑がかけられている。

 マイアミビーチ警察は2日間ともクラフト氏が行為に及び、女性に金銭を渡しているところをビデオに記録してあるとし、証拠が十分であるとして起訴に踏み切った。

 逮捕状も用意されたとの報道もあったが、このコラムの起稿時点でクラフト氏が逮捕されたという事実はなく、在宅起訴となった模様だ。

 

 クラフト氏は弁護士を通じ、「断固として違法行為は否定する」との声明を発表している。

 77歳のクラフト氏は2011年にマイラ夫人と死別。現在も独身だが、12年から女優のリッキー・ノエルランダーさんとの交際が伝えられている。

 

 フロリダ州のマイアミビーチやオーランドでは、中国人が経営する複数のマッサージ店で売春行為が行われているとの情報があり、さらにそこに人身売買が関連しているとされ、警察が内偵捜査を進めていた。クラフト氏の姿が映像に記録されていたのはそのためだ。

 200人近くの男性が同様の容疑で逮捕される見込みで、経営側の中国人も複数検挙されている。

 

 もし有罪が確定すれば最大1年の禁固刑と罰金、および100時間の地域活動が科せられる。

 また、クラフト氏はNFLからも処罰を受けることになる。NFLは今回の件に関連し、「NFLの行動規範は関係者すべてに及ぶもので、違反については立場にかかわらず公平に処罰を科す」との見解をあらためて表明している。

 

 NFLがオーナーを処分するのは前例がないことではない。ロジャー・グッデル現コミッショナーになってからでも、コルツのジム・アーゼイ氏(薬物の影響下での運転で逮捕)、クラフト氏(スパイ疑惑とボールの空気圧を違法に減圧した嫌疑)、セインツのトム・ベンソン氏(NFLで禁じている、相手チームの選手にけがをさせるプレーに対する報奨金制度を行ったことに対し)、パンサーズのジェリー・リチャードソン元オーナー(性的及び人種差別発言)に罰金や期間限定の資格停止、またはその両方を科した例がある。

 

 前述のケースでは、オーナーの不祥事がチームの人気に悪影響を及ぼしたとは言えない。

 今回のクラフト氏の行為もペイトリオッツ人気やチケット販売に直接的な影響があるとは考えにくい。ただし、クラフト氏のNFL内外における立場は微妙なものになりそうだ。

 

 というのも、クラフト氏がマッサージ店に出入りしたとされる20日はAFC決勝でペイトリオッツが敵地カンザスシティーに乗り込んでチーフスと対戦した日だからだ。

 クラフト氏は午前中にマッサージ店を訪れ、その後カンザスシティーに空路で移動した。

 スーパーボウル進出をかけて選手が戦う当日に違法行為に及んだとすれば、クラフト氏の信用に大きな傷がつく。

第53回スーパーボウルで優勝し、トロフィーを掲げるペイトリオッツのロバート・クラフトオーナー(AP=共同)
第53回スーパーボウルで優勝し、トロフィーを掲げるペイトリオッツのロバート・クラフトオーナー(AP=共同)

 

 クラフト氏は製紙及び紙製品の会社を起業して財をなし、1994年にペイトリオッツを買収した。

 クラフト氏がオーナーになってから、ペイトリオッツはスーパーボウルに10度出場する強豪チームとなった。

 2000年にビル・ベリチック氏がHCに就任し、01年にはトム・ブレイディが先発QBとなってスーパーボウル初制覇を果たした。

 その後のペイトリオッツが、いかにNFLのトップチームとして君臨しているかは説明するまでもない。

 

 ペイトリオッツが強豪チームとなるにつれて、NFLにおけるクラフト氏の発言力も強くなった。

 現在はスティーラーズの「ルーニー家」、ジャイアンツのジョン・モーラとスティーブ・ティッシュ両氏に次ぐ影響力を持つともいわれる。

 今回の件が有罪となれば、現在の権勢にほころびも生じるだろう。

 

 社会的にもクラフトグループの株価などへの影響も懸念される。親交があるドナルド・トランプ大統領との関係にも変化があるかもしれない。

 クラフト氏の行為が違法であったと判断されたとしても、これまでのペイトリオッツの栄光が傷つくわけではない。しかし、お祝いムードに水を差してしまったのは事実であり、極めて残念だ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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