メニュー 閉じる
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.268

2019.1.24 10:00 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
富士通とのライスボウルの後、2年生QB奥野選手(3)の労をねぎらう関学大の4年生QB西野選手と(18)と光藤主将(10)=撮影:武部真
富士通とのライスボウルの後、2年生QB奥野選手(3)の労をねぎらう関学大の4年生QB西野選手と(18)と光藤主将(10)=1月3日・東京ドーム、撮影:武部真

 

 関学大の光藤航哉主将に初めてインタビューしたのは2年前の4月。神戸市王子スタジアムで行われた日大との定期戦の試合後だった。

 

 チーム関係者に促されてスタジアム内の一室に入ってきた光藤選手は、緊張した面持ちでこちらの質問に言葉を選びながら丁寧に答えてくれた。

 

 3回生のエースQBとして出場した日大戦で、持ち味の「足」を生かしてチームを勝利に導いた。

 コーチやOBの評価は高く、これから2シーズンは彼が主戦QBとして「ファイターズ」のオフェンスを牽引していくのだろうと確信した。ところが……。

 

 2017年、甲子園ボウルに出場した関学大は、予想に反して日大に敗れてしまう。

 例年より早く迎えたオフに、光藤選手が主将に立候補し選出されたと聞いたときは正直なところ驚いた。

 他のポジションとは比べものにならないほど責任が重いQBに加え、気苦労が多い主将も兼ねるのは果たしてどうか。インタビューで感じた「線の細さ」が気になった。

 

 しかし、それは杞憂に終わった。昨シーズンは関西のライバル立命大にリーグ戦で快勝。全日本大学選手権の西日本代表決定戦でも20―19で逆転勝ち。甲子園ボウルでは東日本代表の早大を退けた。

 

 200人近い部員を前にした甲子園ボウル後のハドル。腹の底から絞り出した光藤主将のよく通る声は威厳に満ち、言葉には説得力があった。何よりいい顔をしていた。

 エースQBの座こそ2年後輩の奥野耕世選手に譲ったが、リーダーとして1年間チームの先頭に立ってきたプライドが見て取れた。

 

 年が明けて「裸のアスリートⅡ」(BS―TBS)というテレビ番組を見た。

 日本一を目指すファイターズの姿を追ったドキュメンタリーで、光藤主将がどうやってチームに貢献してきたかがよく分かる内容に仕上がっていた。

ライスボウルの第4クオーター、自らボールを持ってTDを挙げる関学大の光藤主将=撮影:武部真
ライスボウルの第4クオーター、自らボールを持ってTDを挙げる関学大の光藤主将=1月3日・東京ドーム、撮影:武部真

 

 守備のパート練習に付き合い、キッカーの蹴ったボールを拾う。自分にできることは何かを模索し、サポート役に徹する。

 関学大の強さの根源を垣間見る思いだった。

 

 1点差で競り勝った立命大との再戦。「逆転サヨナラFG」のお膳立てをしたのは、気迫あふれるプレーでゴール前までボールを運んだ「♯10」だった。

 

 こういうキャプテンもいることを世に示した好漢はこの春、内定している大手保険会社に就職し、社会人としての一歩を踏み出す。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

最新記事