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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

試合巧者ぶり光ったAFCのペイトリオッツ NFCは〝誤審〟で流れ変わる

2019.1.22 12:36 生沢 浩 いけざわ・ひろし
ペイトリオッツのDBジョーンズ(31)のタックルを受けて宙に舞うチーフスのTEケルシー(AP=共同)
ペイトリオッツのDBジョーンズ(31)のタックルを受けて宙に舞うチーフスのTEケルシー(AP=共同)

 

 2月3日(日本時間4日)にジョージア州アトランタで行われる「第53回スーパーボウル」に進出したのは、AFCは3年連続11回目となるペイトリオッツで、NFCは17年ぶり4度目のラムズだ。

 ペイトリオッツの3年連続出場はドルフィンズ(1971~73年シーズン)、ビルズ(1990~93年シーズン)に次ぐ史上3例目の快挙だ。

 優勝すればスティーラーズと並ぶリーグ最多六つ目の「ビンス・ロンバルディー杯」の獲得となる。

 

 カンファレンス決勝はともにオーバータイムにもつれ込む大接戦となり、いずれも第2シードのチームが勝ち進んだ。

 ペイトリオッツとラムズの顔合わせは2度目。最初の対戦はアメリカ東部で同時多発テロがあった2011年シーズンで、ペイトリオッツのQBトム・ブレイディがフランチャイズ初のリーグ制覇をもたらした大会だ。いわば、この時からペイトリオッツの黄金期が始まったのだ。

RBミシェル(左)にボールを手渡すペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)
RBミシェル(左)にボールを手渡すペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)

 

 今年のAFC決勝ではそのペイトリオッツの試合巧者ぶりが目立った。14―0と序盤にリードしながら、勢いのあるチーフスに第4Qだけで2度も逆転されるなど、過去2年のAFC決勝に比べると苦戦を強いられた。

 チーフスは試合の終盤に、新進気鋭のQBパトリック・マホームズが持ち前のプレーメーカーぶりをいかんなく発揮し、レギュレーションの残り8秒で同点のFGドライブを成功させるなど勝負強さを見せた。

 

 しかし、オーバータイムで最初の攻撃権を得たペイトリオッツはチーフスの反則にも助けられながらボールを進め、最後はRBレックス・バークヘッドの2ヤードTDランでチーフスにオフェンスのチャンスを与えないままに試合を終わらせた。

 この決勝ドライブでペイトリオッツが費やした時間は4分52秒。実は第4Qにペイトリオッツは11分47秒もの時間で攻撃権を支配していた。

 それだけにチーフスのディフェンスは疲弊しており、小刻みに進むペイトリオッツオフェンスを止めることができなかった。

 オーバータイムを想定したとまでは言わないが、第4Q終盤までもつれ込むと予想したペイトリオッツが、スタミナの差で勝負をかける準備を着々と進めていたのだ。

 

 ペイトリオッツはチャージャーズと対戦したディビジョナルプレーオフ(準決勝)でも、ランを多用するボールコントロールオフェンスを展開していた。

 今季のカンファレンス決勝は、得点力の高いトップ4チームが出そろう史上初めての組み合わせとなったが、その中でペイトリオッツだけが1試合平均20点台(27・3点)で他のチームの30点台に及ばなかった。

 

 点の取り合いをしてはカンファレンス決勝やスーパーボウルでは太刀打ちできないと判断したビル・ベリチックHCが、時間を支配するボールコントロールによって対抗しようとしたのではないだろうか。

 とすれば、ペイトリオッツはプレーオフ初戦にあたるディビジョナルラウンドから、既にスーパーボウルを見据えた戦い方を実践していたと考えられる。

 スーパーボウルに出場することが既定路線になりつつあるペイトリオッツだからこそ、実現できたポストシーズンの戦い方だった。

 

 NFC決勝は疑問の残る判定で後味の悪いものとなった。試合の前半はセインツ側のディフェンスホールディングやフェイスマスクと思しきプレーが見逃されるなど、ラムズに不利なレフェリングがあったように思われた。

 しかし、最も重大な〝誤審〟は決定的な場面でセインツに影響した。

セインツのWRルイス(左)パスキャッチを防ぐラムズのDBロビーコールマン(AP=共同)
セインツのWRルイス(左)のパスキャッチを防ぐラムズのDBロビーコールマン(AP=共同)

 20―20の同点で迎えた第4Q残り2分を切った場面で、敵陣13ヤードまで進んだセインツは第3ダウン10ヤードでQBドルー・ブリーズがWRトミーリー・ルイスにパスを投げる。

 ボールが空中にある間にラムズのDBニッケル・ロビーコールマンがルイスに衝突する形でパスは失敗に終わった。

 ロビーコールマンはボールを見ておらず、パスインターフェアランスがコールされてもおかしくないプレーだった。

 しかし、反則を示すファウルマーカーは投げられず、セインツは次のダウンでFGを決めたのだった。

 

 反則が認められていればパスインターフェアランスの地点でセインツの第1ダウンとなっていた。

 FGではなくTDを挙げられていた可能性があり、同じFGという結果になったとしても消化できる時間は違っていた。

 

 この問題はシーズンオフに議論の的となるかもしれない。セインツのショーン・ペイトンHCはルール改正などを議論する競技委員会のメンバーであり、「誤審」がもたらす重大な結果に対する対策を提案する可能性があるからだ。

 現行ルールでは反則を巡る審判の判断については「チャレンジ」ができず、オフィシャルレビューも行われない。つまり、レビューアブル(インスタントリプレーの対象)ではないのだ。

 

 これに対し、例えばニューヨーク本部のオフィシャルレビュースタッフのみが明らかな反則があったプレーに限り、判定を覆す権限を持つようにするなどのルール変更は検討されるかもしれない。

 ただし、これが認められれば、フィールド上の審判が見逃す(見つけることができない)反則が次々と「摘発」されることにもなりかねず、NFLは認めたがらない。

 かといって、こうした重大な「誤審」が野放しにされていいはずはなく、審判のプロ化の促進などが議論されることになる。

判定に抗議するセインツのペイトンHC(AP=共同)
判定に抗議するセインツのペイトンHC(AP=共同)

 

 昨今のNFLはプレーヤー個々の運動能力が向上しスピード、パワー、テクニックは10年前と比べようもない。

 それにつれて審判のスキルにも向上が求められるのは当然だ。とくにプレーオフでは判定の一つひとつの重みが違う。

 NFLは今回のケースを軽んじることなく、しかるべき対策を講じる必要がある。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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