メニュー 閉じる
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.266

2019.1.10 13:20 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
昨年5月6日に行われた日大と関学大の定期戦で、試合前のコイントスに臨む両チームの選手たち=東京・アミノバイタルフィールド
昨年5月6日に行われた日大と関学大の定期戦で、試合前のコイントスに臨む両チームの選手たち=東京・アミノバイタルフィールド

 

 日大が起こした「危険な反則タックル問題」に揺れた2018年度シーズンが終わろうとしている1月9日、関東学生アメリカンフットボール連盟は同日に開いた理事会で、日大と反則をした宮川泰介選手の19年度からの公式戦復帰を承認した。

 

 前年度の学生王者による前代未聞の不祥事は、日大側の対応のまずさもあって、メディアを巻き込んで大きな社会問題に発展した。

 日大に2018年度の公式試合への出場資格停止処分を科していた関東学連は、新しい指導者や選手らとの面談を通じて再建への取り組みを確認。関東学連内に設けたワーキンググループの答申を受け、処分は3月31日までとすることを理事会で承認した。

 日大の秋のリーグ戦は、実質の2部に相当する関東大学1部BIG8からのスタートとなる。

 

 昨年5月の日大との定期戦で「危険な反則タックル」を受け負傷した関学大の2年生QB奥野耕世選手は肉体的、精神的なダメージを克服し、年間最優秀選手に贈られる「チャック・ミルズ杯」を獲得した。

 

 ハッピーエンドでよかったなどという、安易な言葉で片付けるつもりは毛頭ない。

 大好きなフットボールを辞めたいと両親に打ち明けた時期もあったという青年が、仲間の励ましもあって立ち直り、チーム内で中心的な役割を見事に果たした。その精神力と努力には、最大限の敬意を表したい。

 

 早大ラグビー部OBのスポーツライター藤島大氏は「監督の敗北」と題した自身のコラムで、学生とのコミュニケーションを怠った当時の指導陣の「強権」が、今回の問題を引き起こした背景にあると指摘し、反則タックルをしてしまった宮川選手にこうエールを送る。

 「つらかっただろう記者会見に臨んだ20歳の若者は、きっと、いや絶対に同じ過ちを繰り返さない。スポーツとは挫折に学ぶ再起の機会でもある」

昨年11月に行われた社会人合同チームとの練習試合で、チームメートにアドバイスする日大の宮川泰介選手=横浜スタジアム
昨年11月に行われた社会人合同チームとの練習試合で、チームメートにアドバイスする日大の宮川泰介選手=横浜スタジアム

 

 「フェニックス」は昨年9月から、元立命大コーチ橋詰功新監督の下で再生の道を模索している。

 日大を見る周囲の目はまだまだ厳しい。フィールドで失った信頼はフィールドで取り戻すしかない。

 チームに課せられた最大の使命は、他大学を啓蒙するようなフェアプレーに徹することだ。

 

 今春の定期戦は、関学大の意向で開催されない。しかし、宿敵の復活を誰よりも心待ちにしているのは、一連の騒動の中で何度も救いの手を差し伸べていた長年のライバルなのである。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

最新記事