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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

下位シードが勝ち上がる NFLプレーオフは波乱の幕開け

2019.1.9 11:18 生沢 浩 いけざわ・ひろし
パスを試みるイーグルスのQBフォールズ(AP=共同)
パスを試みるイーグルスのQBフォールズ(AP=共同)

 

 NFL2018年シーズンのプレーオフは波乱の幕開けとなった。

 第3~6シードによるワイルドカードラウンド(1回戦)4試合は上位3チームが敗退した。ホームチームで「順当に」勝ち残ったのはカウボーイズだけである。

 

 レギュラーシーズンの勝率で見るとテキサンズとコルツは同率の10勝6敗、レーベンズ(10勝6敗)を倒したチャージャーズは12勝4敗と上回っていたので本当の意味でのアップセットとは言いがたいが、イーグルス(9勝7敗)は12勝4敗のベアーズを16―15で破る番狂わせを演じた。

健闘をたたえ合うコルツのQBラック(左)とテキサンズのQBワトソン(AP=共同)
健闘をたたえ合うコルツのQBラック(左)とテキサンズのQBワトソン(AP=共同)

 

 昨年のチャンピオンのイーグルスは第14週にカウボーイズに敗れて6勝7敗となった。8勝5敗のカウボーイズは既にイーグルスに2勝しているため3試合を残して地区優勝の「マジックナンバー」は1。この時点で負け越していたイーグルスのプレーオフ出場の可能性は低かった。

 しかし、そこから3連勝でシーズンを終えると、競争相手だった他チームが失速したこともあって第6シードでプレーオフに滑り込んだのだった。

 そして、ベアーズ戦で残り56秒でTDパスが成功するという劇的な勝利をもぎ取った。

 その立役者は先発QBのカーソン・ウェンツではなく控えのニック・フォールズである。まるで昨年のデジャブだ。

 

 昨季は第14週にウェンツが膝の靱帯を断裂してシーズン絶望となった。代わって先発を任されたフォールズはレギュラーシーズンこそ苦戦したものの、プレーオフでは見違えるように効果的にラン・パスオプションを操り、チームを初のスーパーボウル優勝に導くとともに自身もMVPに輝いた。

 まさにアメリカンドリーム、もしくはシンデレラストーリーの実現だった。

 

 しかし、イーグルスのエースQBの座はウェンツのものだ。今季開幕戦こそスターターを務めたフォールズだったが、ウェンツが復帰すると再び控えに戻ったのである。

 シンデレラは王子のお妃にはなれず、地味な町娘のままだった。

 

チャージャーズオフェンスの要QBリバース(AP=共同)
チャージャーズオフェンスの要QBリバース(AP=共同)

 ところが、ウェンツはまたも故障で戦列を離れてしまう。もっとも、フォールズがQBを務めるようになってからイーグルスは負け知らずなのだから、必ずしもマイナス要因ではなかった。

 フォールズが先発となってからのイーグルスオフェンスは不思議とドライブが継続するようになった。サードダウンロングの場面でも効率よくパスが通り、ファーストダウンを重ねるのだ。

 

 フォールズのQBとしての能力がウェンツよりも上とは必ずしも思わないが、複数のレシーバーをターゲットにしてパスを投げ分け、タイミングよくレシーバーにデリバリーできるという点ではフォールズに一日の長がある。

 

 ディビジョナルラウンド(準決勝)はいよいよトップシードのセインツとの対戦だ。

 ドルー・ブリーズとフォールズの投げ合いは見所の一つとなるだろう。今の勢いでセインツまでも破ってしまうことがあれば、連続スーパーボウル出場も現実味を帯びてくる。

 

 もし連覇となれば2003―04シーズンのペイトリオッツ以来だ。

 第6シードからのリーグ制覇となれば、現行のプレーオフ制度(1990年以降)では3例目(2005年スティーラーズ、2010年パッカーズ)となる。

タックルされながらゴール前1ヤードまで前進するカウボーイズのQBプレスコット(AP=共同)
タックルされながらゴール前1ヤードまで前進するカウボーイズのQBプレスコット(AP=共同)

 レギュラーシーズン9勝のチームのスーパーボウル優勝はレギュラーシーズン16試合制(ストライキで短縮されたシーズンを除く)では2チーム目(2011年ジャイアンツ)となる。

 簡単に達成できることではないが、今のイーグルスなら成し遂げてしまいそうな気がしないでもない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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