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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

学生王者・関学が完敗 再燃するライスボウルの在り方問う議論

2019.1.4 14:39 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
ライスボウルの後、学生に語りかける関学大の鳥内監督=東京ドーム
ライスボウルの後、学生に語りかける関学大の鳥内監督=東京ドーム

 

 第2クオーターの2分7秒に、関学がゴール前2ヤードから、よく考えられたプレーでWR小田快人が右オープンを走りきってTDを挙げ7―14とした。

 「関学、大したもんだね」。近くにいた親しい記者にそう話しかけると、彼も深くうなずいた。

 

 2018年度シーズンの日本一を決める日本選手権(ライスボウル)は1月3日、東京ドームに3万3242人の観衆を集めて開催された。

 社会人王者の富士通に学生王者の関学がどこまで食い下がるかが焦点だった試合は、予想通り富士通の圧勝だった。

 

 関学の前半での健闘は称賛に値するものだった。特に守備陣。海﨑悠、繁治亮依の2年生LBが、相手のエースRBトラショーン・ニクソンのランを素晴らしい反応とタックルで封じる。

第3クオーター、突進する富士通のRBニクソン=東京ドーム
第3クオーター、突進する富士通のRBニクソン=東京ドーム

 ベストCBの副将・横澤良太が、相手のエースWR中村輝晃クラークと互角の勝負を演じていた。

 必死にひた向きにプレーする姿は、感動的だった。

 しかし、15分クオーターは長い。試合が進むにつれて徐々に体力差が点差となって表れ、17―52で敗れた。

 

 後半は関学に負傷者が続出した。今季の大学の年間最優秀選手(チャック・ミルズ杯)に選ばれた2年生QB奥野耕世もその一人。富士通守備陣の激しい当たりを受け、何度もフィールドにうずくまった。

 

 勝敗への興味が薄れた時点で、メモを取るのをやめた。早く終わればいい。第4クオーターは、そんな思いで試合を見ていた。

 

 校歌「空の翼」を聞き終え、記者に囲まれた関学の鳥内秀晃監督は言った。

 「能力的に相手はオールスター。戦術、戦略のレベルではない。守備が崩壊してしまって、学生レベルで対抗するには無理がある。サボっていたわけではない。一生懸命準備してきてこの結果。これ以上はできない。とにかく危険。見ている人も、フットボールの面白さってなんやねん、ということになってしまう。3万人入ったといっても、途中で帰った人も多い」

試合後、記者に囲まれる関学大の小野ディレクター=東京ドーム
試合後、記者に囲まれる関学大の小野ディレクター=東京ドーム

 

 結果を受け、毎年再燃するのがライスボウルの在り方を問う議論だ。

 関学の小野宏ディレクターは、学生の安全性を確保するという自らの立場を踏まえ、非公式ながら報道陣を集めて異例ともいえる発言をした。

 

 「1月3日のライスボウルは維持しないといけない。ただ、学生と社会人のマッチアップは歴史的使命を終えたと思う。安全面で問題がある。見ている人が、果たして面白いのか。その辺りを日本協会をはじめフットボール界全体で考えないといけない。公式に申し入れをする段階ではないが、こうしてメディアの方たちに話すことで危機感を共有し、より魅力のある対戦を模索するべきだと思っている」

 チーム内には、棄権を提案するスタッフもいたという。

 

 学生代表はライスボウル10連敗。小野ディレクターと意見交換した国吉誠・日本協会会長は、ライスボウルの存続は明言した上で「今後、何が適正かを考えていく」と、理事会などで議論する意向を示した。

 

 富士通は試合の大勢が決した後も、ニクソンをフィールドに送り出した。

 この試合のMVPは、26回のボールキャリーで2TDを含む206ヤードを記録した。

 徹底的に力の差を見せつける姿勢には、社会人側のライスボウルの在り方に対する抗議のメッセージが込められていたのではないだろうか。

第2クオーター、パスを試みる関学大QB奥野(3)=東京ドーム
第2クオーター、パスを試みる関学大QB奥野(3)=東京ドーム

 

 スポーツの世界で、はじめから勝敗が見えている試合ほどつまらないものはない。

 関学という戦術、戦略面で学生界では突出した存在のチームでも、社会人チャンピオンには手も足も出ないほど、両者のレベルは乖離しているという現実を直視しなければいけない。

 

 ドームに足を運んだ観客だけではなく、テレビ観戦したファンに「日本のアメフトってこんなもんなんだ」とそっぽを向かれることが、何より怖い。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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