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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集後記】Vol.264

2018.12.21 13:47 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
高い戦略性と遂行力で29度目の学生王座に就いた関学大=阪神甲子園球場
高い戦略性と遂行力で29度目の学生王座に就いた関学大=阪神甲子園球場

 

 大学2年で初めて出場した「甲子園ボウル」は、関学に20―51で完敗した。

 選手個々の運動能力、高度な戦術面など、チームとしての完成度の違いを嫌というほど見せつけられた試合だった。

 

 当時、日大を率いていた故篠竹幹夫元監督は晩年よく言っていた。「うちは俺の個人商店のようなチーム。それじゃ、関学みたいなチームには勝てないんだよ」

 

 運良く各ポジションに人材がそろった年はいいが、そうならないときにどうするのか。自らの存在が長期的な組織づくりの足かせになる危うさを秘めていることを、カリスマ指導者はよく分かっていた。

 

 12月16日に行われた甲子園ボウルは、関学が早稲田を圧倒した。関学の鳥内秀晃監督は、早稲田の選手の質の高さを認めた上で、勝敗を分けたのは「コーチ力の差」と断言した。

 ゲームプラン、プレーのデザイン、コールを含めて、よくコーチングされた関学の選手は、相手の弱点を見逃さないしたたかさと高い遂行力を備えていた。

 

 コーチ陣の整備、充実は一朝一夕にはいかない。既に「総合商社」のようにノウハウを持っている関学に対抗するには、長い時間をかけた組織づくりが必要になる。

 人的なものだけではなく、経済的な要素も当然大事になる。

スペシャリストをそろえた関学大のコーチングスタッフ=阪神甲子園球場
スペシャリストをそろえた関学大のコーチングスタッフ=阪神甲子園球場

 

 篠竹さんが残した唯一の負の遺産は、そうした部分での努力を怠ったことだ。

 素質のある学生を猛練習で鍛え、ライバルを根こそぎ持って行ってしまうようなチームができればいいが、長くは続かない。それは学生スポーツの宿命でもある。

 

 関西の大学は、関学を手本にした組織づくりを心がけている。立命館はその代表格で、かつての京大がそうだったように、その台頭がリーグ全体の底上げにもつながっている。

 

 個人商店には個人商店の良さもある。長年つぎ足して出来上がった芳醇な「秘伝のたれ」のように、老舗ならではの手法からしか生まれない特別なものもある。

 時代に寄り添いながら、独自の「文化」や「伝統」も大切に継承していく。

 

 学生アメリカンフットボール界が発展していくためには、OB会などを含め関学を上回る組織力を備えたチームが複数出てこなければならない。

 「ファイターズ」が29度目の学生王座に就いた甲子園ボウルを見て、そう思った。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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