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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

4年生の涙とコーチとしての決意 甲子園ボウルを終えて思うこと

2018.12.20 11:33 中村 多聞 なかむら・たもん
関学大―早大の第2クオーター、関学大のDL斎藤(右)に激しいタックルを受ける早大のQB柴崎=阪神甲子園球場
関学大―早大の第2クオーター、関学大のDL斎藤(右)に激しいタックルを受ける早大のQB柴崎=阪神甲子園球場

 

 僕自身「甲子園ボウル」のサイドラインに立つのは2年前に続いて2度目の体験です。

 しかし、我々早稲田大学ビッグベアーズは、学生フットボール界の〝モンスター〟関西学院大学ファイターズに1度のリードもさせてもらえず完敗を喫してしまいました。

 ロッカールームで流す4年生たちの涙は、無神経な僕の心にも重く突き刺さりました。

 

二人三脚で歩んできた早大のRB元山伊織選手(右)と中村多聞コーチ
二人三脚で歩んできた早大のRB元山伊織選手(右)と中村多聞コーチ

 彼らの努力はスコアボード上では報われませんでしたが「死ぬほど悔しいけれど、この負けからいろいろ学ぶことができた。これを糧にしてこれからの人生に生かす」と、エースRBの元山伊織君から力強い言葉が聞けました。

 大学生の時に、これほどまで真剣に今と未来を見据えた行動など全く考えられなかった自分と比べると、本当に立派で紳士な戦士達でした。

 試合結果はとても残念ですが、手抜きせず一生懸命頑張って過ごしたこの時間が、いつかとても価値のあるものになることは、大人なら誰でも知っています。

第73回甲子園ボウルは、関学大が37―20で早大を下した=阪神甲子園球場
第73回甲子園ボウルは、関学大が37―20で早大を下した=阪神甲子園球場

 

 毎日毎日僕の家に来てくれてフットボールの話をし、トレーニングしたり陸上競技場に走りに行ったり、時には遊んだり。またフィールドでの僕の厳し過ぎる指導に不満な顔一つ見せず、黙って笑顔で元気よく付いてきてくれました。

 僕もみんなの著しい成長が嬉しく、毎日がとても楽しくやり甲斐があり、長年かけて積み上げてきた「タモン式フットボール」で大真面目に遊んでくれたみんな、本当にありがとう。

 来年チームからいなくなる4人のRBの偉業は、残った下級生が伝説にしていってくれると思います。痛んだ体を休めてください。本当によく頑張りました。

 

 既に次のシーズンは始まっていると前回のコラムでも書いたように、甲子園ボウルの勝敗に関係なく下級生たちのレギュラー争奪戦が正式にスタートです。

 ワセダ入団3シーズン目の僕とは同期とも言える3年生は4人。彼らが1年生の時から軽くシゴいて来た訳で、いよいよタモン式以外の理論が比較的混ざっていない年代に突入したのです。

 

 ただ、どの選手も大学1部レベルでの試合経験が少なく、ゲームパフォーマンスは全員未知数です。

 ですからチーム活動が活発ではない今のような時期から、一日でも早く体を激しく動かしておくのが2軍選手の使命と言えます。

 僕も2軍時代はチームのシーズンエンドに関係なく年がら年中ズーッと体を鍛えていたことを思い出します。

 

第3クオーター、突進を阻まれる早大のWR小貫(中央)=阪神甲子園球場
第3クオーター、突進を阻まれる早大のWR小貫(中央)=阪神甲子園球場

 早稲田大学ビッグベアーズは、フットボールインテリジェンスに優れたメンバーがそろい、学業と学業の空いた時間を有効に使った活動をすることで、教育の側面とスポーツ体験を両立しています。

 ただ、弱点もあります。忙し過ぎるあまり、摂取した栄養が体に蓄積されておらず痩せ型の選手が多い。そもそも食が細いのかもしれません。

 いずれにせよ、そんな状態ではタフなシーズンを無傷で突っ走るどころか大けがをしてしまう可能性も増えてしまいます。

 しっかり時間をとって鍛えていても「食事が昔の苦学生みたいなことでは、日本一のランニングバックになられへんで!」なんて言ってハッパかけています。

 

 著名なトレーナーさんが「腹減った時に美味いもんを食べてないから、食べられる量が少ないんじゃないかな。食事を美味しく摂れていないはず」と仰っていました。

 「食の細い人は体重制じゃない格闘競技に向いてないんや!」で終わらせたいのですが、ほとんどみんながそうなので、こちらも工夫が必要なようです。

 

 狭いのですがトレーニングスペース(英語ではSMALL GARAGE GYMなんて言います)の作れる家へ新年早々に引っ越すことにしました。

 ガッチガチに鍛えた直後に、我が家で温かいまともな食事を摂らせれば、上の問題が少しは解決するのかもしれないかなと、淡い期待を抱いています。

 

 とにかく、次世代の選手らが今季のレギュラー陣を凌駕する努力を見せてくれなければ話は始まりません。

 上級生は自身の競技力アップだけでなく、リーダーシップにチームビルディング、大人ととの折衝、そして就職活動ととにかく忙しくなります。

 

 さあ、自分の全てのチカラを出す時が来ました。悔いのない最終学年を送って欲しいものです。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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