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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

歴史に残る名勝負と永遠のテーマ

2018.12.5 11:19 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
甲子園ボウルへの出場を決め、整列する光藤主将(10)ら関学大の選手たち=万博記念競技場
甲子園ボウルへの出場を決め、整列する光藤主将(10)ら関学大の選手たち=万博記念競技場

 

 12月2日、大阪府吹田市にある万博記念競技場。全日本大学選手権決勝(甲子園ボウル)の西日本代表の座を争い、関学大と立命大が繰り広げた死闘は歴史に残る名勝負になった。

 2週間前のリーグ戦で敗れた立命大が先行し、関学大が追いかける。互いによく練られた作戦を、フィールド上の選手が忠実に実行していた。

 国内の学生レベルでは最高峰の攻防が見られるのが、両校の一戦である。

 

 関学大はミスで後手に回った。先発した2年生QB奥野耕世選手が3インターセプトを喫し、そのうち一つはリターンTDに結びつけられた。

 「あれだけパスをインターセプトされたら、普通は負けパターン。でも最後まで諦めない。それが関学だから」。鳥内秀晃監督の試合後の談話である。

立命大との第4クオーター、パスターゲットを探す関学大のQB奥野選手(右端)=万博記念競技場
立命大との第4クオーター、パスターゲットを探す関学大のQB奥野選手(右端)=万博記念競技場

 

 テレビの解説者として試合を見守った、関学大の小野宏ディレクターは、QBとしての経験を踏まえ冷静に語ってくれた。

 

 「前の試合で勝っている関学の方が、精神的に難しい状況だった。リードしたときにQBは無理をしないが、リードされたチームは無理をしてパスを投げて失敗する。どうやってバランスを取り、いい面を出していくかが奥野君の課題。慎重になればいいというわけでもない。QBとしてプレーするための永遠のテーマですね」

 いつもながらの的確なコメントである。

 

 それまで見事な対応力と気迫あふれるタックルで相手の攻撃を止めていた立命大の守備は終盤、覚悟を決めた奥野選手のパスやQB光藤航哉主将のランに翻弄され、背後にある自陣のゴールポストがじりじりと近づいてきた。

 聞けば守備のメンバーの中には満身創痍の選手が何人かいて、最後は気力だけでプレーしていたそうだ。

 

 精神面での強化を期待され、10年ぶりに大学の指導現場に復帰した古橋由一郎監督は言う。

 「戦力は去年がピークだった。弱いと言われた今年のチームは全員で頑張るんだという意識を徹底して、去年よりいいチームになったと思います」

 指揮官の言葉通り、素晴らしいチームであることは誰もが認めるところである。

 

 勝利の女神は、劇的な〝逆転サヨナラFG〟を決めた関学大にほほ笑んだ。

 1990年代から始まったライバル対決は、今年も見る者を魅了した。心を揺さぶられた。

 立命大が逃げ切りではなく、最後の攻撃シリーズでもっと積極的に攻めていれば、結果は違っていたかもしれない。

逆転のFGを決められ肩を落とす立命大の選手たち=万博記念競技場
逆転のFGを決められ肩を落とす立命大の選手たち=万博記念競技場

 東京へ向かう新幹線の車中。新大阪駅のホームで買った缶ビールを飲みながら熱戦の余韻に浸り、一つ一つのプレーが大きな意味を持つアメリカンフットボールの奥深さを、あらためてかみしめた。

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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