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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

選手の獲得に必要な人物評価 パナソニックの米国人選手が大麻取締法違反容疑で逮捕

2018.11.27 11:51
10月20日、大阪・キンチョウスタジアムで行われた富士通との試合でプレーする、パナソニックのQBベンジャミン・アンダーソン=撮影:武部真
10月20日、大阪・キンチョウスタジアムで行われた富士通との試合でプレーする、パナソニックのQBベンジャミン・アンダーソン=撮影:武部真

 

 11月26日、日本社会人Xリーグの「パナソニック・インパルス」のアメリカ人選手二人が、大麻取締法違反の容疑で逮捕された。

 逮捕されたのはクオーターバック(QB)のベンジャミン・アンダーソン容疑者(26)と、ディフェンスバック(DB)のエドワード・バーンズ容疑者(26)。

 この報道に驚いたのは、私がその前日、Xリーグの準決勝、パナソニックとIBMの試合を取材していたからだ。

 

 試合はIBMが24対17で勝ったが、鍵となったのはパナソニックのQBを務めるアンダーソン容疑者だった。

 アンダーソン容疑者は、パナソニック加入2年目で、昨季のXリーグの最優秀選手(MVP)。大柄でランの能力が高く、走り出すと相手にとっては危険極まりない。

 

 しかし一方で、片手でボールを持つ癖があり、「ボール・セキュリティー」に難がある。レギュラーシーズンでは昨季王者の富士通がその脆弱性をあぶり出していた。

 IBMとの準決勝の一つのポイントに、アンダーソン容疑者がしっかりとボールを守れるかどうかがあった。

 そして恐れていたことが現実になった。

 第3Qの10分17秒、パナソニックが10対17と追いかける展開。残り時間を考えると、是が非でも追いついておきたい攻撃シリーズだった。

 

 ボール位置はパナソニック陣の深いところ。ここでアンダーソン容疑者は背後からタックルを受けボールをファンブル、それをIBMの守備選手が拾ってそのままタッチダウンし、IBMが24対10とリードを広げた。

 パナソニックにとってはなんとも悔やまれるプレーで、アンダーソン容疑者の欠点が準決勝という大舞台で再び露見したのである。

 

 もともと、パナソニックとアンダーソン容疑者の取り合わせは不思議な感じがしていた。パナソニックはしっかりと相手を分析し、準備を念入りに行う「秀才型」のチームだ。

 面白いもので、社会人のスポーツチームはアメリカンフットボールに限らず、社風を反映する傾向が強い。パナソニックは真面目なチームという印象を持っていた。

 

 ところがアンダーソン容疑者は自由奔放で、デザインされたプレーが崩れると、自分の走力で打開してしまう。

 私が見たところでは、パナソニックの首脳陣は「荒馬」に、なんとか「タキシード」を着せようとしていた。

 

 しかし、アンダーソン容疑者はタキシードを着ると居心地が悪いのか、すぐに脱ぎ捨ててしまう。それがIBM戦では最悪の結果を招いてしまった。

 25日の日曜日、パナソニックの今季が終わった。

 しかし、翌日になって2選手の逮捕というニュースが入ってきた。関係者の心痛はいかばかりか。

 

 パナソニックはチームの活動を当面休止し、再開時期は未定という。

 あらためて、どんな競技でも、外国人に限らず選手の獲得については、慎重に人物評価を進めなければならないことを実感した。
 パナソニックのフィールド内外での再起を祈りたい。(生島淳)

 

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル
1967年、宮城県気仙沼市で生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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