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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

不可欠な相手へのリスペクト 過剰な挑発行為は慎むべき

2018.11.7 14:56 生沢 浩 いけざわ・ひろし
エンドゾーン内でパスをインターセプトする、タイタンズのSバイアード(31)(AP=共同)
エンドゾーン内でパスをインターセプトする、タイタンズのSバイアード(31)(AP=共同)

 

 NFL第9週を締めくくったマンデーナイトゲームは、タイタンズ(4勝4敗)がカウボーイズ(3勝5敗)を28―14で破った。

 タイタンズはAFC南地区でテキサンズ(6勝3敗)に次ぐ2位の座を維持し、プレーオフへの望みをつないだ。一方でカウボーイズは2連敗でNFC東地区3位に後退した。

 

 マーカス・マリオタ(タイタンズ)とダック・プレスコット(カウボーイズ)といった次世代を担うQB同士の対決が関心を呼んだ試合は残念なプレーがあり、後味の悪いものとなった。

 

 そのプレーが起きたのはカウボーイズが7―0とリードしていた第1Q中盤だ。相手エンドゾーン前まで進んだカウボーイズだったが、プレスコットの放ったパスはタイタンズのSケビン・バイアードにエンドゾーン内でインターセプトされた。

 このターンオーバーで勢いを得たタイタンズは逆転勝ちを収めることになるのだが、インターセプト後のバイアードの行為がよくなかった。

 バイアードはエンドゾーンからフィールド中央に走り出し、50ヤードライン上に描かれているカウボーイズの星形のロゴの上で大きく両手を広げるセレブレーションを行ったのだ。

 これに後から追いついたタイタンズのチームメートが加わって、スターマークの上で踊りだす行為につながった。

 

 怒ったカウボーイズのDBバイロン・ジョーンズが、バイアードを突き飛ばしてロゴの上から押し出すことで収まったが、チームの象徴であるロゴマークの上でのセレブレーションはスタジアム内に不穏な雰囲気を残した。

ボールをキープして前進するタイタンズのQBマリオタ(8)(AP=共同)
ボールをキープして前進するタイタンズのQBマリオタ(8)(AP=共同)

 

 この行為にかつてWRとして活躍したテレル・オーウェンスの姿を思い出したファンも多いのではないだろうか。

 2000年シーズンに49ersがダラスでカウボーイズと対戦した試合で、TDパスキャッチを決めたオーウェンスが、2度にわたってバイアードと同じ行為をしたのだ。

 正確にはバイアードがオーウェンスの真似をした形になるのだが。

 

 2度目のセレブレーションで、オーウェンスはカウボーイズのSジョージ・ティーグに突き飛ばされる。

 この行為によってティーグはペナルティーを科せられ退場処分となるが、ホームのファンに拍手喝采で送られたのが印象的だった。

 

 フィールド上に描かれたチームロゴに対する行為を罰する規定はNFLにはない。

 バイアードもオーウェンスも、実際に実力行使に出たジョーンズもその行為に対してペナルティーは科されていない。

 

 ルールで規定されていないとはいえ、ロゴの上で敵チームがセレブレーションを行うのはファンならずとも見ていて愉快なものではない。

 ロゴはチームの象徴であり、選手やファンにとっての心のよりどころである。それを踏みにじる行為に相手に対するリスペクトは感じられない。アンスポーツマンライクコンダクトに通じる不条理さを感じるのだ。

 

 バイアードは「ビッグプレーをしたときはいつも50ヤードラインでセレブレーションをやっている」と弁明しているが、それが本当ならばスターマークを避けて行う配慮もあったのではないか。

 チームメートを鼓舞してモメンタムを引き寄せる目的もあったのだろうが、その手段として相手チームやそのファンを貶める行為をするのは本末転倒だ。

 ルール上は不問なのだろうが、相手へのリスペクトを欠いている時点でプロ意識が足りないと言いたい。

 

 プロならば、相手よりも圧倒的に勝ることで勝利をつかむべきだ。貶めることで優位性を保とうとした瞬間にスポーツマンシップは無意味と化す。

 

タイタンズ守備陣のプレッシャーの中パスを試みる、カウボーイズのQBプレスコット(4)(AP=共同)
タイタンズ守備陣のプレッシャーの中パスを試みる、カウボーイズのQBプレスコット(4)(AP=共同)

 スポーツは勝敗がすべてだ。勝敗が生活に直結するプロならばなおさら勝ちと負けの差が大きい。

 だからと言ってそこで相手に対するリスペクトが失われたなら、スポーツはただの危険な遊戯になってしまう。

 

 スポーツは戦争の疑似体験とする説もあるが、相手をリスペクトする気持ちと安全への配慮がなければそれは単なる「疑似」ではなくなる危険性もはらんでいるのだ。

 たかがセレブレーション一つで過度な反応と思われる読者もいるかもしれないが、一つ間違えば大きなけがにつながってしまうフットボールだからこそ、過剰な挑発行為は慎まなければならない。そのためには相手に対するリスペクトは不可欠なのだ。

 

 バイアードの行為はリーグからはおとがめなしで終わるのだろう。せめてマイク・ブレイベルHCら首脳陣が、当該選手の軽率な行為を戒めるくらいの指導はあってほしいものだ。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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