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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

パスの通算獲得距離で新記録 セインツのQBドルー・ブリーズ

2018.10.10 12:05 生沢 浩 いけざわ・ひろし
夫人と子どもたちに祝福される、セインツのQBブリーズ(AP=共同)
ブリタニー夫人と子どもたちに祝福される、セインツのQBブリーズ(AP=共同)

 

 NFL屈指の好パサーの一人であるセインツのドルー・ブリーズ(39)が金字塔を打ち立てた。

 レギュラーシーズン第5週のマンデーナイトゲームでレッドスキンズを相手にパスで363ヤードを稼ぎ、パッシングの通算獲得距離を7万2103ヤードとして歴代1位となったのだ。

 

 従来の記録はペイトン・マニング(コルツ、ブロンコス)が保持していた7万1940ヤード。マニングがこの記録を達成するのに266試合を要したのに対しブリーズは254試合でそれを超えた。

新記録を達成し、サイドラインに向かって手を上げるセインツのQBブリーズ(AP=共同)
新記録を達成し、サイドラインに向かって手を上げるセインツのQBブリーズ(AP=共同)

 

 新記録達成となったプレーは前半残り2分余りで成功させた、新人WRトレクワン・スミスへの62ヤードのTDパスだった。

 地元ニューオーリンズを舞台に全米中継されるマンデーナイトゲームで、しかも目を見張るようなビッグプレーによって決めてしまうところにブリーズのスター性を感じる。

 記録樹立後にはニューオーリンズにもゆかりのあるマニングからの祝福のビデオメッセージが紹介され、メルセデスベンツドームは大いに盛り上がった。

 

 2006年にチャージャーズからセインツにフリーエージェントで移籍してきてからは、コントロールのいいQBとしてその地位を築いてきた。

 ピンポイントのコントロールやレシーバーとのタイミングの良さはマニングやトム・ブレイディ(ペイトリオッツ)の上をいくかもしれない。

 

 昨シーズンはパスの成功率でNFLの歴代最高値(72%)をマークした。

 年間5000ヤードパッシングを超えたシーズンも過去に5回あり、かつてダン・マリーノ(ドルフィンズ)やブレット・ファーブ(パッカーズ、ジェッツ、バイキングズ)らが君臨した「歴代ナンバー1」の座を射止めるのは時間の問題だった。

 

 今季も2009年シーズンにスーパーボウル制覇を成し遂げたころの全盛期を思わせるような好調が続く。

 5試合を消化して被インターセプトがまだなく、パサーレイティングも第4週のジャイアンツ戦を除いて114・6~153・2という驚異的な数字を残す。

 シーズンは四分の一を消化したばかりだが、パス成功率は77・9%でこれも記録を更新するペースである。

 

 以前にもこのコラムで紹介したが、ブリーズは身長が183センチでNFLでは不利なサイズだ。

 それでも正確なパスを武器とできるのはたぐいまれな身体能力に加えて、頭の中でフィールドの動きを細部にわたって正確に再現できるイマジネーションがあるからだ。

 そのイマジネーションとは単なる想像ではなく、膨大なスカウティングと実戦経験から計算される正確な脳内ビジョンだ。

 

フアンの祝福に感激の表情を浮かべるセインツのQBブリーズ(AP=共同)
フアンの祝福に感激の表情を浮かべるセインツのQBブリーズ(AP=共同)

 昨年から一緒にプレーするRBアルビン・カマラは「ドルーはフィールド上で何が起きているかをすべて知っている。それだけじゃなく、いつも10手先を考えている。サイドラインでタイムアウトの時に何を考えているかを尋ねたことがあるが、自分には想像できない答えが返ってきた。でも、『なるほど』と納得してしまう内容なんだ」と舌を巻く。

 

 脳内で描くビジョンの通りにパスを投げられる肩の強さも不可欠だ。さすがに18年もプレーしていれば疲労もたまるし、不振だったシーズンもあった。

 チーム成績が低迷した時期と重なったこともあって、契約の最終年だった昨年が終了するまでセインツから契約延長を打診されなかった。これはセインツが、ブリーズのクオーターバッキングにそろそろ限界を感じていたことの証拠に他ならない。

 しかし、昨年は見事にチームをプレーオフに導き、自身も2年の契約延長を手に入れたのである。今季の躍動感を見れば、まだまだ体力の限界には無縁のように思えてしまう。

 

 昨今はジャレッド・ゴフ(ラムズ)、カーソン・ウェンツ(イーグルス)ら若手QBの成長が著しく、今季の新人QBもどんどん先発での出場機会が増えている。

 その一方でブリーズのような絶対的存在が記録を打ち立てる。若手にとってはいよいよハードルが高くなるが、それを克服してこその世代交代だ。新旧QBが高いレベルでしのぎを削る今のNFLは面白い。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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