メニュー 閉じる メニュー
スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

第4週終え1勝2敗1分け 低迷する強豪スティーラーズ

2018.10.3 14:37 生沢 浩 いけざわ・ひろし
スティーラーズのスピードスター、WRブラウン(84)(AP=共同)
スティーラーズのスピードスター、WRブラウン(84)(AP=共同)

 

 AFCの強豪の一つであったはずのスティーラーズが、まさかの1勝2敗1分けという苦しいスタートとなっている。

 

 現在ブラウンズと並びAFC北地区の最下位だ。有利なはずの地元ピッツバーグで2敗、唯一の勝利がNFCのバッカニアーズからのもので、レギュラーシーズンの四分の一が消化した時点ですでにプレーオフ進出は難しい状況だ。

 

 

 看板であるはずのディフェンスはビッグプレーを止められない。そして、何よりも高得点をたたき出すはずだったオフェンスが不発だ。

 その理由は「キラーB」と呼ばれるオフェンスの中心選手の一角を欠くことだ。

 

 キラーBとはQBベン・ロスリスバーガー、WRアントニオ・ブラウン、RBレベオン・ベルの姓または名前の頭文字をとったニックネームだ。

スティーラーズのエースQBロスリスバーガー(AP=共同)
スティーラーズのエースQBロスリスバーガー(AP=共同)

 

 これにKクリス・ボズウェルを含める場合もある。このうち、ベルの姿がフィールド上にはない。

 

 

 ベルは昨年から契約更改を求め、チームと対立している。2013年にNFL入りしたベルは、デビュー当時は基本年俸40万ドルだったが、4年目には85万ドルにまで上昇した。

 

 しかし、RBだけではなくWRとしてのプレーも要求され、オフェンスで最も多くボールに触ることを理由に1700万ドル前後の年俸を要求しているとされる。

 

 実に20倍近くの要求であるが、財布のひもが固いスティーラーズもオフェンスにおけるベルの重要性も考慮して年に1300万ドルくらいは払う用意があるようだ。それでも両者の溝は大きい。

 

 

 ベルは昨年、年俸交渉を不服としてトレーニングキャンプとプレシーズンをすべてボイコットしたものの、レギュラーシーズンゲームにはチームに合流した。

 

 ところが今年は今でもホールドアウト(チームへの不参加)を継続中だ。

 

 そして、最近になってスティーラーズのバイウィークである第7週(10月19~22日)ごろに復帰し、残りの10試合には出場するつもりであることを表明した。

 

 

 ただし、実際にベルにスティーラーズでの出場機会が与えられるかは不明だ。

 

記者会見で質問に答えるスティーラーズのトムリンHC(AP=共同)
記者会見で質問に答えるスティーラーズのトムリンHC(AP=共同)

 一部の情報ではスティーラーズはトレードでのベルの受け入れ先を探しているとも伝えられる。それが事実であればスティーラーズはベルを見限ったことになる。

 

 こうしたゴタゴタにファンの心もベルから離れつつある。プロである以上、自分の働きに見合った年俸を求めるのは当然のことだ。それは認めつつも、チームの苦境を目の当たりにしながら自分の都合のいい時に復帰をしようとするのは、あまりにも自分勝手に映るからだ。

 

 

 キャンプ中にもロスリスバーガーやブラウンが再三チームへの合流を呼び掛けた。それに応えることもなく、いまだにチームと距離を置いたままだ。

 

 スティーラーズのファンは選手にチームファーストの姿勢を求める。どんなに実績があろうともチーム批判をしたり、自己優先の態度をとるプレーヤーには手厳しい。

 

 現地ファンのSNSを見ていても、昨年まであれほどエースとして頼りにしていたベルを露骨に批判するコメントが少なくないのは驚きだ。

 まるで「鳴らない鐘(ベル)なら無用の長物」と言わんばかりの悪評なのだ。

 

 

 スティーラーズは伝統的にシーズン中に選手やコーチとの契約交渉は行わない。

 

 ベルに対してはオフに1年契約を提示しているから、それをベルが受け入れて契約が成立する可能性はあるが、今季の全日程が終わるまでに球団側から条件を変えることはまずない。

 

 ベルにしてみれば10試合に出場が最大限の譲歩だと言いたいのだろう。

 

 それにしても、来年オフに正式に完全フリーエージェントの資格を得るために最低限必要な登録期間を満たすための自己都合の復帰に過ぎない。これではチームメートやファンの共感は得られない。

 

 

 シーズン中の選手のトレードもスティーラーズにとっては異例のことだが、それに向けて働きかけているのは事実かもしれない。

 問題はそれが不調のまま第7週を迎えた時に、球団としてどのような態度をとるかだ。

 

 「待ってました」ともろ手を挙げてベルを迎えるのか、現先発のジェームズ・コナーを使い続けるのか。この時の決断でチームの姿勢が問われることになる。

 

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事