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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

活躍の鍵はパスキャッチ レッドスキンズ入りした名RBピーターソン

2018.8.28 11:00 生沢 浩 いけざわ・ひろし
レッドスキンズのQBスミス(左)からボールを手渡されるRBピーターソン(AP=共同)
レッドスキンズのQBスミス(左)からボールを手渡されるRBピーターソン(AP=共同)

 

 NFLバイキングズで活躍し、2012年シーズンにはNFL史上7人目となる2000ヤードラッシュを達成した名RBエイドリアン・ピーターソンがレッドスキンズと1年契約を結び、プレシーズンゲーム第3週のブロンコス戦に登場した。

 

 

 前半途中までの出場で11回のボールキャリーで56ヤード、最長ラン15ヤードのまずまずの成績を残した。

 

 しかし、このままピーターソンがレッドスキンズの先発RBとして活躍できるかは不透明だ。

 

 ピーターソンは昨年のオフ中にバイキングズから契約を解除された。2016年シーズンは膝の故障で3試合にしか出場できず、年俸も高かったためだ。

 

 

 フリーエージェントとなってセインツと契約したが、パス中心のセインツオフェンスの中では活躍できずにカージナルスに移籍。そこでも6試合の出場に終わった。

 今年はどのチームにも所属していなかったが、RBに故障者が続出したレッドスキンズがピーターソンに契約を打診した。

 

 

 レッドスキンズは昨季のランオフェンスがリーグ28位と低迷した。そのテコ入れの目的でルイジアナ州立大学のデリウス・ガイスをドラフト2巡で指名したが、プレシーズンゲーム初戦でひざを負傷して早くも今季絶望となってしまった。

 残留組のサマジェ・リーラインもバイロン・マーシャルも故障中で人材不足に陥った。

 

 

 そこでやむなくピーターソンを起用するに至ったのだが、レッドスキンズのオフェンスのスキームとピーターソンのランニングスタイルがかみ合うかどうかは疑問だ。

 

 ピーターソンはIフォーメーションからスクリメージラインに突進するストレートダイブを得意とする。ところが、レッドスキンズは今季からQBにアレックス・スミスを獲得したこともあり、ショットガン隊形からのラン攻撃を多用する。スミスは脚力があり、頻度は低いながらオプションプレーを展開できるからだ。

ブロンコス守備陣のタックルをかわして前進するレッドスキンズのRBピーターソン(26)(AP=共同)
ブロンコス守備陣のタックルをかわして前進するレッドスキンズのRBピーターソン(26)(AP=共同)

 

 

 ショットガン隊形でのRBはQBの横に位置して、スクリメージラインに対して斜めに走るコースを取りながらホールを探す。

 

 ボールをキープするのか、QBが引き抜いてキャリーするのかの選択肢はQBにあり、RBはその判断を待たなければならない。

 

 

 瞬時にボールをもらってホールを探せるIフォーメーションのRBとは微妙に異なる。これに対応するのは簡単ではない。

 

 プレシーズンのブロンコス戦ではショットガン隊形からのランも無難にこなしたピーターソンだが、そのプレーからQBキープやパスといった複雑な展開を見せるまでにはいかなかった。

 

 開幕までの短い間でこのプレーにアジャストできるかどうかは大きなポイントだ。

 

 

 もう一つ、ピーターソンの苦手な分野がパスキャッチだ。NFLの一線で活躍するほどのRBなのだから全くキャッチできないわけではない。

 

 しかし、ラテラルの動きを伴うパスコースはバイキングズ時代から不得手だ。

 

 ブロンコス戦でもRBの位置から斜めに上がっていくパスコースは走ったが、スィング系やスクリメージラインを超えてからのフラットゾーンへのパスコースは走らなかった。

 

 

 スミスはインターセプトを避けるためにRBへのダンプオフパス(セーフティーバルブ)を頻繁に使う。それが単調なパスコースしか走れないピーターソンでは、パスルートの選択肢が限定されてしまうのだ。

 

 ピーターソンが稀代の名RBであることは間違いがない。しかし、現在のNFLのスタイルに合致しているかは別問題だ。

 

 残念ながらレッドスキンズでエースとして活躍する姿は想像できない。

 

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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