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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

タックルに関するルールを変更 NFL、プレシーズンで戸惑いも

2018.8.21 11:24 生沢 浩 いけざわ・ひろし
レドスキンズのQBスミス(右)をタックルするジェッツのLBジェンキンズ(AP=共同)
レッドスキンズのQBスミス(右)をタックルするジェッツのLBジェンキンズ(AP=共同)

 

 現在行われているプレシーズンゲームは新人や移籍選手ら新戦力の実力を見極め、新たに導入されたスキームを実戦で試す場でもある。一方で新ルールに適応する期間としても重要だ。

 

 各チームが4試合を消化(殿堂入り記念試合を戦ったベアーズとレーベンズは5試合)するプレシーズンも折り返しを迎え、トム・ブレイディ(ペイトリオッツ)やマット・ライアン(ファルコンズ)などベテラン選手も短い時間ながら出場機会を与えられた。

 そんな中、選手間に少なからず混乱が見られるのは、タックルに関するルール変更への対応だ。

プレシーズンゲームで対戦したイーグルスのQBフォールズ(左)とペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)
プレシーズンゲームで対戦したイーグルスのQBフォールズ(左)とペイトリオッツのQBブレイディ(AP=共同)

 

 選手の安全面を考慮してNFLでは毎年のように危険防止を目的にしたルール変更が行われる。

 今年は頭を低くしてヘルメットから当たってはいけないというルールが制定された。

 ヘルメットの頭頂部から当たるタックルや、相手のヘルメットに自分のヘルメットをぶつけるタックルは以前から禁止されていたが、今回のルール変更ではヒットする相手の体の部分がどこであろうとヘルメットによるヒットは全面的に15ヤード罰退の対象になる。

 

 プレシーズンゲームではこの反則が多くとられている。リプレーを見れば、厳密には選手が肩から当たっているにもかかわらずイエローフラッグが投げられるケースがあり、ファウルをコールされた選手が「なんで?」という表情を浮かべるケースも多い。

 

ルール変更で戸惑う選手も見られた(AP=共同)
ルール変更で戸惑う選手も見られた(AP=共同)

 混乱のもとになっているのは「頭を低くして」という行為だ。現在NFLで活躍する選手のほとんどは若いころから姿勢を低くして相手の体の下に入るタックル方法を教わってきた。

 必然的に頭を低くして相手にタックルすることになり、結果的にヘルメットが相手のボディーにヒットすることが起こりうる。

 しかし、フットボール界全体で脳しんとうをはじめとするけがの防止に取り組んでいるなか、タックルの方法や指導法も変わってきた。当然NFLでもタックル方法のガイドラインを各チームに認知させている。

 

 とはいえ、これまで慣れ親しんできたプレースタイルを急に変えられない選手がいることも事実だ。

 それがプレシーズンでの反則続出の一因をなしていることは間違いない。また、オフィシャルの間でも頭を低くする行為を重視するあまり、必要以上にイエローフラッグを投げている印象もぬぐえない。

 ディフェンダーが頭を低くするタックルは、ほとんどのケースで反則扱いされているからだ。

 

 アメリカのとあるアナリストは「新ルールへの関心を喚起するためにあえて多く反則をとっているとすら思えてしまう」と述べる。

 事の真相は不明だが、あまりに多くの反則がコールされるとあながち単なる憶測ではないと思えてしまう。

 

 この新ルールへの対応にはチームごとに違いもあるようだ。たとえばペイトリオッツとイーグルスの、昨季のスーパーボウルと同じカードだったプレシーズンゲーム(8月16日@ジレットスタジアム)では、イーグルスの方がこの新ルールによるファールが多かった。

 この試合だけの印象だが、明らかにペイトリオッツの方がタックル方法を変えている選手が多く、新ルールに則したタックル練習をしてきているように見受けられた。

 

 前述のようにこの反則は15ヤードの罰退が科せられる。距離だけでなく、ドライブを継続することになるファーストダウン更新につながる重大な反則だ。場面によっては戦局を大きく左右するプレーになりかねない。

 フットボールは準備の重要なスポーツではあるが、こうした新ルールの一つひとつにきちんと対応することも強豪チームになる条件なのだろう。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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