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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

注目の新人QBがプレシーズンに登場 待ち受ける厳しい先発争い

2018.8.14 12:14 生沢 浩 いけざわ・ひろし
ジャイアンツ戦に出場したブラウンズの新人QBメイフィールド(AP=共同)
ジャイアンツ戦に出場したブラウンズの新人QBメイフィールド(AP=共同)

 

 NFLはプレシーズンゲームの第1週が終了した。この時点ではまだ各チームともキャンプインからそれほど時間がたっておらず、スタータークラスの選手はほとんど試合に出場しない。

 プレシーズンの1、2週に登場するのは主に新人やバックアップクラスだ。主力選手は第3週に出場して最終調整をし、レギュラーシーズン開幕に備えるのが一般的だ。

 

 今年は4月のドラフトで5人ものQBが1巡指名を受けた。彼らはいずれもプレシーズン第1週で登場し、NFLデビューを飾った。ただし、その内容は必ずしも満足のいくものではなかった。

 

 全体1位指名のベイカー・メイフィールド(ブラウンズ)はジャイアンツ戦に出場。20回のパス試投で11回の成功、212ヤード獲得で2TDパスを記録した。

 早速TDパスを成功させるなどデビュー戦としてはまずまずの出来だっただろう。ただし、パスの成功率は5割をかろうじて超える程度だ。

 ビルズから移籍し、現状ではデプスチャートトップのタイロッド・テイラーが5回中5回成功だったからその差はまだ大きい。

 

 ジャイアンツのディフェンスも控え選手がほとんどだったことを考えると、メイフィールドもまだNFLの水に慣れるには時間がかかるようだ。

 もっとも、ヒュー・ジャクソンHCはメイフィールドの先発投入を急ぐ方針ではなく、現時点で焦る必要はない。

 

 ジェッツのサム・ダーノルド(3番目指名)はファルコンズ守備を相手に18試投13回成功で1TDパスを決めた。

 ポジション争いを展開するテディ・ブリッジウオーター(8試投7回成功、1TD)にはかなわないものの、安定した内容で試合を進めた。

 

 実はパス成功率が5割を超えたのはこの二人だけだ。カージナルスのジョシュ・ローゼン(10番目)は13分の6、ビルズのジョシュ・アレン(7番目)は19試投で9回成功、レーベンズのラマー・ジャクソン(32番目)は18回中7回の成功にとどまった。

機動力が持ち味のレーベンズの新人QBジャクソン(AP=共同)
機動力が持ち味のレーベンズの新人QBジャクソン(AP=共同)

 

 初めての実戦とはいえ、QBの当たり年と期待された割には平凡な数字に終わった。

 カレッジで大活躍した選手ですらこうなのだから、やはりNFLはレベルが相当に高いというほかはない。

 

 さて、この5人の1巡指名QBのなかで、レギュラーシーズンの実戦デビューが一番早いのは誰だろうか。

 昨今のNFLでは1巡指名を受けたQBは開幕から先発を任されるケースが少なくない。しかし、今季に限っては現時点で先発の座を約束されている新人QBはいない。これも珍しい。

 もちろん、キャンプインから半月程度の現在で新人の実力を正確に測るのは無理な注文だ。しかし、どのチームもいきなりの先発起用には慎重な態度を保っている。

 

ビルズの新人QBアレンは、ベテランとの先発争いが予想される(AP=共同)
ビルズの新人QBアレンは、ベテランとの先発争いが予想される(AP=共同)

 前述のメイフィールドとダーノルドのほか、アレンはA.J.マキャロン、ローゼンはサム・ブラッドフォード、ジャクソンはジョー・フラッコといった、彼らの前には先発経験の豊富なベテランQBが立ちはだかる。

 ジャクソン以外はすべて移籍してきた先輩QBとのポジション争いだ。新たなオフェンスシステムを学ばなければいけないという点では同じスタートラインだが、NFLでスターターとして活躍した経験があるか否かはやはり大きな差となって表れる。

 

 その意味で言えば、少なくとも現時点でフラッコがエースの座を約束されているレーベンズはユニークな状況にある。

 ポケットパサーのフラッコと脚力が武器のジャクソンではタイプが大きく異なる。現在のレーベンズオフェンスはフラッコのパスを前提にチームが構成されており、今すぐにジャクソンに先発を譲れる構造にはなっていない。むしろ、フラッコ体制下でジャクソンを生かそうというのがレーベンズの構想だ。

 

 すなわち、先発QBはフラッコのままで、ジャクソンをチェンジ・オブ・ペースとして投入したり、あるいはフラッコのパスターゲットやハンドオフパートナーとして起用したりする可能性があるのだ。これは今までのNFLではほとんどなかったユニークな併用方法だ。

 

 古い話になるが、1995~96年のスティーラーズではポケットパサーのニール・オドネル、マイク・トムザックとモバイルQBの先駆けであるコーデル・スチュワートを併用したことがある。

 通常はオドネルやトムザックがQBを務めるが、スチュワートがスポットで投入され、QBランやオプションを披露した。時にはスチュワートがWRとしてラインアップすることもあった。

 

 レーベンズではジャクソンのこうした起用法のほかに、フラッコとダブルQBで使うプレーも考案中だという。マンガのような話だが、実現すれば面白いプレーになるかもしれない。

 

 1巡で最後に指名されたQBであるが、実戦デビューが一番早いのはジャクソンになる可能性が大だ。

 だが、遅かれ早かれほかの4選手も先発を任される試合が訪れるはずだ。果たして、5人がそろって残りNFLの世代交代を推し進めるのか、それともQBの当たり年は前評判だけの夢物語と終るのか。その答えは遅くとも3年後には出ているだろう。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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