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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

オフに鍛えろ!「タモン式渚のゴリゴリ合宿」~後編~

2018.7.19 11:00 中村 多聞 なかむら・たもん
苦しい訓練の合間で楽しいバーベキュー
苦しい訓練の合間で楽しいバーベキュー

 

 合宿3限目は半分に分かれてチーム戦です。砂浜でフットサルです。コレも勝負ですので、ついつい夢中になって全力を出してしまいます。

 しかし、地面が砂浜ですと後ろに強く蹴れないので躍動感ある走りが成立しません。元サッカー部が若干有利ですが、ボールに食らいつくガッツの多い者が多くの時間ボールを所有します。

 

 ほとんどみんなが同レベルなので、少しのテクニックやパスではなく、走りまくってボールに食らいついた者が勝利します。

 この授業では「遊びでも必死で戦え」「体力が枯れるまで走りまくれ」が義務付けられます。

 遊びだとついついニヤケて手を抜くのが日本の〝伝統文化〟ですが、アメリカンフットボール選手ですので「大人げないなー」なんて言葉は金輪際捨ててもらいます。大人げなくていいのです。

 

 夜はホテルが準備してくれたガーデンバーベキューパーティーです。みんなは夕食後もトレーニングがあるので水ですが、僕だけコッソリ無色透明のチューハイを飲んでいたことは言うまでもありません。

 

 夕食の後ですし、砂浜を走りまくったので上半身を素早く連続で長時間強く動かすトレーニング。そうです、ボクシングのミット打ち鍛錬です。

 左右順番に全力全速でパンチを打てばモノの10秒で息が切れます。コレも限界の時間まで打ち続けます。ヘトヘトです。その時です! 砂浜がギシッギシッと鳴り、グラグラっと地面が揺れました。

 携帯電話のアラートが鳴って、内陸側のスピーカーから警報音が鳴っています。「高いところに避難せよ」とスピーカーから聞こえます。

 ホテルまで約500メートルを全員無言でダッシュ。さっきのチューハイ3杯が、運動不足の肥満体から酸素を奪います。息が切れて脚がガクガクし、最後には走れなくなりました。

 

 しかし、しばらくすると地元の人たちが「津波の心配はありません!」と言い回っていたのでみんなひと安心。そしてトレーニング再開とはならずコレで本日は終了。ご家族の皆様にはご心配をおかけしました。

 

 大人はここから付近の居酒屋で楽しもうとしましたが、田舎すぎてBARが18時閉店。居酒屋も20時閉店。残念です。

 立っているだけのコーチ多聞も日焼けしていますし疲れているので大人しく就寝。

 

 2日目の朝は前日3時起きだったので、ずいぶん早く目が覚めました。ルームメートの30番片岡選手は僕のイビキで安眠できず寝不足だったそうです。それもまた鍛錬ですね。

 トイレで夜中に起きた時、ピクリともせず爆睡していましたが。

 

 ホテルの朝食は洋食のビュッフェで、品数は多くないものの非常に満足のいく量が出されており、コレから灼熱の砂浜で奪われる消費カロリーを上回ることのできるとても優秀な朝食でした。

合宿を乗り切った参加者との記念撮影
合宿を乗り切った参加者との記念撮影

 

 2日目の1限目は「ドッジボール」です。また勝負ものです。90分間延々と戦い続けます。

 戦力の均衡を保つため、チーム戦では「トレード制」を導入。役に立たない不要なヘタクソ人材を相手に差し出し必要な人材を確保します。

 単純なルールな上に足元が悪い砂浜でもついついボールを全力で投げてしまうので、体力の消耗が著しく進みます。

 

 そして2限目は「ビーチフットボール」です。防具なしですがフルタックルです。砂浜側から攻撃し、海がエンドゾーンです。

 タッチダウンはラグビーのように海底に「トライ」する決まりなのでエンドゾーンでは必ずダイビングします。しかしココでも甘さが出ます。普段のフットボールに比べて遊びの要素が満載ですので、ついつい本気を忘れてチョロっと手を抜きがちになります。

 

 喜んだり笑ったりカメラアピールしたりは競技とは別の部分。極限に疲れている時でもプレーは全力。ボールが止まったら疲れているチームメートを叱咤激励したりジョークで気分を盛り上げたりカメラにサービスしたり。

 「オンとオフ」「メリハリ」をこういうノーリスクな機会に練習して体験しておかないと、調子に乗っているけど結局活躍しない役立たず男になってしまいます。

 

 試合で劣勢の時、士気の下がることを言う人もいます。そんな時に自分の精神をコントロールするのは自分なのです。

 どんな時も自分の力を出せることがチームの代表として試合に出る者の責任です。心の揺れはパフォーマンスに大きく影響します。「ブレない心」を養うためにも、砂浜トレーニングは楽しみながらちょうどいいのです。

 

 こんな感じで午後も「タモン式」の特殊訓練が続き2日間のシゴキが終了しました。

 すり傷や切り傷はあったでしょうが、大きなけがもなく全員がタフな訓練を無事乗り越えました。

 厳しい僕の目から見ても、参加した彼らの心とカラダは非常に大きく成長したと思います。遠い人は京都からの参加で、多くの出費もあり価値ある合宿だったと思ってもらえればいいのですが。

 

 こんなキツい合宿、参加した選手らは二度と行きたいと思わないでしょうから、いつかまた誰か別の人を見つけて開催したいと思います。ニヤリ。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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