メニュー 閉じる

47NEWS

スポーツ

スポーツ

週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

感謝の気持ちを込めた贈り物 RBとOLの心をつなぐエピソード

2018.7.10 12:47 生沢 浩 いけざわ・ひろし
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加
昨シーズン、NFL8位の1040ヤードを獲得したジャガーズのRBレオナード・フォーネット(AP=共同)
昨シーズン、NFL8位の1040ヤードを獲得したジャガーズのRBレオナード・フォーネット(AP=共同)

 

 NFLジャガーズ2年目のRBレオナード・フォーネットは昨季1040ヤード、9TDを稼ぐ成績を残し、チームにとって17年ぶりとなるAFC決勝進出に大きく貢献した。

 けがで3試合を欠場したにもかかわらず、NFL8位の成績だ。ドラフト1巡(全体の4番目)指名にふさわしい活躍で、将来のジャガーズを担う選手の一人だ。

 

 そのフォーネットがシーズン終了後にOLに高級腕時計をプレゼントしたそうだ。

 「1000ヤードラッシュを達成できたのは彼らのおかげ」と感謝の気持ちを込め、バックアップを含め、シーズン中に先発出場した計7人に贈ったという。

 

 フォーネットは「彼らが僕とチームのためにしてくれたハードワークに報いたかった。彼らの貢献は無視されるべきではない」とその理由を述べている。

 時計はフォーネット自身が選び、裏蓋部分にはOLの背番号とイニシャルが刻まれるという念の入れようだ。

 

 フォーネットのように、RBがブロッカーであるOLに感謝の贈り物をすることは珍しくない。

 品物はやはり高級時計が多いようだ。OL本人にではなく、その奥さんにプレゼントをするという粋な計らいをした選手もいる。

 贈られるOLも高給取りなのだが、金額は問題ではない。その感謝の気持ちがありがたいのだ。

 

 かつてプロボウルがハワイで行われていた頃、OLとその家族をハワイに招待するRBもいた。

 プロボウルがシーズンの締めくくりのゲームと位置づけられ、スーパーボウルを戦い終えた選手たちも加わって華やかに行われるオールスター戦ならではの大らかさがそこにはあった。

 プロボウル選出は活躍した選手への「ご褒美」の意味合いもあり、それだけに選ばれた選手はチームメートに格別の配慮をしたものだ。

 

 プロボウルがスーパーボウルの前週に開催されるようになり、場所もフロリダ州オーランドーに固定されるようになってからは、こうしたエピソードも聞かなくなった。

 

 RBとOLの関係は必ずしも良好なものばかりとは言えない。1989年から10年間ライオンズで活躍し、殿堂入りも果たしたバリー・サンダースは誰もが認めるスーパーRBだった。

1990年代に活躍し、NFL史上に残る名選手として知られる元ライオンズのRBバリー・サンダース(AP=共同)
1990年代に活躍し、NFL史上に残る名選手として知られる元ライオンズのRBバリー・サンダース(AP=共同)

 

 鋭いカットバックはディフェンダーのタックルをするりとかわし、あっという間にフリーになる。人並み外れたボディーバランスの持ち主でもあり、170センチそこそこの小兵ながらあたりにも強かった。

 

 サンダースもOLを大切にした。シーズン終了後の贈り物ももちろんだが、TDセレブレーションを譲る行為もその表れだった。

 サンダースはTDを挙げても派手なセレブレーションをすることはなかった。静かにボールをOLに渡し、スパイクさせるのだった。こうした態度が多くのファンの共感を呼んだ。

 

 ただし、サンダースのためにブロックして走路を開けたOLの中には彼のランニングスタイルに戸惑う選手もいた。

 サンダースも本人も引退してから語ったことだが、サンダースのランプレーにおけるOLのブロッキングは簡単ではなかったそうだ。なぜならサンダースは予想外のカットバックで走路を変えてしまうからだ。

 

 OLはプレーコールで決められた通りにブロッキングを行う。サンダースが右に走るなら、OLはディフェンダーを左側に押し込んで走路を広げる。

 ところがサンダースが予定とは違って左にカットバックするとディフェンダーもそれに反応するから、OLとしては一つのプレー中で逆方向のブロッキングも行うことになる。

 

 しかも、サンダースのカットバックはOLの後方で行うことも多く、その動きはOLの視界には入らない。

 サンダースの動きに反応するディフェンダーに対してリアクションしなければならず、それはとても難しいことだったとそのOLは語っている。

 

 それでもそのOLが不満を公に口に出せなかったのは、やはりサンダースの存在がチームにとって大きかったからだろう。

 サンダース在籍の間、ライオンズは5回のプレーオフ進出を果たしている。1991年には1957年以来となるポストシーズンでの勝利もマークしている(残念なことにライオンズは91年以降プレーオフで勝てていない)。

 

 アメリカンフットボールは犠牲と協調の上に成り立つスポーツだ。RBとOLの関係はまさにその象徴的なものである。

 時に一方通行になりがちな関係だが、感謝の贈り物はそれを補う効果があるのだろうか。

 だが、本当の意味で両者の関係を双方向で平等なものにするのは、やはりチームの勝利なのである。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

最新記事