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週刊TURNOVER

共同通信社が運営するアメリカンフットボール専門のウェブマガジン。国内外のフットボールを紹介するベテラン記者のコラムや、国内注目試合の見どころやリポートなどを毎週掲載する。監修は共同通信記者で、NFLの解説者でもある宍戸博昭。

【編集長の独り言】=「折り鶴に願いを込めて」

2018.7.4 11:21 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
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東京都内で開催された「K.G.Tokyoフェスタ2018」には、多くの関学大同窓生が参加した
東京都内で開催された「K.G.Tokyoフェスタ2018」には、多くの関学大同窓生が参加した

 

 例年よりかなり早く梅雨が明けた7月1日。東京都内のホテルで開催された「K.G.Tokyoフェスタ2018」に、座談会の進行役として参加した。

 

 日大の「危険タックル問題」がまだ解決していない時期に、フェニックスOBが〝被害者〟である関学大の大事なイベントに顔を出すのはいかがなものか。

 そう思い辞退を申し出たところ、フェスタの実行委員長であるファイターズOBから返ってきたのは「こういう時だからこそ、あなたにやってほしい」という言葉だった。

 

 座談会の登壇者は、卒業後に各分野で活躍するOG、OBの方たち。その一人である井谷善惠さんの話は、胸に迫るものがあった。

 井谷さんは、2003年8月1日に広島平和記念公園で起きた「折り鶴放火事件」について語ってくれた。

 

 事件は、関学大の男子学生が「原爆の子の像」に捧げられていた約14万羽の折り鶴に放火したというのもので、学生は器物損壊容疑で逮捕された。

 関学大は学長が広島市に謝罪し在学生、卒業生、教職員が大量の折り鶴を寄贈した。

 

 事件を起こした学生には学内外から非難が殺到、退学を求める声が相次いだ。

 しかし、関学大は罪を償うのは当然としながら、大学は教育の場であり断固として学生を守る姿勢を貫いた。

 

 東京芸大で教鞭を執る井谷さんは言う。「今回の危険タックル問題も、赤(日大)が悪で青(関学大)が善という風潮があるが、それは違う。過ちを犯してしまった学生をみんなで正しい方向に導く。それが教育なんです」

 

自らの過ちを認め記者会見に臨んだ日大の宮川泰介選手には称賛の声が集まった=5月22日・日本記者クラブ
自らの過ちを認め記者会見に臨んだ日大の宮川泰介選手には称賛の声が集まった=5月22日・日本記者クラブ

 

 前監督と前コーチの指示で、ルールを無視した危険な行為に及んでしまった日大の宮川泰介選手はたった一人で記者会見に臨み、自らの言葉で事実を明らかにした。

 関学大は宮川選手の競技続行を望んでいるが、本人はアメリカンフットボールから身を引く覚悟を表明している。

 

 「折り鶴」には「他者を思い、願いを込める」という、日本文化の精神が根底にあるそうだ。

 日大が27年ぶりに優勝した昨年の甲子園ボウルの直前。勝利を願うフェニックスの保護者が選手、スタッフのために赤と金色の紙で折り鶴をしたためた。

 

 「数じゃないの。一つ一つに心を込めて折ることが大切なの」。そう言って保護者の輪の中心にいたのは、精神的に追い詰められ危険なタックルをしてしまった宮川選手の母親だった。

 井谷さんの話にうなずきながらふとそのことを思い出したとき、体の奥から熱いものがこみ上げてきた。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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